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朴正熈、最後の一日

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著者:趙 甲済、出版社:草思社
 「ヒトラーの最期の10日間」を思い出させる本です。独裁者の孤独な生活が描かれています。最近みた韓国映画「大統領の理髪師」を、映像という点で視覚的に想起しました。
 韓国では、最近、朴正熈を見直す動きが強まっています。その娘が野党の代表者として人気を集めているのは、その具体的なあらわれでしょう。でも、私には、野蛮な軍人であり、民主化を阻んだ独裁者としか思えません。
 朴正熈が側近の金載圭KCIA部長から宴会場で射殺される一日を詳しく描いた本です。図と写真もついていて、状況がよく分かります。朴正熈が射殺されたとき、2人の若い女性が宴会にはべっていたというのを知っていましたが、なんだかいかがわしい状況を想像していました。でも、女子大生と女優の2人はギターをもちこんで歌っただけのようです。それどころか、宴会場は車智?・青瓦台警護室長とKCIA部長の激しい応酬でトゲトゲしい雰囲気だったようです。
 1979年10月26日、朴正熈はKCIA部長に射殺された。62歳だった。この年の10月初め、金載圭の命令で、KCIAの元部長・金炯旭がパリで暗殺されていた。 
 青瓦台の本館には、職員が夕方6時に退庁したあとは。525坪の本館に大統領と2人娘のほかは、宿直当番の秘書室職員と警護官のみ。都市のなかの孤島になった。
 朴正熈の書斎兼執務室には600冊の本があったが、小説やエッセイ・詩集は一冊もない。彼は実用主義者だった。「金日成」「資本論の誤訳」などの日本語版もあった。
 その日、朴正熈の演説には、いつもの張りがなかった。独特の、鉄を叩くようなキンキンと響く声ではなく、力が少し抜ける感じだった。
 映画「シルミド」で有名になった金日成暗殺部隊の創設を命じたのは、朴正熈でした。
 朴正熈大統領と、その側近だった金桂元、金載圭、車智?の3人の元軍人は身長が164センチと小柄だった。
 車智?は傲慢、金桂元は調整力不正、金載圭は肝臓病病み。
 権威主義的な政権の核心においては、最高権力者の耳と目を独占しようとする競争が熾烈さを増す。誰よりも先に情報を提供し、権力者の公的的な先入観をつくりあげることが、この権力ゲームのやり方だ。車智?室長が影の権力者の地位を、こうしたゲームに活用していたため、秘書室長と情報部長は常に一歩出遅れた。
 車智?は佐官将校として除隊したにすぎないのに、陸軍大将出身の秘書室長と陸軍中将出身の情報部長、それもずっと年上の2人を、まるで部下のように扱った。
 朴正熈は、郷里の後輩であり、陸士の同期生であり、そして自分の庇護のもとで育ててきた金載圭を甘く見ていたのか人前で金載圭の無能力さをなじることが多々あった。
 この日の宴会では、車智?と朴正熈がまるで口裏をあわせたかのように金載圭を一方的に追いこんだ。これが決定的な要因となって、激しやすい金載圭は車智?を殺してしまおうと思いつめ、そのためには朴正熈が邪魔となった。朴正熈はあの傲慢な車智?を偏愛してきた。そして今夜も一緒になって私を追いこんでいる。許せない。金載圭の鬱屈した感情は殺意へ変わった。
 金載圭は朴正熈の射殺直前に2人の部下に警護員たちの暗殺指令を下したが、そのとき自由民主主義のために、と言っている。KCIA部長は、長期政権に対する国民の不満を確認していた。釜山での非常戒厳令事態をふまえての認識だ。
 金載圭は、まず車智?の右手首をうった。そのあと数秒して、足もとがふらついたままの姿勢で朴正熈を見下ろし、胸をうった。朴正熈は「何をしておる」と言ったまま、目を閉じ、胡座をかいたまま動かなかった。金載圭の拳銃(ワルサーPPK)はこの2発をうったあと故障して動かなくなり、金載圭はあわてた。
 金載圭の部下に倒された警護官たちは防弾ベストを装着していなかった。
 金載圭の頭のなかには、朴正熈の殺害までのスケジュールしかなく、それ以降の行動計画は何ひとつ考えていなかった。現場にいて殺害状況を目撃した2人の女性は20万ウォンの小切手をもたされて帰宅させられた。現場保全も遺体の安置も、支配確保もまったくなされていない。
 大変緊張しながら2時間かけて一気に読み通しました。緊迫した状況がよく伝わってきます。そして、このあとに登場するのが全斗煥です。軍人って、本当に嫌な人種です。昔も今も、洋の東西を問わず、人殺しと自分の栄誉しか考えていない連中ばかりですから・・・。

