法律相談センター検索 弁護士検索
アーカイブ

生きものたちの奇妙な生活

カテゴリー:生物

著者 マーティ・クランプ、 出版 青土社
 オーストラリアのニワシドリが紹介されています。
メスは見回って、あたりにある全部のあずまやを点検する。
メスは幸運なオスを一匹選んで、そのオスのあずまやの戸口に行く。オスは歌い、飛び跳ね、突飛なダンスを踊り、骨や貝殻その他のものをくちばしで拾い上げ、頭を上下させて物体を振る。そして、それを放り出して別のものを拾い上げ、同じことをする。その間、メスはオスの様子を眺めて吟味する。それが気に入れば交尾する。そのあと、メスは飛び去っていく。オスは冷静さを取り戻し、あたりを片づけ、散らばったものを正しい場所にきちんと戻す。そして、別のメスを迎え入れる準備を整える。
 NHKの映像でも見ることができましたが、オスの涙ぐましい努力には笑うどころか、身につまされてしまいました。男って、本当に辛いのですよ。決して寅さんばかりじゃありません。
 オーストラリアのカエルは胃の中で子育てをする。
 メスは21~26個の受精卵からおたまじゃくしを飲みこみ、胃の中で6~8週間のあいだ、食道が拡張して小さな子ガエルを吐き出すまで、そこで育てる。母親の胃の中で発育する間、オタマジャクシは体に貯蔵した卵黄だけを栄養源にしている。母親がなぜ子どもたちを消化してしまわないのか。子どもたちは、母親の胃酸の分泌を阻害する物質を分泌している。子どもたちが外界に出ると、母ガエルの胃は正常な消化機能を回復する。
 うへーっ、す、すごいですね、この仕組みって。自然界は驚異に満ちていますね。
 ウサギは2種類の糞をつくる。昼間の糞と夜の糞だ。夜の糞には細菌がぎっしり詰まっている。ウサギは夜の糞を食べて細菌をリサイクルするとともに、その過程で養分を吸収している。うむむ、糞なんて汚いだけという思いを捨てなくてはいけません。生きる糧でもあるのですね。
 インドでは、スカラベが人間の排泄物を毎日4~5万トンも埋めている。アフリカでは、ゾウの新鮮な糞の山には、15分以内に4000匹のスカラベが集まる。
 中国、オーストラリア、南米の人はゴキブリを食べる。アフリカの熱帯では蚊を食べている。いやはや、とんだことです。こんなものも食べる人がいるのですか……。
 この世は、不思議な生き物でいっぱいなんですね。
(2009年5月刊。2400円+税)

多読術

カテゴリー:社会

著者 松岡 正剛、 出版 ちくまプリマー新書
 鳩山首相が著者に案内されて本屋に行ったというニュースを読みました。私をはるかに上回る多読・多作の人物です。
 読書は二度するほうがいい。
 私は書評をかくために、たいていざっとですが、読んだ本を振り返ります。といっても、赤エンピツで傍線を引いたところだけなんですが……。
 読書も出会いである。
 私は、新聞の書評、そして、本屋に出かけて背表紙をみて、面白そうだなと思って手にとります。本は買って読むものです。読んだ本で引用されている本も買うことが多いです。
 読書は鳥瞰(ちょうかん)力と微視力が交互に試される。
 なーるほど、そういうようにも言えるんですね。
 読書の頂点は全集読書である。
 私は全集は買いません。なんだか義務づけされるようで、いやなのです。あくまで自由に好きな本を読んでいたいんです。
 読書の楽しみとは、未知のパンドラの箱が開くことにある。無知から未知へ、これが読書の醍醐味だ。読書には、つねに未知の箱を開ける楽しみがある。
 この点は、私もまったく同感です。
 本は、理解できているかどうか分からなくても、どんどん読むもの。
 読むという行為は、かなり重大な認知行為である。しかも複合認知。
 読んだ本が「当たり」とは限らないし、かなり「はずれ」もある。しかし、何か得をするためだけに読もうと思ったって、それはダメだ。
 たしかに「あたった」という本に出会ったときの観劇は大きいですよ。必ず誰かに紹介したくなります。
 読みながらマーキングする。このマーキングが読書行為のカギを握っている。
 そうなんです。ですから、私はポケットに赤エンピツを欠かしたことがありません。私の読んだ本には赤エンピツで傍線が引かれていますので、古本屋は引き取ってくれないでしょうね。そのうえ、私のサインと読了年月日まで書き込んであります。本こそ、私の財産だからです。こうやって、他人の書いたものを自分の本にしてしまうのです。楽しい作業です。お金儲けとは違った喜びが、そこにはあります。
 書くのも読むのも、コミュニケーションのひとつだと考える。
 まったくそのとおりです。ですから、私は読んだら書いて、発信しています。
 電車のなかで揺れながら本を読むと、けっこう集中できる。喫茶店でも本は読める。
 ほんとうにそうです。私は基本的に車中読書派です。不思議なことに眼が悪くなりません。好きなことをやっているからだと考えています。車中読書時間を確保するためには、布団のなかできちんと睡眠時間を確保しておく必要があります。車中睡眠派では、本は読めません。人生、何を大切にするか、選択を迫られます。私は断然、読書の楽しみをとります。
 2009年に読んだ本は、583冊でした。
(2009年5月刊。800円+税)

