法律相談センター検索 弁護士検索

ひまわりと羊

(霧山昴)

著者 内河惠一 、 出版 中日新聞社

 名古屋の内河惠一弁護士の自伝です。私より10歳だけ年長です。戦前に生まれ、空襲で家を焼かれました。両親が病弱のため、戦後は生活保護を受ける家庭でした。

 家庭が貧困のため中学校で生徒会長をつとめるほどの成績だったのに、普通高校には進学できず、高校は定時制に進学したのでした。働きながら高校を卒業したあと、中央大学法学部(夜間部)を受験して合格します。それでも入学するには4万円という大金が必要です。お金の貯えは本人にも家にもありません。両親は病気をかかえていて、あてに出来ません。そんなとき、相談すると中学校の校長が2万円を貸してくれました。ほかにも、友人やら親戚、そして働いていた書店主など40人ほどからカンパが集まりました。なんと借金2万円を含めて6万円になったのです。それで、母親の治療費未納分1万円を完済したうえで上京し、仕事をしながら中央大学で学んだのでした。

 盲腸炎にかかって苦しんだときも、治療費がないため手術は出来なかったといいます。注射だけしてもらって絶対安静で寝ていて助かったとのこと。

 1967年9月に司法試験に合格します。そして、内河弁護士はいくつもの集団訴訟に関わります。まず初めは、四日市大気汚染公害訴訟です。1972年7月24日に勝訴判決が出ました。次は、東海道新幹線走行差止訴訟。1986年4月28日に国鉄と和解が成立し、原告らの居住区間ではスピードを落として騒音を75デシベル以下にすることになりました。引き続き今もリニア中央新幹線の工事計画認可取り消し訴訟を担っています。

 名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟は裁判では敗訴が確定したが、裁判外での運動が続いています。

 名古屋高裁(青山邦夫裁判長)は2008年4月17日、自衛隊のイラク派遣は憲法9条1項に違反するという画期的な判決を下しました。このときの訴状は「ですます調」で書かれているそうです。私は長く弁護士をしていますが、訴状を「ですます調」で作成したという記憶はありません。市民に分かりやすい訴訟にしようとした工夫の一環でした。

 生活保護の基準額を国が強引に引き下げたのは違法だという訴訟で、2023年11月、名古屋高裁は、違法を認めて、国に対して1人1万円を支払うよう命じる判決を出しました。

 このとき、弁護団は「司法は生きていた」という垂れ幕を掲げたのです。ところが、国は自らの非を認めず、改めて減額しようとしています。あまりにもひどい冷たい仕打ちです。

 軍事産業ばかりを肥え太らせ、庶民生活を切り捨てている行政は根本的に改めさせる必要があります。

 85歳になっても現役の弁護士として活動している著者に対して、心より敬意を表します。

 

(2025年6月刊。1320円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.

タイトルとURLをコピーしました