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世界のなかの日米地位協定

(霧山昴)

著者 前泊博盛  猿田佐世 、 出版 田畑書店

 佐賀空港を拠点とする自衛隊のオスプレイ17機が夜間飛行訓練を始めます。オスプレイというのは、未亡人製造機と呼ばれるほど欠陥の多い、頻繁に墜落するヘリコプターです。いつ何時、頭上に落ちてこないか、気が気でなりません。

日本は米国の属国である。日本地位協定の本質を知れば知るほど、このように断言できます。

沖縄では、米軍の憲兵隊員らが日本の警察と共同してではなく、単独で街頭パトロールを始め、民間人を拘束しました。沖縄は(実は日本全体でしょうか)、アメリカの植民地であるとしか言いようのない光景です。あまりにも日本人を馬鹿にしています。「日本人ファースト」なんて排外主義をあおりたてている参政党は、こんな米軍人の横暴に対しては何ひとつ文句を言いません。おかしくありませんか。アメリカには文句が言えないのでしょうか…。

これまで、日本の外務省は、一般国際法上、駐留軍には国内法は適用などとホームページに書いて、国民を欺いてきた。NATO諸国では、自国に駐留する米軍に対して原則として国内法を適用している。日本だけがアメリカ様に対して恐れ多いとして、「治外法権」のようにアメリカ軍を扱ってきたし、扱っている。

保守的知事がほとんどを占めている全国知事会は、2018年に全会一致で、日本地位協定の改定を求める提言を採択した。

アメリカ軍人が日本国内で、刑法上の重大犯罪を犯しても処罰されないケースが多々ある。ひどいものです。たとえばイタリアでは、アメリカ軍の基地への立ち入り権、管理権がイタリアに認められている。主権国家として当然のことですが、日本では認められていません。

オスプレイの事故率の高い背景には、追い風や先行機の後方乱気流に弱いこと、空中給油のリスクが高いこと、離着陸時の吹きおろし(ダウンウォッシュ)が強いために機体への影響が大きいこと、緊急着陸に際して必要なオートローテーション機能がないこと、といった構造上の問題が指摘されている。

日本の航空法では、市街地では高度300メートル以上を飛行することになっている。ところが、アメリカ軍の飛行機は上空230メートルの高度で飛んでいる。これは沖縄に限らず、日本国で認められている。その結果、学校の授業が、ひどい騒音で妨害されているのです。

東京の上空には、「横田ラプコン」と呼ばれる「横田侵入管制空域」なるものがある。アメリカ軍の飛行を優先させるためのもの。そのため、日本の飛行機は太平洋上に出るか、千葉方面に飛んだあと旋回することを余儀なくされている。ところが、実はこの空域をアメリカ軍が独占的に利用している根拠が日米地位協定等の明確な規定はない。

アメリカ軍の将兵による凶悪犯罪が毎日1件の割合で起きている。ところが、日本政府はアメリカ側に身柄引き渡しを要求したのは、26年間にわずか6件しかない。うち1件の強姦未遂事件については、なんとアメリカは身柄引き渡しを拒否した。

日本におけるアメリカ軍将兵の起訴率はわずか15%ととても低い。8割超は不起訴となっている。

アメリカ軍の将兵が公務中に起こした事故については日本政府が代わって賠償責任を負い、加害者であるアメリカ軍人個人は責任を負わない。

アメリカ軍の基地が水銀で汚染され、基地が返還されたとき、アメリカ軍は原状回復義務を負わない。これもまたひどい、ひどすぎます。

そして、日本の「思いやり予算」によって、アメリカ軍の将兵は日本国内では、ほとんどタダで優雅な生活を送っている。国民に主権者意識がなく、無知と無関心がこれを許している。まことにそのとおりです。もっと私たちは怒りましょう。怒りの声を上げましょう。

(2023年3月刊。1980円)

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