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君命を受けざる所あり

カテゴリー:社会

著者:渡辺恒雄、出版社:日本経済新聞出版社
 あのナベツネの自伝です。自民党と民主党の大連立を画策した張本人です。いったい日本をどうしようっていうんでしょうか。自分たちの思うように、いま以上に金権政治がまかりとおる日本にしようというのでしょうね。とんでもない権謀術数を駆使する野謀にたけた政治屋であることが、この本にはしなくもあらわれています。
 私がこの本を読んで一番いやな話だと思ったことは、いま読売新聞社の社屋の建っている土地を取得するまでの経緯です。もとは国有地だったのです。そして読売新聞社は通常ならその取得する可能性はとても低かったのです。むしろサンケイ新聞の方が先順位にありました。それを政治力で見事に逆転していったのです。国有地を政治家と有力マスコミで私物化しているのですね、許せません。
 政界トップとマスコミ・トップの密着ぶりは読めば読むほど、嫌な気分にさせます。ええーっ、マスコミって、権力の行き過ぎを少しは牽制する機能を果たすべき役割があるのじゃないのかしらん・・・。そんな疑問を何回となく感じました。
 政治部記者として、ナベツネ記者はさすがに有能だったようです。日米の政界の重要人物と肝胆相照らす仲となって、機密事項の相談にまで乗っていたというのです。ただ単に記事の書ける記者というのではなく、政治家と一緒に政治を動かす記者だったのです。
 同じことは、読売新聞社内部の記者同士の派閥抗争についても言えます。著者は、まさに、その激しい派閥抗争の最終的勝者なのです。著者に負けて脱落していった人には、救いようのないレッテルが何回となく貼られていき、事情を知らない第三者である私などは可哀相に思えるほどです。だから、ひとしお真実を知りたいという気分になります。本当にそうなんでしょうか・・・?。
 自民党政治とマスコミ界の権謀術数の実際の一端を知ることのできる貴重な本だと思いました。
(2007年11月刊。1600円+税)

キムラ弁護士、ミステリーにケンカを売る

カテゴリー:司法

著者:木村晋介、出版社:筑摩書房
 『マークスの山』(高村薫)を1週間かけて精読し、公判調書を読みくだく要領で 70枚ものフセンを貼りつけ、登場人物の相関図を作成しながら読破したというのです。すごーい。それだけで感嘆しました。『マークスの山』は、私は旧版と新版と2度よみましたが、そのたびに感銘を深めるだけで、そこに矛盾があるなどと感じたこともありませんでした。ただ、実は、気がついたことが一つだけありました。登場人物が、なんと私と同世代だったということです。それを考えると、たとえ権力の上層部にいたとしても、そう簡単に事件をもみ消したり、シロをクロと言いくるめるような「権力」の行使なんて無理だよな、ということです。
 横山秀夫の『半落ち』にも挑戦しています。なぜ、被疑者は空白の2日間について真相を語らなかったのか。それを話しても誰も不利益を受けないのに・・・、という指摘は、私も漠然とした疑問を抱いていたところでした。そして、弁護士が被疑者と会うには弁護人選任届が提出されていることが要件ではない。それを著者は知らなかったのではないか、という指摘には、なるほど、そうですね、とうなずいてしまいました。
 そして、夏樹静子の『量刑』にも果敢に挑戦するのです。これには驚きました。『量刑』は、私がとても感心したミステリー小説だったからです。ところが、さすがはキムラ弁護士です。『量刑』のアラをたちまち見破ってしまいました。業務上過失致死傷罪を構成するのを落としているというのです。これは、すごいことです。
 ほかにも、いろんな本が取りあげられ、キムラ弁護士の教養の深さに感じいりながら読みすすめていきました。こんなミステリー小説の読み方もあるのですね。すごいですよね、すごいです。キムラ弁護士の眼力に比べると、私って、まだまだ弁護士力がかなり不足しているようです。でも、これで弁護士35年目に入っているのですけど・・・。少しばかり自信をなくしてしまいました。シュン・・・。
 お正月休みに庭の手入れをして、今はかなりすっきりしています。黄色い小さな花をたくさんつけたロウバイが盛りです。ほんとうにロウのような色をしています。匂いロウバイと言いますが、実は、あまり匂いは感じません。私の鼻が悪いのかもしれません。
(2007年11月刊。1400円+税)

侍の翼

カテゴリー:日本史(江戸)

