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核に蝕まれる地球

カテゴリー:未分類

著者:森住 卓、出版社:岩波書店
 表紙の写真はインドの女の子(8歳)のうしろ姿です。生まれたときから、肋骨と背骨が曲がっていました。インド東部ビハール州のジャドゴダはカルカッタから列車で西に5時間の山岳地帯にあります。ウラン鉱山がそこにあるのです。ウラン鉱山は、その廃棄物をダムに捨て、周辺の環境汚染には何の対策もとっていません。奇形児が出ても、おかまいなしです。
 イラクの劣化ウラン弾による被害やセミパラチンスクの核実験場の周辺の放射能汚染による影響については前に紹介しました。ここでは、ビキニ水爆実験とアメリカの核実験場周辺の実像をみてみます。まずはビキニです。
 1954年3月、ビキニ島に近いロンゲラップ島で、アメリカは15メガトン水爆「ブラボー」の実験をしました。このとき、有名なまぐろ漁船第五福龍丸など、操業中の日本の漁船800隻ほどが被害を受けました。ロンゲラップ島には死の灰が2、3センチも降り積もりました。こどもたちは、ときならぬ白い粉を身体にふりかけてはしゃいでいたそうです。やがて、発疹、発熱、嘔吐、下痢をひきおこしました。島民は近くの島に収容され、やがてロンゲラップ島に戻されました。どの程度の放射能による影響があるか、その人体実験をされたのです。島民は完全にモルモット扱いです。
 アメリカのワシントン州ハンフォード核施設の周辺でも被害が出ています。長崎に投下された原爆のプルトニウムも、ここでつくられました。ハンフォードは、西側世界ではもっとも放射能汚染のひどい地域です。ところが、日本は、このハンフォードの農産物(小麦やジャガイモ)を輸入しているのです。放射能汚染について、過去も現在もまったくノーチェックのままにです。
 臭いもなく、味もなく、痛くも痒くもない。すぐに発病するでもない。五感では感じることができない。しかも、放射能の被爆によって発生するのは、ガンや白血病など、通常の病気だ。しかし、問題の地域には、ガンや白血病そして先天的異常など放射能の影響と思われる病気の人が、異常に多い現実がある。
 恐ろしい、知りたくないけど、知らなければいけない現実を、目のあたりにしてくれる「美しい」写真集です。

女性のからだの不思議

カテゴリー:未分類

著者:ナタリー・アンジェ、出版社:集英社
 女性に毎月ある生理(この本では月経)は何のためのものなのか。多くの哺乳類は子宮がそれほど華麗に血管で飾りたてられていないため、生理の出血はほとんどない。
 ある学者(ストラスマン)は、子宮を常に肥沃な状態に維持するよりも、生理があった方が安くつくからだとしている。生産のためのぜいたくな準備を、月のうちもっとも妊娠しそうな排卵時だけに限るのは筋が通っている。胚が到着しない子宮内膜とその生産物を維持するのは重荷なので、そっくり片づけてしまう。そして翌月、また一から始める。生理4回で6日分の食物に相当するエネルギーが節約できるという。
 生理で40リットルの血液と分泌物が排出される。著者はこの疑問に対する答えは一つとは限らないとしている。逃げているとも思われるが、なるほど、そうなのかなとも思う。
 子宮は製薬工場でもある。たとえば、ホルモンを分泌し、タンパク質と糖と脂肪をつくる。さらに、違法ドラッグの一種でもあるベータエンドルフィンやダイノルフィンも放出する。これは自然の鎮静薬で、科学的にはモルヒネやヘロインの親戚にあたる。また、マリファナに含まれる活性成分と同じ分子のアナンダミドもつくる。ところが、子宮が、このような鎮静薬や化学物質やホルモンの前駆体をつくって分泌する目的はほとんど分かっていない。だから、子宮全摘手術にはまだ疑問も大きい。
 初乳は、タンパク質と炭水化物そのほかの成分の混じった粘っこい液体をつくる。脂肪は含まれない。初乳の黄色はニンジンを黄色くする成分、ビタミンAとBをつくるのに必要なカロチノイドをたっぷり含んでいる。また、多量の白血球と抗体を含み、免疫系ができていない新生児を助ける。
 乳の成分は動物ごとにちがう。成長の速い動物はタンパク質をつくるアミノ酸の多い乳が必要。猫や犬など肉食動物はアミノ酸のせいで濃い。短期間に体に脂肪を蓄えなくてはならないゾウアザラシのような動物は高脂肪の乳をのむ。ゆっくり成長する動物の乳はアミノ酸の量が比較的少ない。人間の乳はアミノ酸含量がもっとも低く、ネズミの乳の12分の1。牛乳は母乳の4倍のタンパク質を含むので、加工せずに赤ん坊に与えてはいけない。新生児の腎臓はまだ高タンパク質を処理できないから。
 人間の乳はタンパク質が少なく、ラクトース(乳糖)が多い。人間の乳は粉末ジュースのように甘い。このラクトースはグルコースの2倍のカロリーを新生児に供給する。栄養素の吸収にも重要な役割を果たし、赤ん坊の胃がカルシウムや脂肪酸などを最大限に摂取できるようにする。
 乳が限りなく魅力的である理由のひとつは、いかに母親の栄養状態が悪くても、乳の成分をほとんど変動させないことにある。足りない成分は体内から調達する仕組みだ。人工乳に母乳の真似はできない。人間の乳は200以上もの成分を含んでいて、その多種多様な役割の全部はまだ解明されていない。たとえば、ラクトフェリンは母乳中にわずかしかない鉄分を生物として利用可能とし、鉄とともに病原菌が胃のなかに入らないように防ぐ。人工乳には含まれていない成分だ。
 乳房にがんができやすいのは、養うべき子があらわれるたびに、ふくらんだりしぼんだりを繰り返さなくてはいけないから。身体のほかの部分では、遺伝子が細胞の成長を抑制するが、乳房ではその抑制が強くないため、悪性腫瘍が足がかりをつくりやすい。
 人間の身体の基本は女性のからだです。そのからだの不思議をかいま見た思いです。