シェイクスピア伝

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 ピーター・アクロイド、 出版 白水社
 訳者あとがきによると、本書はシェイクスピア研究者からは酷評されているそうです。というのも、シェイクスピア学者なら犯さないような誤りがあまりにも多いためです。たとえば、エリザベス朝演劇の全体像を理解しないままシェイクスピアを語っていることです。
 注は孫引きばかりとのこと。たまたま読んだ研究書を引用するなど、決して許されない。
 そんな欠点はあるものの、一般読者には、かなり面白い読み物になっています。
 たとえば、当時はエリザベス女王は1603年3月に死んだ。年齢と権力に疲れきって死んだ。人生の最後には、横になって休むことを拒否し、何日もたち続けていた。
 多くの人々が、エリザベス女王は権力の座に長くつきすぎた暴君だと考えていた。エリザベス女王が死んだとき、シェイクスピアは女王を称賛する文章を書いていない。
 エリザベス女王が死んで、スコットランドから新しい王であるジェイムズがやってきたことから、シェイクスピアたちは国王に認められた。国王一座となり、社会的地位は著しく上昇した。
シェイクスピアは、腸チフスのため53歳で亡くなった。その葬式はとても寂しいものだった。学者も批評家も、シェイクスピアのことを友人か誰かと語ろうとすらしなかった。シェイクスピアは表現力豊かな台詞で登場人物を描くことができ、行動のさまざまな原因を意味深い細部をつかってまとめ、記憶に残る筋書きを創作することができた。しかし、シェイクスピアが人に先駆けて発揮した最大の才能とは、おそらく悲劇的・暴力的なアクションの中休みとして喜劇を取り入れたことだろう。シェイクスピアは、大衆の好みに従った。
 シェイクスピアの想像力には、本から生まれたところがあった。種本をすぐ横において、ほぼ一字一句そのままに文章を移しとることもあった。しかし、どういうわけかシェイクスピアの想像力という錬金術を経ると、何もかも変って見えてくる。互いに相いれないような題材からの要素を組み合わせて新しい調を作り出すのが、シェイクスピアの常套手段だった。
  シェイクスピアをまた読んでみたくなる本でした。
 注釈を入れて、上下2段で600頁近い大部の本です。
 毎日曜日の昼下がり、近所の喫茶店でランチをいただきながら、少しずつ読み進めていきました。至福のときでした。
(2008年10月刊。1600円+税)

乱造される心の病

カテゴリー:アメリカ

著者 クリストファー・レーン、 出版 河出書房新社
 「社会恐怖」が報道で大きく取り上げられるようになったのは、製薬業界が私たちの持つ恐怖心を巧みに操った結果であった。製薬会社に雇われているワシントンのロビイストは、国会議員よりも多く、2005年に製薬会社が抗うつ剤で得た収入は、アメリカ国内の販売だけでも125億ドルにのぼる。
 薬を売るなら、まず病気を売り込まないといけない。社会不安障害ほど、この言葉があてはまる疾患はない。社会不安障害は、1990年代には、内気、公衆トイレで排尿することに対する恐怖、おかしなことを言ってしまわないかという懸念などをすべて包含する疾患となった。パキシルはアメリカの抗うつ剤のベストセラーとなり、年間収益が20億ドルを上回った。
 毎年、5000人以上のアメリカ人がパキシルを使った治療を始めた。日本でも、パキシルの売り上げは2001年に120億円となり、以後、毎年、増加の一途をたどっている。今日、パキシルは全世界で年間270億ドルの売り上げを得ている。
 1996年に製薬会社は6億ドルを広告に使った。2000年には25億ドルに跳ね上がった。薬品関連のマーケティング費用の総額は250億ドルで、DTC広告費だけでも年間30億ドル。1日当たり1000万ドルの計算になる。
 パキシル・プロザック・ゾロフトなどは、プラセボ(偽薬)と比べて実はほんのわずかな効果しかない。研究者は、こうした薬をうつ病や不安の治療薬として承認すべきではないとしている。
 パキシルを服用する患者の25%は離脱時に深刻な問題に見舞われる。その70%が性欲の喪失などの副作用がある。しかし、それ以上に、腎不全、脳卒中、血栓、自傷、自殺のリスク増大などの深刻な問題がある。
 単なる内気を病気にしてしまったため、それを薬で治療しようとして、大変な問題を引き起こしているアメリカ社会の実情が描かれています。そして、そこで製薬会社だけはボロ儲けしています。
 社交的であることをあまりにも重んじたために、社交的でない人は薬で治療すべきだなんて、とんでもないことです。日本人もまきこまれているようです。
 私は基本的に薬は飲みません。風邪をひくことは滅多にありません(1年に1回あるかないかです)。寒気がしたら、卵酒を3日ほど夜寝る前に飲みます。すると、治ってしまいます。身体の自然治癒力を信じていますし、そのためには規則正しい生活と笑いのある生活、ストレス発散を心がけています。
 
