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近世の女旅日記事典

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著者:柴 桂子、出版社:東京堂出版
 江戸時代の女性が日本各地を旅行したときの日記が、こんなにたくさんあること自体に私は感動してしまいました。すごいものです。
 「入り鉄砲に出女」と呼ばれたように、江戸時代は、武器の江戸への流入と諸大名の妻女の江戸からの脱出を厳しく取調べたことは有名です。このイメージが強いものですから、女性が旅行するなんて考えられないことです。しかし、この本を読むと、とんでもない。江戸だけでなく、東北でも九州でも、たくさんの女性が日本各地を自由気ままに旅行していました。なかには一人旅を楽しむ女性すらいたのです。そうそう。そうなんです。日本の女性が昔から弱かったはずはありませんよ。長く弁護士をしていて、私はつくづくそう思います。
 たしかに、女手形があり、きびしい女改めはありました。しかし、同時に関所抜けも公然たるものでした。抜け道の案内賃として100文を払えばよかったのです。宿屋で案内人を斡旋してもらい、夜のうちに垣根や塀などの穴をくぐって関所抜けするのです。関所で手形をもたずに通れなかった女性は、茶屋の亭主に頼み、役人に50文の袖の下をつかって通過しています。
 昔は女人禁制の山が、あちこちにありました。富士山も通常は女人禁制。しかし、僧に導かれて頂上まで登った女性もいました。
 道中の食事はあまりおいしいものではなかったようです。でも、伊勢神宮のときには、桁はずれのご馳走でした。鯛も鮑もつき、酒と肴がふるまわれました。
 女性の一人旅も珍しいことではありませんでした。しかも、女盛りの41歳の女性一人旅です。各地の俳諧仲間を訪ねて歩いた山口県(長門)の女性(田上菊舎)がいます。
 旅の目的はさまざまです。人質、国替という公式のものから、吟行、湯治、観光、そして参詣、巡礼などの私的なものまで、いろいろあります。
 今も昔も、日本女性の旅行好きは変わらないことが、この本を読んで改めて実感することができます。うちのわがまま娘も、定職に就かないまま、気ままな世界旅行を夢見ています。これまでにも、さんざん海外旅行しているのに・・・。

考えるトヨタの現場

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著者:田中正和、出版社:ビジネス社
 名古屋大学の大学院を出て、600人の部下をもつ完成車組立工場の課長職を5年間つとめた経験をふまえ、ものつくり大学の教授である著者がトヨタ方式を実践的に考察した本です。
 私がトヨタの車に乗っているから、ニッサンがルノーに乗っ取られて悔しいから、トヨタ方式を賛美するというわけでは決してありません。でも、この本には紹介するだけの内容があると思いました。
 会社あっての従業員であり、従業員あっての会社である。従業員を解雇したくないという経営方針が生きている。
 トヨタ方式における人間性尊重とは、ありのままの個人の能力を受けいれて、その能力で手の届くちょっと上の目標に挑戦していくことで、持てる能力を存分に発揮してもらうこと。ありのままの個人の能力を受けいれる。うーん、いい言葉ですよね・・・。
 難しいことは自社でやる。やさしいものを外注に出す。楽をしたいと思うのが人の性。放置しておくと、簡単な仕事だけが自社内に残り、肝心な技術は外に出してしまう。これでは厳しい市場競争で戦えなくなる。
 バブル以降、多くの会社が金もうけだけを考えるようになってしまったのが残念。いつのまにか、MBAを取得したアメリカかぶれのビジネスマンや経営コンサルタントの口車に乗せされて、目の色を変えて金もうけに走るようになってしまった。ところが、血眼になって金もうけをすればするほど、目の前からお金が逃げていくのが、この世の理である。
 本当にそうなんですよね。弁護士を長くしていて、実感として、そう思います。お金は天下のまわりもの、というのが一番の真理のように思います。
 トヨタ方式のジャスト・イン・タイムはジャスト・オン・タイム(同期生産)とは異なる。単に在庫低減だけでなく、間に合うギリギリの設備能力と、ギリギリの作業要員数で生産するのを狙うやり方なのだ。このジャスト・イン・タイムは、アメリカの大資本自動車メーカーに、少ない資金で対抗するために考えだされた方法。少ない資金で動かすためには、リードタイムを短縮し、入った材料で出ていくまでの時間を短縮し、資金繰りをよくするしかない。
 ストレスのかかる職場に働いている人は活性化し、バリバリ仕事をこなす人に育っていく。ストレスがかかっていない職場では、人の能力は衰える一方である。いやあ、まったくそうなんですよね。私も忙しいときの方が本をたくさん読めますし、また、頭が生き生きとよく働きます。ヒマだと、ボーッとしているだけなんです。もっとも、あまりヒマなことはありませんが・・・。
 安住こそが一番よくない。いつも何かに挑戦していないといけない。人生とはこんなものだと諦めてしまったら、明日から生きる意味はなくなってしまう。まだまだやることがあると思うことで、人は生きている。
 改善とは、波瀾万丈に対応しながら生きることであり、真理を見きわめることであり、何かを求め続けることである。まったく同感です。私にとって、毎日の書評とフランス語そしてモノカキは、日々の挑戦です。安住したくありません。ずっとずっと挑戦していきます。さあ、あなたもご一緒にどうぞ。