漢語四方山話

カテゴリー:未分類

著者:一海知義、出版社:岩波書店
 漢字の読み方に、呉音と漢音があるというのは、もちろん私も知っていました。ただし、どちらが呉音で、漢音なのかはいつまでたっても覚えられません。
 呉音は昔の中国の今でいう上海や南京あたりの南方音で、漢音は中国の長安や洛陽という北方音が伝わってきたものです。たとえば、生は一生と書けばショウとよみ呉音で、人生ならセイと読んで漢音です。奈良時代(792年)以降、朝廷は漢音の方が正規の字音で、漢文を読むときは漢音で読むようにと繰り返し布令を出しました。しかし、漢音以前から伝わっていた呉音はしぶとく今日まで生き残りました。仏教もそのひとつです。
 仏教は漢音が伝来する前の奈良朝以前から日本に伝わっていましたから、お経は呉音で読まれてきました。仏教関係の言葉はだいたい呉音で読むものになっています。たとえば、文殊(モンジュ)、殺生(セッショウ)、声明(ショウショウ)といった具合です。
 ところが、元号は朝廷の布令に反した読み方になっています。
 明治、大正、昭和、平成を漢音で読むと、メイチ、タイセイ、ショウカ、ヘイセイとなります。つまり、漢文は漢音で読むべしという布令を守っているのはヘイセイだけなのです。あとは、朝廷自らが呉・漢混合でやっています。
 私は大学に入学するまでは元号の使用が当然だと思っていました。昭和42年の入学ですから、大学のクラスは42L??17Dという表記になっていました。今では当然のことながら05入学という表記になっています。ちなみに、娘が今春入った大学では4年後に卒業する年をとって09と表記するとのことです。昭和が平成に変わってから、私は元号使用を基本的にやめました。とくに何年間していたかというのが問題になるときには、元号では計算できないという不便さがあるからです。
 天皇一代一元号というのは、たかだか明治以降のものでしかありません。それまでは一人の天皇がいくつもの元号をつかっていたのです。江戸の大火で有名な明和九年は「めいわく」と人々から呼ばれるようになって、元号が変えられたということです。これだけ国際化がすすんでいるのですから、仲間うちだけでしか通用しない馬鹿馬鹿しい制度は早く捨て去りたいものです。

アウシュビッツを越えて

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著者:アナ・ハイルマン、出版社:東洋書林
 アウシュビッツに強制収容されながら生き抜いた、当時14歳のユダヤ少女アナの物語です。アウシュビッツが工場群を併設した施設であったことがよく分かります。
 アナ・ハイルマンは、弾薬工場で働いていたため、死を免れたのです。でも、姉は、弾薬工場で扱っていたその火薬をひそかに外へ持ち出し、アウシュビッツ収容所内の抵抗組織に渡し、そのことが発覚し、他の3人の若い女性とともに1945年1月5日、全収容者の前で絞首刑に処せられました。持ち出された火薬は、1944年10月のアウシュビッツ内の暴動(蜂起)につかわれ、死体焼却場のひとつが爆破されました。いずれ自分たちは死ぬと分かっていたので、どうせ死ぬのなら、何らかの意味ある死を選びたいという意思にもとづく行動でした。
 著者はポーランドのワルシャワに生まれ育ちました。ユダヤ人といっても正統派というより同化ユダヤ人として生きていた家庭です。平穏な中流階級の生活を過ごしていました。
 三人姉妹の末っ子として、いくらかの波風がたちながらも平和な毎日の生活でした。その淡々とした生活描写が心をうちます。それが、ナチスドイツにポーランドが占領されて、一変するのです。ワルシャワにユダヤ人のゲットーがつくられます。両親はマイダネク強制収容所に送られ、直後に殺害されました。
 1943年9月から1945年5月まで、アナは強制収容所の辛い、非人間的な生活を生きのびます。その不屈の意志には、ただただ頭が下がります。
 幼いころの三人姉妹の、いかにも賢そうな写真が心をうちます。

壊滅

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著者:エミール・ゾラ、出版社:論創社
 1870年に始まった普仏戦争で、フランス軍がいかにたたかい、プロシア軍に敗れていったか、刻明に再現したゾラの小説です。ナポレオン3世がみじめにもプロシア軍の捕虜になっていく様子も描かれています。そのことがパリ市内での反乱(パリ・コミューン)を呼び起こします。後半には、パリ・コミューンが壊滅していく様子も記述されています。
 プロシア軍なんかに負けるはずがない。こんな確信で始めた戦争ですが、実はフランス軍の指揮命令系統は無謀なナポレオン3世のもとで、滅茶苦茶でした。てんでんバラバラにたたかい、退却していくのですから、統制のとれたプロシア軍にかなうはずがありません。まともに食事をする間もなく、後退命令が出され、指揮命令が貫徹していないため、無為に何時間も立ち往生する。そして、次々に敵の砲弾によって殺され、負傷していく兵士たちの様子が実に生々しく刻明に描かれています。
 ナポレオンを崇拝していたボナパルティストの兵士も、ナポレオン3世が空想的な精神と、できの悪い頭脳をもつ、無能な人間だということを認めざるをえない現実がありました。
 400字詰めの1400枚の長編小説で、660頁の大部な本です。この本を読んで、普仏戦争の実相に初めて触れた気がしました。ナポレオン3世を美化するなんて、とんでもないことだと改めて実感したことです。

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