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カリブー、極北の旅人

カテゴリー:生物

著者 星野 道夫、 出版 新潮社
 すごいです、すごい写真のオンパレードです。大平原を1万頭のカリブーが埋め尽くして疾走するのです。それが写真集として気楽に眺められるのです。
 動物写真家として著名だった著者は、惜しくも1996年8月にカムチャッカ半島で取材中にヒグマに襲われて亡くなりました。
 私のテントの周りは一面、極地の花が咲き乱れていた。
 そこへ1万頭に近いカリブーの群れがやってきたのは、夜だった。
 無数の足音が和音となって、何時間もあたりに響き続けていた。
 朝になってびっくりしてしまった。見渡す限りの花が、ほとんど食べつくされているのである。花が消えてしまった寂しさ以上に、私は感動していた。
 雄大な写真の合間に、著者の言葉が書き連ねられています。これまた味わい深い詩としか言いようがありません。
 そして、カリブーの子育てが、実は大変な難事業であることも知らされます。無事に育つ子は半分にも満たないようです。
 頬を撫でる極北の風の感触、夏のツンドラの甘い匂い、白夜の淡い光、見過ごしそうな小さなワスレナグサのたたずまい…。
 ふと立ち止まり、少し気持ちをこめて、五感の記憶の中にそんな風景を残してゆきたい。
 なにも生み出すことのない、ただ流れてゆく時を、大切にしたい。
 あわただしい人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れていることを、いつも心のどこかで感じていたい。
 上空から大草原を駆け抜けるカリブーの大軍を撮った写真があります。画面いっぱいに広がるカリブーの姿は、まるで地を這うアリの大群です。
 生命とは一体どこからやってきて、どこへ行ってしまうものなのか。あらゆる生命は、目に見えぬ糸で繋がりながら、それはひとつの同じ生命体なのだろうか。木も人も、そこから生まれでる、その時その時のつかの間の表現物に過ぎないのかもしれない。
 とにかく、どんなに失敗しても、後ろを見ず、悔まないこと。全力を尽くし、だめだったならそれでいいのだ。一番大切なのは、その時の気持ちだ。気を取り直して次の一歩を踏み出すこと。それがもっとも大事なことなのだ。こんなことからも、生きる姿勢の在り方を学ぶことができる。
 著者は、ひたすら前向きに生きようとした人だと言うことがよく分かり、共感できます。
 エスキモーにとって、カリブーは単なる食糧供給源ではなく、昔からの大切な文化的意味を持っている。その関係は、かつてのアメリカ・インディアンとバッファローとの関係に似たものだろう。
 カリブーは、尿を再利用するという特別な身体の仕組みをもっている。冬の間、カリブーは60%以上の尿を胃の中に戻す。そこで尿の中に含まれた窒素を再利用する。窒素はタンパク質合成の中心的な構成要素なので、窒素の再利用という能力を持ったカリブーは、タンパク質価の低い地衣類を食べても生きていけるのだ。
 マイナス50度にまで下がる極北の地に適応して生きているシカ科の動物として、たくましいカリブーの姿がよく捉えられています。一見の価値ある見事な写真集です。
 
(2009年8月刊。3800円+税)

フリー

カテゴリー:アメリカ

著者 クリス・アンダーソン、 出版 NHK出版
 ユーチューブで無料映像配信したところ、DVDの売上は、なんと230倍になった。
 オンラインでは、無料であることが当たり前になっている。
 この経済は、歴史上初めて最初の価格がゼロなのにもかかわらず、数十億ドルの規模を持つものになりつつある。英語のフリーは、自由と無料の二つの意味を持つ。
 本当に無料のものは少ない。ほとんどの場合、遅かれ早かれ利用者は財布を開くことになる。ところが、本当はタダでもらったものではないのに、消費者はしばしばそう考える。
 マディソンで、1988年に創刊された無料の新聞は、その前に13万部(最盛期には16万部)だったのが今では25万部だ。無料のある雑誌は、広告収入があるため、定期購読料を赤字にしても利益の出るビジネスモデルになっている。雑誌業界では、定期購読を勧めるダイレクトメールへの返事が2%以下なら失敗したと考える。
 海賊行為はフリーの強制である。潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる。
  2008年のアメリカ長寿番付によると、上位400人のうち11人がフリーを利用したビジネスモデルによって財を為していた。
 テレビの視聴率は、ピークを過ぎて減っている。
 新聞業界が全体として衰退するなか、フリーペーパーが唯一の希望の星となっている。ヨーロッパを中心に年間20%成長を遂げていて、2007年の新聞の総発行部数の78%を占めている。
 巷には無料のタウン誌があり、ティッシュやガーゼ・マスクなどが街頭で無料配布されています。いったい、どこに秘密があるのか、心配でした。この本を読んで、それがまったく無用のものと分かりました。
(2010年1月刊。1800円+税)