政治改革論争史

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著者:臼井貞夫、出版社:第一法規
 著者とは、先日、ある会合で初めてお会いしました。といっても、親しく話でもしたというのではなく、この本をぜひ読むようにすすめられたのです。まあ、せっかく先輩の書いた本なら、読んであげなくっちゃ、という思いでFAXで注文して読んでみました。
 あまり期待せずに読みはじめたのですが、議院法制局からみた政界裏面史は意外に面白いものでした。まあ、それも、日本の政治が激動期だったので、それをあとづけているからかもしれません。それにしても、平成3年から6年にかけての「政治改革」推進のマスコミ・キャンペーンは異常といえるほどのものでしたね。
 平成5年にいたっては、現状維持派に対して「守旧派」なる言葉を投げつけ、選挙制度改革の世論誘導までした。その積極推進派は学者とマスコミ関係者が多い。
 私も、当時を思い出して、なるほど、そうだったと思います。マスコミによる小選挙区で日本は良くなると言わんばかりの大ゲサで間違ったキャンペーンに辟易もしましたが、国民は素直に誘導されてしまいました。今でも2大政党制を絶対視して、民主党なる自民党分派を天まで高くもちあげ、「左翼」をバッサリ切り捨ています。フランスで若者の解雇を容易にする法律(CPE)に反対するデモやストライキが盛りあがったとき、国会で決めた法律を街頭デモで覆すなんて民主主義に反する暴挙だ。日本のマスコミはこのように非難したのです。とんでもない民主主義観です。
 議員立法の立案過程は、政党または議院から依頼があると、電話でまたは議員室を訪問して疑問点を質し、依頼の趣旨を確定し、関係法律等の調査を行い、原案を起案する。起案中に疑問が生じると、さらに依頼者側に説明をしながら、要望を聞き、細部を調整し、課段段案の最終案を確定する。そして、局内の審査を経て法律案が策定される。
 著者の属する第一部第二課の7人は、平成5年2、3、4月の2ヶ月あまり、一切の休暇なく、連日の深夜勤務、このうち完全徹夜2日で懸命にとりくんだ。土・日勤務の次の月曜日には弁当の空箱で部屋の入り口が埋まるほどだった。
 議院法制局は、起案するが、国会での議論の推移に任せ、積極的に憲法判断をしないという場合もある。
 議院法制局には2つの役割がある。一つは、客観的な意見を述べる法制局の役割。もう一つは、依頼者の意見の補佐をする法制局の役割である。内閣法制局が内閣や閣法のため、どんな理屈でもいうのと同じ役割を果たすべきである。こんな考えがあるそうです。後者には驚きました。へ理屈つけろ、というんですよね。
 平成5年は著者の人生のなかでも、とくに大変だった。とにかく忙しかった。19回の休日出勤、2回の完全徹夜をふくみ、数えきれないほどの深夜・早朝勤務。10数回にも及ぶ午前2時、3時のタクシーでの帰宅(1回、1万8,500円かかる)など。平均睡眠時間は1日4時間を割っていた。電車のなかで立ったまま眠るのが、しばしば。膝がガクンと折れて、全身が吊革にぶら下がる。とにかく寝たい、風呂にゆっくり入りたい、床屋に行きたい。これが、この年の個人的願望だった。
 細川内閣の存立を支えた二大ブレーンは、閣内にあっては武村正義官房長官であり、閣外にあっては小沢一郎・新生党代表幹事であった。小沢代表幹事が連立与党各派のなかでイニシアチブをとれたのは、市川公明党書記長との固い連携があったから。
 この小沢一郎が、今や民主党代表です。細川・武村・市川の3氏は、そろって政界を引退してしまったのと対照的です。
 現行の小選挙区制度の生みの親として、著者は2人の議員をあげています。故後藤田正晴と小沢一郎です。2人とも、誤った政策をすれば他の政党がこれに取って代われるという常に緊張感ある政治を実現する必要があると強く主張していた。しかし、ベタナギ国会と呼ばれるほど、今や国会の議論は低調になっている。それは、世論と国会との勢力比のギャップが大きすぎることにある。
 そこで、著者は、衆議院は全国比例代表制に、参議院は都道府県代表制に変えるべしと提唱しています。私も、もろ手をあげて、これに賛同します。
 国民の政治離れを防ぎ、国民と国家の一体性を今後とも維持するためには、より民意を反映した選挙制度の方が国家としても繁栄するのではないかと思う。
 著者の考えです。同感です。私も、国民の多様性を保障することこそ、日本が全体として発展していく前提条件だと確信しています。金子みすずの詩ではありませんが、人はいろいろいるから、いいんです。画一的ばかりでは矛盾がないので、発展もしません。いかがでしょうか?
 連休が明け、ジャーマン・アイリスが花盛りです。薄い青紫色の気品のある大きな花に心が魅かれます。