著者:好村兼一、出版社:文藝春秋
 いやあ、たいしたものです。まいりました。フランスのパリに長く住む剣道の達人である日本人が、江戸時代の侍の生きざまを見事に描き出したのです。剣道8段の腕前です。なんと私と同世代。大学生のときに剣道の指導員としてフランスに渡り、それ以来、フランスで剣道の指導をしているというのです。これまで、『日本刀と日本人』などの本があるようですが、この小説によって作家としてデビューしたというわけです。その勇気と努力に対して心から拍手を送ります。私も遅ればせながら作家を目ざしていますが、道はるかなり、というところです。まあ、それでもあきらめずにがんばります。ぜひ応援してやってください。
 大阪城の陣に参戦し、やがて天草の乱に出動します。そこで、我が子が戦死してしまいます。そのうえ、藩主が自害して、武士を失業。行くあてもなく、江戸に出て、侍の誇りを失わないようにしながらも人夫として働きに出ます。
 妻は労咳、今の結核にかかって、病の床にふせっています。死に至る病いです。夫に心配をかけないように表面をとりつくろった無理がたたったのか、早々と亡くなり、主人公は自暴自棄の心境となります。そこへ由比正雪と知りあい、その謀反の手伝いをさせられようとします。一夜、悶々とした主人公はある決断をします。
 子を失い、妻を亡くした主人公は天涯孤独の身となり、生きる意義を見失ってしまいました。あとは、いかに死ぬるかだけを考えて過ごします。
 天雷无妄(てんらいむぼう)という言葉を私は初めて知りました。无妄とは、妄(みだ)り无(な)し、つまり偽りも迷いもない、ありのままの状態をいう。天の運行は晴曇風雨と、さまざまな象となって現れ、そこになんら天の作為はないのに、地上の我々はえてして慌てふためき、作為をもってそれに反応してしまう。ありのままの天に対して作為はいらない。ありのままに応ずるだけだろう。
 自然の摂理に従う限りは、天に背くことはない。その先に待っているのは、きっと平安であろう。著者の言葉です。味わい深いものがあります。
 この本は12月31日に読み終わったものです。私の読書ノートによると、昨年1年間で読んだ単行本は556冊でした。これからも、いい本にめぐりあうために私はせっせと乱読を続けます。速読の秘訣を尋ねられました。私の答えは、ともかく本を読むことです。好奇心をもって本を読めば、どんどん速く読めるようになるものです。
(2007年11月刊。1667円+税)

平成の自治体再編と住民自治

カテゴリー:社会

著者:宮下和裕、出版社:自治体研究社
 私と同世代(正確には1学年だけ年長)で、長く自治体問題を専門にしてきた著者による本です。地方自治はもっと大切にする必要があると思うのですが、年頭から日本経団連の御手洗会長は道州制を九州から始めようと提唱しています。とんでもない男です。財界の思うままに地方の生活をこれ以上、荒らしてほしくはありません。
 07年7月の参院選の分析について共感するところが大でしたので、思わず著者にエールを送ったことでした。というのも、日頃は、民主党なんて所詮は自民党と同根、同じ穴のムジナの類じゃないか、アメリカの共和党と民主党と同じで、名前が違うだけの保守政党内の政権バランスの変動に過ぎない。そんなさめた意見があります。それは共産党や社民党など、根っからの護憲政党が引き続き惨敗したことから来る敗北感にも支えられています。でも、本当にそうなのか。もっと、大局的に政局を眺めてほしい。著者は、そのように訴えています。
 民主党が大きく議席を伸ばすことによって実現した与野党逆転によって、憲法「改正」のための憲法審査会の設置は大きく遅れ、いつ発足するのか、今では見通しもありません。憲法「改正」を目ざす政府広報予算も10分の1以下にバッサリ削減されてしまいました。私は、大いなる拍手を送ります。パチパチパチ。
 8月6日の広島での被爆62年式典で、広島の秋葉忠利市長は、「世界に誇るべき平和憲法をあるがままに遵守し、アメリカの時代遅れで誤った政策には、はっきり『ノー』と言うべきです」と、明確な平和宣言をしています。すごいですね。よくぞ言ってくれました。
 小泉元首相が成功したようなマスコミによる世論操作は、なるほど、それなりに成功している。しかし、安倍前首相は、それに失敗して、その意に反して早々に退陣を余儀なくされました。福田首相は前者の失敗を繰り返さないように心がけていますが、それでもC型肝炎被害者に対する当初のお粗末な対応にみられるように、マスコミ操作をうまくこなしているとは決して言えません。
 著者は次のように強調しています。どうせ、たいしたことはできない。お手並みを拝見しよう。そんな傍観者的な立場に立つことなく、いま国民によって有利な条件をいかに活用するのか、そのようにぜひ考えたいものだ。
 私も、まったく同感です。自民党も公明党も世論操作能力に自信をなくしつつあるのです。今こそ、世の中を良い方向へ変えていく絶好のチャンスなのです。そのように考えたいと、私は痛切に思います。
 自治体再編がすすみ、小さな市町村の合併がすすんでいます。おかげで、聞いたこともないような市がたくさん誕生しました。果たして、大きいことはいいことなのでしょうか。私は決してそうだとは思いません。やはり、地方自治体は住民に身近な存在であってほしいと思います。
 地方自治のあり方に少しでも関心のある方には、ぜひ読んでほしい本です。
(2007年12月刊。2000円+税)

