法律相談センター検索 弁護士検索
アーカイブ

エデンの彼方

カテゴリー:未分類

著者:ヒュー・ブロディ、出版社:草思社
 26歳のイギリス青年が、カナダで日雇い労働者の住む町で生活した。2年後、こんどは北極地方でイヌイットとともに生活をはじめた。
 北極地方の自然は厳しい。冬はマイナス40度。まぶたが凍りついて開かなくなる。寒風にやられてあふれる涙が、たちまち氷結して上下のまぶたをとじあわせる。目の前が真っ暗になる。でも、手袋の甲で眼球を押さえればすぐに氷は解けるので、あわてることはない。
 イヌイット社会は平等で分けへだてのない社会なので、敬語や丁寧語は必要ない。地位や身分の違いを示す表現もない。また、悪態や罵詈雑言に類する言葉もない。
 イヌイットのような狩猟採集民は歴史、精神性、実用的な知識など、生活全般にわたって話し言葉が頼みである。それだけに話術はきわめて重要で、成人はすべて雄弁でなくてはならない。狩猟採集民は、情報であれ、食料であれ、持っているものを分かちあう。知識を共有する根本の必要は、すべての狩猟採集経済に通底する。情報の秘匿は重大な危険を招来する。
 狩猟採集民の平等主義と個人主義は間違いなく女性の地位を高めている。狩り場と漁場は母系が受け継ぎ、女性の首長をいただいている種族が少なくない。礼式にこだわらないのも、男女平等と、お互いを尊敬する精神の現れである。格式張らない狩猟採集民の慣習は男女平等の模範である。女性は夫の強権を恐れず、暴力に怯えることもない。
 狩猟採集民の天分は、すすんで他人から学び、他人(ひと)のために働くのをいとわないばかりではない。なにより彼らの文化を特徴づけているのは、資源とその利用の均衡、すなわち直観と詳細な知識から結論を引き出し、敬愛に結ばれた人間関係に身を委ねることである。
 農耕民の歴史は、狩猟採集民の歴史を圧殺してきた。この先、何百という狩猟採集民の言葉が消滅するのではないかと今危惧されている。人類にとって、その損失ははかりしれない。その言葉の喪失は、人間の可能性の幅を狭くする。狩猟採集民がいなければ、悲しいかな人類の存在価値は逓減する。狩猟採集民がいることで、我々は円満な全人たりうる。
 イヌイットは、エスキモーの大半をしめる民族である。過酷な大自然のなかでも豊かな人生を過ごしていることが紹介されている。そこには豊富なモノはない。しかし文明の器具がなくても心満ちた生活はありうることが、著書自らの体験を通して語られている。

バンコク・ヒルトンという地獄

カテゴリー:未分類

著者:サンドラ・グレゴリー、出版社:新潮社
 懲役25年の刑を受け、7年半をタイとイギリスの刑務所で過ごした若いイギリス女性の体験談が赤裸々に語られています。
 彼女は27歳のとき、麻薬(ヘロイン)の密輸、つまり運び屋になったのです。イギリスの中産階級の娘として育った彼女は、両親との折り合いが悪く、勝手気ままな生活をはじめ、タイにのがれてきました。そこで英語教師などをしていたのですが、ついに旅費にも事欠くようになり、麻薬ブローカーの甘いささやきに乗ってしまったのです。大量の麻薬を運んで死刑にならなかったのは、むしろ幸運でした。ラーット・ヤーオ刑務所での生活が始まります。
 刑務所内では闇屋が繁盛しています。ナイフもタバコも薬物も、何でも買えます。お金も借りられます。ただし、超高利です。1日5割なのです。
 ところで、タイとイギリスとの間には、受刑者移送条約があり、終身刑でなければ、タイで4年間服役したらイギリスに移されて残刑をつとめることができます。彼女は32歳になってまもなく、ロンドンのホロウェイ刑務所に移ることができました。
 ところが彼女は、まだタイの方が良かったと嘆くのです。新聞が読め、ラジオが聴け、電話もかけられるというのに・・・。タイでの環境は惨めであったが、少なくとも自分がまんざらでもない人間であるという感覚はあった。特別扱いされなかったし、差別もされなかった。ところが、イギリスには非常に切迫した孤立感と鬱屈感があった。気がつくとはじき出され、何の理由もないのに詮索されるように見えた。彼女は、ひたすら自殺することのみを考えました。
 イギリスの刑務所では職員と収監者の情事は日常茶飯事で、多くの囚人は見て見ぬふりをしている。彼女も妊娠を本気で心配したことがありました。
 2000年7月時点で、1293人のイギリス人が海外76ヶ国の刑務所に入っていました。大半は麻薬関連です。タイだけでも33人が刑務所に服役しています。お金に困った人々をターゲットとして、甘い言葉で麻薬の運び人にさせようとするのです。単身女性が身なりの整った魅力的な男性の麻薬密売人の標的になりやすいという彼女の指摘に、つい私は娘のことを心配してしまいました。