書きたがる脳

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著者:アリス・W・フラハティ、出版社:ランダムハウス講談社
 書くことは人間の至高の営みに一つである。いや、書くことこそ至高の営みである。そうなんです。まったく同感です。よくぞ言ってくれました。私は、こうやって毎日毎日、一時間以上は机に向かって書いています。ええ、そうです。キーボードを叩いているのではありません。ペンを握って、一字一句、手で書いているのです。そっちの方が断然はやいのです。
 書くためには、読む必要がある。言葉には色が見える共感覚がある。ホント、そうなんですよ。私も年間500冊以上の単行本を読み、定期購読の雑誌が5冊以上、そして毎日、新聞を5紙読んでいます。本を読むと、なんだか著者の語りが聞こえてくる気のすることもあります。
 ドストエフスキーは側頭葉てんかんの患者だった。異常にモチベーションの高い作家である。ルイス・キャロルも同じ病気だった。ほかにも、同じ患者としてモーパッサン、パスカル、ダンテ、フローベルなどがいる。
 アイザック・アシモフは、死ぬまでに477冊の著書を完成させた。すごいものです。なんとも言いようがありません。私も、この30年間、年に1冊以上の本を出してきました。今も、2冊の本を完成させようとがんばっています。
 百万匹のサルに百万台のタイプを叩かせておいたら、いつかは傑作が生まれるかもしれないという説があった。しかし、インターネットのおかげで、この説が間違っていることが証明された。うーん、なるほど・・・。といっても、いまやケータイで小説を書く人がいて、それをケータイで読む大量の読者がいるというのです。とても信じられません。どうやって著者はインスピレーションを湧かせるのでしょうか。
 絵画や音楽のときには右脳が活性化するが、書くときには左脳の活動が活発になる。
 一般人の強迫的な読書は、生まれつきの性質と学習があいまって、さらにときには違う世界に避難したいという傾向も働いている。そう、そうなんです。私も、毎日、トラブルの渦中に首をつっこんでいますので、トラブルのない、心静かな世界に逃れてみたいのです。ですから、それを逃避と言われると、抵抗感もありますが、そうなんだろうなと自分でも認めざるをえません。
 書きたいという衝動は、もっと基本的な衝動、つまりコミュニケーションをしたいという衝動から派生した二次的な衝動だ。うーむ、まったくそうですね。
 言葉は最初の向精神薬だった。言葉は、慰める、楽しませる、感情のはけ口となるなど、いくつかの方法で気分をよくしてくれる。言葉が気分を変える最後の技術は、感情のはけ口となること。人間は不満を言いたいという根深い必要性をみたすために言葉を発明した。だが、気持ちを吐き出してほっとするためには、聞き手がたとえ黙っていても、熱心に耳を傾けてくれることが、ぜひとも必要なのである。話していると、脳は脳内麻薬を放出して気分を改善してくれる。書くのは、おしゃべりの代わりだ。おしゃべりほど効き目はないが・・・。
 私の脳も、まさに書きたがる脳なんですよね。

