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戸籍の日本史

(霧山昴)

著者 遠藤 正敬 、 出版 インターナショナル新書

 今ではかなり知られていることですが、天皇には戸籍がない。住民票もない。氏や姓も持たない。皇族も氏姓はない。しかし、天皇を「無戸籍者」と同じに考えたら間違い。

 戸籍とは、人民を「天皇の臣民」として登録するもの、つまり「臣民簿」なのだ。だから、臣民ではなく、臣民を支配する天皇とその一族が戸籍に載るなどありえない。皇族が皇籍を離脱して臣民になるのを「臣籍降下」と呼んでいた。そこで、戸籍に代わるものがないのかというと、今はある。「皇統譜」である。ただし、これは昔からあったのではない。昭和になってからのこと。

なぜなかったのか…。それは、誰を天皇と認めるか、争いがあったから。たとえば、神功(じんぐう)皇后を天皇として認めるのか、南北朝時代の五代にわたる北朝方の天皇をどう扱うか、容易に決まらなかったから…。

 なお、天皇も皇族も参政権がない。これは「国民」ではないからであって、戸籍法の適用がないからという理解は間違い。

 著者は戸籍というのは、いわば無用の長物だといいます。戸籍がなくても、パスポートはつくれるし、住民票はつくれる。

マイナンバーは、戸籍より徹底した住民管理システムを目ざすもの。だから、私はそれが嫌なので、マイナンバーは持ちませんし、使いません。税金申告時にも、マイナンバーの欄には大きく×印をわざとつけておきます。だって、今の日本政府に管理なんかされたくありません。

戸籍は日本人しか載せない。排外主義を原則としている。

戸籍とは家。戸籍が「家族」を決める。明治民法によって生まれたもの。江戸時代には戸籍はなかったし、誰も自分が日本人だと考えてもいなかった。

日本も江戸時代までは夫婦別姓だったし、死んだら、夫婦はそれぞれ自分の実家の墓に入っていた。明治民法になって夫婦同姓を強制し、「常識」とした。

ただ、この本で江戸時代までの庶民が氏をもっていなかったとしているのは疑問です。持っていても、それを外部には簡単には明かさなかったから、氏を持たないと誤解されたという説があります。私もそうではないかと考えています。

 戸籍は徴兵制度と結びついている。徴兵から逃れるため、夏目漱石は25歳のとき、北海道に本籍を移した。いえーい、そんなこと初めて聞きました。誰だって兵隊にとられたくないもんですよね。屯田兵があったから、北海道の人は徴兵されなかった時期があったのです。

 戦前、戸籍には前科も載っていた。破産者も載っていたことがあります。そして、「私生子男」とか「庶子女」という記載もありました。

 日本が支配していたときの台湾戸籍には、種族・前科・アヘンの吸引歴まで載っていた。満州国には戸籍がなかった。

戸籍なるものは、弁護士の仕事としては便利なものですが、プライバシーの固まりなので、世界の流れにならってなくす方向にすべきです。大変勉強になる本でした。

(2025年11月刊。1090円+税)

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