きみのいる生活

カテゴリー:未分類

著者:大竹昭子、出版社:文芸春秋
 いやあ、とっても面白い本でした。あの日頃嫌われもののネズミが、こんなにも人間に似た動物だったなんて、ちっとも知りませんでした。
 パソコンのパーツを買いに行った夫が、目ざすパーツを見つけられずに、帰り道にマウスではなく本物のスナネズミをペットショップで買ってきたのです。そのスナネズミのしぐさの可愛いらしいこと。まるで人間そっくりなのに、ついつい笑ってしまいます。
 漢語に鼠牙雀角(そがじゃっかく)という言葉があるそうです。まったく知りませんでした。ネズミの歯とスズメのくちばしという言葉ですが、訴訟沙汰を意味します。費用がつもりつもって家が破産するさまを、ネズミの歯やスズメのくちばしが壁を屋根を傷めるさまになぞらえた言葉です。弁護士である私にとっては、少し複雑な心境になります。
 初代クロは、著者が畳に座っていると、そばにやってきて、「ねえ、ちょっと」と言いたげにその膝に手を置く。いかにも人恋しそうな様子で、足とちがって手が気持ちを伝えるものであることを伝える。
 寝そべっているときとは違って、好きなことに集中しているときの目はピカピカと光り、動きは躍動感にあふれて生き生きしている。上手だねえ、とほめようものなら、ますます得意そうになる。「目を輝かせる」という表現があるが、目の動きと意識の関係に文字どおりの意味があるのに感銘する。初代クロは、感電してあっけなく死んでしまいました。本箱の裏にもぐりこんで電気のコードをかじってしまったのです。
 二代目のクロを飼いました。性格がまるで初代と違うのです。たとえば初代はパンが大好きでしたが、二代目はまったく無関心でした。初代のクロは無鉄砲で、自分の思うように動かないと気がすみませんでした。二代目クロは用心深く、いろいろな予測を立てながら慎重に行動します。
 このスナネズミはモンゴル生まれです。「動物のお医者さん」に出てくるネズミだそうですが、私は読んだ覚えがありません。私は本が好きですから、子どもたちにもたくさん絵本をよんでやりました。ネズミの出てくる絵本は何冊もあります。いわむらかずおの「14ひき」シリーズ(童心社)の絵もいいですよね。「のばらの村のものがたり」シリーズはイギリスの絵本です。家庭内のこまごまとした食器類などもよく描けています(講談社)。斎藤惇夫の「冒険者たち・・・ガンバと15ひきの仲間」(岩波書店)は、珍しいことにドブネズミのガンバが主人公です。男の子のたくましさを感じました。子どもたちに読み聞かせた本は、今も大事に全部とってあります。押し入れなんかでなく、居間のすぐ身近なところに置いています。孫でもやってきたら、また読んであげようと思うのですが。
 三代目モモは、鏡の前をとおるときには、必ず立ち止まって自分の姿を眺めいる。自分を美しいと感じているらしい。毛づくろいにも念が入っている。まず手先で口のまわりを丹念にふく。しだいに範囲を広げて顔ぜんたいをなでつけ、次に頭を下げて両手を首のうしろにもっていき、毛をはらう。まるで人間がシャンプーしているときの格好にそっくりだ。
 しらばくれる、という感情は動物にもあって、悪いことをしたあとには、決まって、しらっとした顔をしている。
 三代目モモは、マッサージされるのを好んだ。自分でマッサージしてもらいところを指示する。こる場所は人もネズミも変わらない。やめると、つむっていた目をパチッとあけて、もう終わり?という顔をする。なんと・・・!
 三代目のモモは老衰で死んだ。スナネズミの寿命は3年。
 そのあと、つがいのスナネズミを飼って、とたんににぎやかになりました。一匹一匹がとても性格が違うのですが、それを著者はよく観察していて、笑わせますよ。
 新しいことを試してみるのは、つねに女なのです。
 ごはんが苦手のネズミがいます。あのネバネバした感触がダメなのです。チーズも食べるのと食べないのがいます。いやー驚きです。
 アポ計画で生物衛星にスナネズミも乗ったそうです。
 ネズミも心身症にかかる。イジメにあうと、太ったからだがみるみるうちにしぼみだし、毛のつやもなくなり、このまま衰弱して死ぬ日も間近いとまで思われた。
 最高時には13名(匹ではありません)のスナネズミを飼った観察記録です。写真もあり、飽きない面白さです。集団で飼うと、また違った意味で人間臭くなるというのも一興です。
 きのう(日曜日)の早朝、母が亡くなりました。93歳ですので、天寿をまっとうしたと思います。父は25年前に亡くなりました。母の伝記を読みものにするのが途中となっていますので、これから完成をめざします。時代背景をふまえて人の一生をあとづけるというのは自己認識がとても深まります。蝉がうるさく鳴く真夏の一日でした。

