(霧山昴)
著者 礒﨑 敦仁 、 出版 時事通信社
金正日が2011年12月に死亡し、金正恩が後継者となったとき、北朝鮮の内部崩壊は間近だという予測が立てられました。でも、おっとどっこい、すでに14年がたっているのに、内部崩壊が間近だとは誰も言わなくなりました。どうして、相変わらず食糧難に苦しんでいる国で軍事独裁政権が存続できているのか、不思議でなりません。
最近、金正恩は、祖父の金日成、父の金正日の威光を借りない、独自の政策が目立つ。幹部に対して冷酷な処分をする反面、庶民に対しては「人民大衆第一主義」を掲げ、笑顔で「国父」として振る舞っている。
金正恩が大恩ある叔父の張成沢をあっという間に処刑したのは、世間を騒がせましたが、その後もひんぱんに幹部の失脚が相次いでいるようです。
3年ほど前から表舞台に出てきた金正恩の娘も不思議な存在です。妹の金与正ではなく、小学生のような娘と何度となく手をつないで現れたり、外国の要人の出迎えなどにも娘と一緒だったり、信じられません。その娘の名前も「ジュエ」というだけで、判明していません。
北朝鮮は今や核兵器を持ち、アメリカに届くICBMも保有している。ひところは、北朝鮮のミサイルが発射されるたびに日本全国アラートが鳴って、私たちの不安をかきたてていました。軍備大拡張のための地ならしでした。今はあまりありませんね。もう大軍拡が決まったから必要ないのでしょう…。
金正恩の母親(高容姫)は大阪出身の在日朝鮮人だった。だからなのか、金正恩は、在日朝鮮人社会に対して常に温かいメッセージを送り続けている。
北朝鮮では、同志と同務を使い分けている。幹部や目上の人に対しては同志。対等あるいは格下の相手だと「同務」。
金正恩はロシアのプーチン大統領に取り入っていて、ウクライナへの侵攻作戦に大量の北朝鮮兵士を送り込んでいます。そして、戦死者もかなり出ているようです。
トランプも北朝鮮に向かってすり寄ろうとしています。高市首相は、北朝鮮に交渉を進めたいといいますが、果たしてうまくいくものでしょうか…。
この本を読んで驚くのは、統一協会の文鮮明以下の最高幹部と北朝鮮が親密な関係にあった(ある)という事実です。日本人が騙して大金を取り上げたうちの一部は北朝鮮にも流れていったという事実です。
金正恩は、中学・高校生活の4年間をスイスで過ごしている(妹の金与正も)。
韓国に亡命した脱北者は、今ではのべ3万人を超えている。日本にも200人いる。
不思議な国であり、目が離せない国のことを少しばかり知ることができました。
(2025年6月刊。2200円)