制服捜査

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著者:佐々木 譲、出版社:新潮社
 これが本物の警察小説だ。オビに書かれているキャッチ・フレーズに偽りはありません。「うたう警官」(角川春樹事務所)も北海道警の醜い側面を鋭くえぐった面白い警察小説でしたが、今回もじっくり読ませました。その筆力に感心します。たいしたものです。
 稲葉警部の不祥事が発覚して以来、北海道警は警察官の管理を極端に厳しくした。ひとつの職場に7年在籍した者は無条件に異動させる。同じ地方で10年勤めたら有無を言わさず、よそへ移すことにした。その結果、所轄の警察署にはベテランと呼ばれる捜査員がまったくいなくなった。経験の必要とされる刑事課強行犯係の年配刑事が、べつの地方で運転免許証の更新事務に携わる。小さな町で地元と長い信頼関係を築いてきた駐在所の警察官が、札幌で慣れない鑑識の仕事についている。犯罪者の検挙率が多少落ちてもかまわない。それより稲葉警部のような暴走する警官を出さないことの方が重大事だ。これが道警本部の方針。ふむふむ、そういうことが警察の世界で起きているのか、知らなかった。
 無能な刑事は、まわりの人間の人生をあっさりとぶち壊す。
 こんな鋭い言葉が出てきて、しびれます。
 駐在所の警察官の最大の任務は、被害者を出さないことではない。犯罪者を出さないこと。選挙違反の摘発だって、簡単にしてもらっては困る。選挙違反に手を染めるのは、地域への献身の証なのだ。それを摘発する警察は、地域の事情を知らない馬鹿役所だ。
 昔ながらの有力者による買収・供応という選挙違反がはびこるのは、ごめんです。でも、戸別訪問やビラ配りは一刻も早く全面解禁すべきです。
 駐在所に単身赴任した警察官が、地域の事情を少しずつのみこみながら、地域の政財界の有力者から圧力を受け、軋轢のなかで、所轄署ともたたかいながら犯人究明に乗り出していく苦労話でもあります。すごく読みやすい警察小説でした。
 ところで、私の住む町の身近な交番が2つも最近なくなってしまいました。警察官は大幅に増員されているのに、地域からはいなくなっているのです。これで地域の安全をどうやって守るというのでしょうか。
 日本の警察は優秀だと長く言われてきましたが、最近ではあまり評価されないようになっています。スーパーで万引きしたら、すぐに捕まります。私は今、コンビニでタバコ2箱を万引きしようとした青年の国選弁護人です。もちろん、万引きを放任しろ、なんてことは絶対に言いません。でも、暴力団がのさばっているのを本当になんとかしてほしいと市民の一人として思います。多くの市民の商売の邪魔になっているのですから。それに重大事件はなかなか捕まりません。ましてやグリコ事件のような知能犯は容易に捕まらない。いろんな理由があるでしょうが、その一つに警備・公安警察の優遇があるように思います。なにしろS(スパイ)対策費として、支出のチェックを受けないお金を自由に処理できるのですから、腐敗が起きないはずはありません。この本でも、駐在所の巡査の関心事が、教職員組合の動向と民主党と共産党の裏事情だという話が紹介されています。政権党を守ることが国家秩序の維持なんだ。ゴミのような事件なんて、どうでもいい。そこには、こんな警察トップの本音が隠されています。やはり、警察官にも労働組合を認めるべきです。

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