わが名はヴィドック

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著者:ジェイムズ・モートン、出版社:東洋書林
 1817年にヴィドッグの12人の部下は、811人を逮捕した。殺人者15人、窃盗犯341人、古買屋38人、脱獄囚14人、監獄に戻らない者43人、詐欺師46人。
 ヴィドッグは、警察につとめているのに、本人は1796年の文書偽造事件の有罪判決が生きていて、指名手配中であった。
 ヴィドッグは、パリ警視庁の特捜班長に任命された。給料は6000フラン。
 ヴィドッグは、1832年、世界初の探偵事務所を設立した。年会費20フラン、面接一回につき5フランという料金だった。
 私立探偵を頼んだ依頼者からその法外な値段を聞いて驚いた弁護士は多いと思います。なにしろ1週間、浮気相手の尾行追跡で300万円支払ったというのは珍しくありません。
 ヴィドッグの私立探偵としての仕事の多くは借金の取り立てでした。
 1847年、ヴィドッグの探偵事務所は閉鎖された。
 ヴィドッグは、犯罪者や容疑者の肉体的特徴を記録したカードの集積を始めた。まだ指紋がつかわれていない時代である。
 ヴィドッグはバルザックの大犯罪者ヴォートランの原型であり、ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」のジャヴェール警部とジャン・ヴァルジャンの両者のモデルでもある。そして、シャーロック・ホームズの好敵手アルセーヌ・ルパンのモデルでもある。
 犯罪者が警察の側にまわり、部下にも元犯罪者をたくさん集めて、犯罪者の検挙で成績を上げるという話です。

モナ・リザの罠

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著者:西岡文彦、出版社:講談社現代新書
 実は「ダヴィンチ・コード」は本も映画も見ていないし、読んでいないのです。といっても、ルーブル美術館で本物のモナ・リザの絵は何回か見ましたし・・・。
 ルーブル美術館からモナ・リザの絵が盗まれ(1911年)、2年後にイタリアのフィレンツェで発見されたということを初めて知りました。
 中国や日本の山水画が11世紀にその表現を完成していたのに、ヨーロッパでは「モナ・リザ」の時代でもまだ風景画という概念そのものが存在していなかったという指摘に驚かされました。それまでは人間のドラマの背景に過ぎず、風景それ自体を絵画の主題にすることはなかったのです。
 ところで、この本を私が紹介しようと考えたのは、実はモナ・リザの絵のことではなく、次のような指摘があったからでした。
 本が面白く読めたというのは、本を読んだのではなく、本で世の中が、世の中を見る自分が読めたということ。つまり、単に本の内容が読めても、そんなことは面白くもなんともない。本当に面白い本や学問というものは、それを学ぶことによって、世の中や自分自身のことが「読める」ようなもののことなのだ。それまで漫然と眺めていた社会の様相が、その本を読むことで、突然に明瞭に理解できるからこそ本を読むわけで、本の内容ばかり詳しくなって、世の中のことも自分自身のことも見えていないようでは、学問でもなんでもないということ。
 これは、なかなか鋭い指摘だと私は思いました。大量の本を読み続けている私にとって、それは自分と人間社会を知る作業なんだといつも自覚させられるのです。

ユダの福音書を追え

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著者:ハーバート・クロスニー、出版社:ナショナル・ジオグラフィック
 私はキリスト教の旧約聖書も新約聖書も読んだことがありませんので、ユダの福音書についても、実はまったく分かりません。無神論者の私ですが、苦しいときの神頼みは昔も今もしています。この本は、ユダは裏切り者ではなかったことが判明した古本が見つかったという表題にひかれて読みました。
 発見・復元・解読を追った衝撃のドキュメント。オビにはこう書かれています。なるほどそのとおりなのですが、素人にも分かりやすく肝心の福音書の要点をもっと説明してほしかったというのが率直な感想です。その点が物足りないため、この本全体がまがいものなのでは・・・、という疑いすら払拭しきれません。
 ユダといえば、イエスの弟にもユダ・トマスがいたそうです。知りませんでした。
 「ユダの福音書」におけるユダは、イエスに特別扱いされる選ばれた弟子だ。イエスは自分に忠実なこの弟子に、皆を導くあの星がおまえの星だと告げている。イエスをユダヤ人指導者たちに引き渡すようユダに求めたのは、ほかでもないイエスその人だった。イエスは誠実な弟子であるユダに約束する。おまえの星、ユダの星は天に光り輝くだろう。
 これまでとは異なるイエカリオテのユダの像が浮かび上がる。裏切り者というより、むしろ他の弟子たちから抜きんでた特別な存在だ。
 イエスの生きた時代に続く百年のあいだに書かれたことを考慮すると、この福音書は初期段階のキリスト教信仰やその多彩な活動について、これまでにない味方を提供する衝撃的な書だ。
 「ユダの福音書」に裏切りという題材が登場しないのは、ユダが主を裏切っていないからである。むしろユダはイエスの望みをかなえたのだ。ユダは弟子のなかでも抜きんでた存在であり、他の弟子たちの影は薄い。ユダは、成就のためにイエスが選んだ道具だった。
 イスカリオテのユダは、イエスに愛された弟子であり、かけがえのない親友だったのだ。このように書かれていますが、どうなんでしょうか・・・。この本の評価を、どうぞ教えてください。

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