一勝九敗

カテゴリー:未分類

著者:柳井正、出版社:新潮社
 ユニクロの会長が失敗談を正直に語った本です。私とまったく同じ世代ですが、率直な語り口に好感をもって読みました。ユニクロは、3ヶ月内は返品自由、広告の品切れ防止、店の清潔・整頓などで商品の認知度を高めました。
 例のフリースは1200万枚売るのを目標にして、2600万枚売り上げたそうです。東レから原料を買い、インドネシアで糸にして、中国で織って染色・縫製した。数百万点つくることで低価格と高品質を可能にした、というのです。すごいスケールです。
 店長が40代がいいとか、スーパー店長の収入は年収3000万円とか、並みの発想ではありません。マニュアル人間ではだめだとも強調しています。
 23条の経営理念を紹介しています。もっと短かくできるのではないかという気が私もしますが、ユニクロ独自の理念を語るには、これが必要だといって、短かくはしないとのこと。何事によらず、自分の頭で考えることの大切さが強調されています。

江戸の地図屋さん

カテゴリー:未分類

著者:俵元昭、出版社:吉川弘文館
 『切絵図・現代図で歩く江戸東京散歩』(人文社)という本があります。1年間、ほとんど東京それも皇居周辺をウロウロしていましたので、江戸時代はどんな町並みだったのか興味があり、ときどき書棚から取りだしては眺めています。彦根藩井伊家の上屋敷がどこにあったのか、などが古い図面(切絵図といいます)と現代図で対比しながら説明があって、大変わかりやすい本です。
 この本によると、武家屋敷には表札や看板などがまったくなかったので(テレビの時代劇に表札があるのは視聴者の便宜のため)、不便でしょうがなかった。そこで、どこの大名なのか書きこんだ地図が売れたということです。
 江戸の地図は当初きわめて正確につくられていたけれど、250年かかって不正確なものへ変化していったそうです。見た人が分かりやすいように変わったということです。伊能忠敬をもち出すまでもなく、正確な図面をつくる能力は江戸時代にあったのです。でも、つかう人の便宜を考えて、絵図面いりの図面がつくられていきました。やっぱり、正確さより分かりやすさなのですね。

獄中記・地獄篇

カテゴリー:未分類

著者:ジェフリー・アーチャー、出版社:アーティストハウス
 ジェフリー・アーチャーはイギリスの有名な作家です。イギリスの政治家でもあり、サッチャー政権時代に保守党の副幹事長をつとめたこともあります。世界的なベストセラー作家ということですが、私は一冊も読んだことはありません。
 そのアーチャーが、2001年に4年の実刑判決を受けて2年間の刑期をつとめ、昨年7月に仮出獄しました。この本は、その入獄直後の状況を伝えたものです。一代貴族となったほどのアーチャーですから、処遇は恵まれていたと思いますが、それでも刑務所の受刑者となったことに変わりはありません。日本の刑務所との違いに目を開かされます。
 刑務所内には2台の公衆電話があり、受刑者はテレホンカードで外部と自由に電話で話ができる。面会のとき、抱きあったり、キスしたりできる。ただし、ビデオにとられている。受刑者がぶちのめされるのはシャワー室。1度に4人しか入れず、大きな音をたてても怪しまれない。だから、受刑者のなかには1年もシャワーをあびない者がいる。
 アーチャーは、獄中でも1日6時間の執筆タイムをとり続けました。1回は2時間ずつに限っているそうです。イギリスの刑務所では、日本の刑務所より格段の自由が保証されていることがよく分かる本です。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.