ロッキード秘録

カテゴリー:司法

著者:坂上 遼、出版社:講談社
 吉永祐介と47人の特捜検事たち、というサブ・タイトルがついています。そうです。田中角栄が首相在位当時の5億円ものワイロをアメリカのロッキード社からもらって逮捕され、有罪となった、あのロッキード事件について、検察官たちの動きを刻明に再現した本です。
 ここに登場する検事のうち3人は、私が司法修習生のときに指導を受けました。横浜修習のときの指導担当だったのが松田昇、吉川壽純の両検事です。もちろん、いずれも悪い人柄ではありませんでしたが、それほど冴えているという印象はありませんでした。どちらかと言うと、田舎の人の好いおじさんタイプの検察官だという印象を受けていました(松田検事)。村田恒検事は前期・後期のクラスで検察教官でした。いかにも熱血検事で、村田検事にあこがれ、私のクラスでは大勢の修習生が検事志望になりました。でも、理論的な深みはなく、ただひたすら一直線に突きすすむという印象を受けました。まあ、どちらにしても、若くて生意気盛りの私の印象ですから、たいした根拠があるわけではありません。私の不遜な印象にもかかわらず、みなさん、その後、ロッキード事件で大手柄を立てて、大出世していったのは周知のとおりです。
 事件は1972年(昭和47年)8月のこと。ロッキード社のトライスター(Lー1011)を全日空(ANA)に購入させようと、丸紅の社長は田中角栄の目白台の自宅に訪ね、お礼に5億円を払うと申し込み、田中角栄はこれを承知した。田中角栄の働きかけで、全日空はトライスター機を購入することになった。半年たっても5億円の支払いがなかったので、1973年6月ころ田中角栄の榎本秘書が催促した。そこで、ロッキード社は丸紅を通じて5億円を4回に分けて渡した。イギリス大使館近くの路上で1億円、公衆電話ボックスそばで1億5千万円、ホテルオークラ駐車場で1億2500万円、丸紅社長室宅で1億2500万円、いずれも現金が段ボール箱に入れられており、車のトランクに積み込まれた。
 いったい、この5億円は何に使われたのか?1974年の七夕参議院選挙につかわれた。議員28人に対して1人2000万円が田中角栄から手渡された。1973年11月から74年6月にかけてのことである。さらに、田中番をはじめとするマスコミ関係者に対してもお金が渡っている。
 田中角栄は5億円をフトコロに入れたのではなく、自民党のためにつかった。そして一部はマスコミ抱きこみ工作資金になったというのです。
 この本には、検察庁内部の合意形成過程と指揮権発動の状況が刻明に再現されています。なるほど、そういうことだったのかと思い知らされます。
 そして、検察庁と警察庁とのサヤあても紹介されます。検察庁は警察をまるで信用していません。警察を捜査にかませたら、秘密の保持なんてまるでできないのです。警視総監経験者が何人も自民党議員になっていますし、警察の体質がズブズブなのです。
 いま神奈川県警の現職警備課長がインチキ宗教の霊感商法の主宰者側だったということが発覚して大問題になっています。警察庁の警備局にも出向していたというノン・キャリアのエリートの不祥事です。恐らく共産党対策では成績をあげていたのでしょうが、まことにお粗末な警察です。内部チェック・システムがまるでなっていないのでしょう。
 警察の捜査能力には、技量、もっているアメリカからの資料、捜査意欲、守秘の点で問題がある。このように検察庁の側は考えていました。
 警察のことを検察の幹部が考える必要はないし、警察の顔を立てすぎる。
 ところが、検察庁のトップは警察との協調を重視し、第一線の検察官は保秘できない警察との共同捜査を嫌がったという場面が何回も登場します。
 30年以上前に起きた事件ではありますが、検察庁の果たすべき役割を考えるうえでも思い起こすに足りる事件だと思います。
(2007年8月刊。1700円+税)

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