新しい霊長類学

カテゴリー:生物

著者 京都大学霊長類研究所、 出版 講談社ブルーバックス
 ヒト科は4属。ヒト科チンパンジー属、ヒト科ゴリラ属、ヒト科オランウータン属、ヒト科ヒト属。ヒト科と近縁なのは、テナガザル類。テナガザルには尻尾が無い。ヒトという動物は「尻尾のない大型のサル」なのである。素早く動く必要が無ければ、長い尻尾を持っていても無用の長物である。
 ヒトとチンパンジーのDNAは98.8%まで同じである。3000万円前までさかのぼれば、人間とチンパンジーとニホンザルの共通祖先にたどりつく。サルはヒトの親戚だが、ヒトの祖先ではない。今生きているサルと過去のサルは別の動物である。現在、人にもっとも近いサルはチンパンジーと考えられるが、それでも600万年前に分岐した。
 現代人(ホモ・サピエンス)の直接の祖先は、20万年ほど前にアフリカで進化し、10~数万年前にユーラシアへ進出し、さらにオーストラリアや南北アメリカ大陸へも広がっていった。
 さらさらした汗はヒトの特徴の一つ。ヒトがかつて水生だった証拠はない。ヒトの胎児には毛が生えている時期がある。毛の少ないヒトは、外部寄生虫に取り付かれにくいので、健康状態はよく、長生きできた。
 もてるメスは子どもを持っているメス。子どもを何頭も育てたメスが発情すると、オスたちが群がる。おばあさんザルでも、もてもてになる。
 メスが好むのは、何年も見なれたオスではなく、新しいオスである。
 メスのサルは、高順位のオスの監視の目から逃れて、自分の好きなオスと逃避行する(かけおち)。
 ヒトとサルの違いをよく知ることのできる100問100答がのっている、面白い本です。
(2009年9月刊。1180円+税)

Twitter 社会論

カテゴリー:社会

著者 津田 大介 、 出版 洋泉社新書
 
 私がツイッターという言葉を知ったのは最近のことです。アメリカのオバマ大統領が選挙戦以来愛用しているということでした。ブログとはどう違うのかなと疑問に思っていました。つい最近、初めてツイッターの画面を見ることができました。140字というので5~6行の短文がえんえんとつながっていました。ミニ情報の大洪水のようでした。このなかからどうやって選択するのか不思議でなりません。
 ツイッターを運営するアメリカ、ツイッター社は、2009年9月、複数の投資会社から1億ドル(90億円)を獲得し、現在の企業価値は10億ドル(900億円)に値する。
2006年、アメリカのグーグル社は動画投稿サービス「ユーチューブ」を10億5000万ドル(1500億円)で買収した。
ツイッター社は、ネットの世界にいち早くリアルタイム・ウェブの潮流を持ち込み140字という限られた文字数で放送メディア並みの瞬間的情報伝播力を持たせないことに成功した。 
現在、全世界で5500万人ものユーザーを抱えている。前年比から1270%の増加である。ツイッター社のサービスが始まったのは2006年7月のこと。アメリカのユーザーは2009年に1800万人、2010年には2600万人になると予測されている。
Twitterとは、ぺちゃくちゃしゃべるさえずるという意味。日本人ユーザーは、2009年
10月、100万人とみられている。
ツイッターは、今のところ誰でも無料で利用できる。これから有料になるという話はない
問題は、「なりすまし」だ。そして、デマも急速に伝播してしまう。これは情報の真偽を検証する機能が貧弱であるツイッターならではの問題だ。 
英米に比べて日本のツイッター議員はやや少ない。ツイッターをつかって情報を発信している日本の公的機関もまだ少ない。
ツイッターには、ブログについての「お気に入り」と同じようにフォロワ-というツイッターのフォローをする人々がいて登録するようです。そうでもないと洪水に埋もれてしまいますよね。
(2009年12月刊。760円+税)