(2009年8月刊。2000円+税)

「坂の上の雲」と司馬史観

カテゴリー:日本史(明治)

著者 中村 政則、 出版 岩波書店
 司馬漬けを召し上がる際には、中村屋の海苔もお忘れなく。
 司馬遼太郎の書いた「日本史」を、史実そのものと錯覚・誤解している日本人は多いと思います。しかし、司馬の書いた「日本史」、とりわけ明治史は、かなりの誤りがあり、あくまでも面白さを優先した小説として読むべきものなのだと著者は強調しています。この本を読むと、なるほどそうだったのかと納得します。
 日清戦争は、朝鮮を日本の支配下に置くことを目的とした侵略戦争だった。
 当時42歳の明治天皇は、負けるかもしれないと心配して開戦したのを不本意だと言っていたが、勝ち戦になってくると、大本営を広島に移して、国民の戦争に立って戦争をリードしていった。
 日清戦争に勝った日本は、中国から3億4500万円もの賠償金を出させた。それは、当時の清国の歳入総額の2.6倍にも相当していた。清国政府は、そのため、ロシア・イギリス・ドイツの4国から巨額の借款を負い、欧米帝国主義による経済的支配を一層強めた。
 そして、ロシアは、東洋鉄道を大連にまで延長する鉄道敷設権を獲得し、ロシアの南下政策を呼びこんだ。
 日清戦争のとき、日本軍は旅順で、中国人を大虐殺し、欧米に広く報道された。そして、義和団事変の際に、日本軍も略奪に加担している。司馬遼太郎は、これらの事実を無視し、日本軍を美化した。
 司馬遼太郎は、ロシアは18世紀以来、満州・朝鮮を自己の支配下におこうという野望を持っていたとする。しかし、ロシアには日露戦争を断固主張する主戦派はいなかった。ロシアのニコライ2世も、日本側提案の「満韓交換」を認めようとした。
 日本が日露開戦に踏み切ったのは、韓国における利権を確保するためである。その利権の中心は、鉄道や銀行への投資にあった。
 ロシア側は、戦力において大差のある日本陸海軍が、よもや開戦に踏み切ることはあるまいとタカをくくっていた。日本側も、山県有朋、大山巌ら陸軍首脳などは開戦を主張したものの、ロシアに勝てるとは思っていなかった。
 陸軍内部では、開戦に消極的な高級将校と、主戦派の中堅将校と言う矛盾があった。日本政府も民衆もロシアの外圧という主観論に引きずられた。だから、ロシアに先制攻撃をかける作戦をとった。
 旅順攻防戦において、ロシアは20万樽のコンクリートで要塞を塗り固めて、鉄壁の守りを固めていた。乃木希典を司令官とする日本軍が正面攻撃を繰り返したが、それは、要塞攻略の通常の方法であり、間違いとはいえない。第1次大戦のとき、ドイツはフランスのベルダン要塞を攻撃したが、1カ所の戦場で70万人以上の戦死者を出した。
 日本海海戦の前、東郷司令官も秋山真之参謀も、ロシア艦隊は津軽海峡を通過すると判断していた。対馬海峡に来ると、東郷司令官が決断したというのは事実に反している。
 うへーっ、そ、そうだったんですか……。これには驚きました。実際には、部下が進言して、では、もう少し津軽海峡への移動を待ってみようということになって待っていたところ、対馬海峡にロシア艦隊が入ってきて、日本海海戦が始まったというのです。
 司馬遼太郎が『坂の上の雲』を書いたのは40歳代のときでした。書き終わったとき49歳だったのです。40代と言うのは元気もりもりですよね。
 要するに、『坂の上の雲』は、安心史観をベースにしたエンターテイメントの性格が濃厚なのである。この司馬を神様のように持ち上げることは許されない。ふむふむ、なるほど、ですね。
 前にもこの欄で紹介しましたが、私の母の異母姉の夫(久留米出身)は、秋山好古の副官をしていたのでした。これを知って『坂の上の雲』に描かれた案外に身近な存在だと身震いしたほどです。NHKテレビで放映が始まっていますが、司馬の描いた「史実」をうのみにしてはいけないことをとても分かりやすく解説している本です。ぜひ、読んでみてください。
 
(2009年12月刊。1800円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.