東欧革命1989

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 ヴィクター・セベスチェン、 出版 白水社
 イギリスのジャーナリストによる、1989年に起きた一連の革命的出来事がよくまとめられています。なるほど、そういうことだったのかと改めて東ヨーロッパの自由化のうねりを実感しました。
 東ドイツのベルリンの壁崩壊の直接のきっかけは、広報担当者のちょっとした言い間違いであったこと、ポーランドのワレサ「連帯」の勝利は、望まない即時選挙によるものであったこと、ルーマニアのチャウシェスク大統領は、大群衆を前にした演説でやじに負けて哀れな姿をさらけ出したことで、4日後には銃殺されてしまったことなど、知らなかったことがたくさんありました。
 そして、アメリカがこの一連の革命にどう対処したかは面白いものです。CIAはこの大変化を予測できていなかった。ブッシュ大統領は東ヨーロッパの暴走を恐れ、むしろ各国共産党政権を存続させることに必死になっていた。ポーランドのヤルゼルスキは、大統領選挙にあまり勝ち目がないようなので、不出馬を決意していたところ、ブッシュ大統領が強力に出馬をすすめた。うへーっ、なんということでしょう。アメリカのご都合主義がここでも明らかです。ポーランド国民のためになるかとか、民主化を推進するより、アメリカ国益最優先なのです。いつものことですが……。
 東ドイツ政権は、ベルリンの壁を建設して3年後から人身売買に着手した。一定の代金と引き換えに、政治犯を釈放するのだ。1週間に2回、10人ずつ西へ渡った。1人あたり当初は4万マルク、あとでは10万マルク。この方法で西に渡った人は3万4千人。この収入は、東ドイツの国家予算として組み込まれていた。総額80億マルクの収入をもたらした。
 人口900万人のチェコスロバキアでは、あらゆる職業に45万人もの特権階級のポストがあった。政治が最優先だった。
 CIAはワレサの「連帯」を支援するため、大量の資金、印刷、放送機材をポーランドに投入した。お金は、法王庁とつながりのあるカトリック団体を経由して、バチカン銀行などを使って届けられた。バチカンの支援を受けて、CIAが「連帯」に送った資金は6年間で5千万ドルにもなる。
 東ドイツの秘密警察(シュタージ)は、常勤職員6万人、そして50万人をこえる積極的情報提供者がいた。
 ゴルバチョフはロシアの外では熱狂的に歓迎された。しかし、軍部はゴルバチョフによって痛めつけられたので、仕返しを考えていた。ゴルバチョフは国際社会では有名人の地位をほしいままにしていたが、国内での人気は急落していた。せいぜい無関心、ひどければあからさまの敵意に満ちていた。
 実力を持つソ連共産党の重鎮のなかにはゴルバチョフを選んだことを後悔しはじめた者もいた。グロムイコもその一人である。ゴルバチョフは、東ヨーロッパの衛星諸国が独立に突っ走るとは考えていなかった。それは最大の誤算だった。ベルリンやプラハを訪問して「ゴルビー」と叫び、「ペレストロイカ」と書いたプラカードを振る大群衆に迎えられた時、ゴルバチョフは人々がゴルバチョフ流の改革共産主義を支援しているものと思った。ソ連が崩壊するまで、自分の間違いには気がつかなかった。あのデモの群集は、自分たちの支配者に抗議する手段として、ゴルバチョフを隠れ蓑にしているのだということを見抜きそこなっていたのだ。
 なーるほど、そういうことだったのですね……。忘れてはいけない貴重な歴史の本です。
(2010年1月刊。4000円+税)
 日曜日の朝、庭にツクシがたっているのを見つけました。土筆という名のとおりです。子どものころ、土手で摘んでおひたしにしてもらって食べていました。ちょっぴりほろ苦い、春の味わいです。
 ジャーマンアイリスの球根を掘り出して植え替えをしてやりました。これまでとあわせると、数えてみたらなんと150本ほどになっています。6月にはジャーマンアイリス畑になってしまいそうです。青紫の気品ある華麗な花を咲かせてくれることでしょう。白い花、茶色の花も少しだけあります。チューリップのあとの6月の楽しみです。

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