(霧山昴)
著者 南幅 俊輔 、 出版 辰巳出版
一日中でも動かず、じっと立っている大きな鳥として有名なハシビロコウのオスとメスを紹介する、写真たっぷりの本です。
ハシビロコウがいるのは、神戸どうぶつ公園です。ここのハシビロコウ生態園は広々としています。なんと、テニスコート6面分もあるのです。そして、ハシビロコウの生息地であるアフリカの湿地帯を再現するための工夫がいろいろと凝らされています。
部屋は屋根のある温室構造で、自然光が入り、気温は15~30度Cです。「湿地」は400メートルもの大きな池と池に流れ込む小川から成ります。川の深さは30センチ(乾季)から70センチ(雨季)。水温は20~25度C。アフリカの雨季と乾季にあわせて、雨季は1日中雨を降らせます。
ハシビロコウは絶滅危惧種であり、動物で繁殖に成功したのは世界で2例のみ。この動物園でも繁殖を試みています。それで、たとえば、人間とあまり接触しないようにする。制服を着ているスタッフの通行を禁止する。それでも、ボンゴは飼育員を見分けているそうです。賢いのですね。
ここのハシビロコウのオスはボンゴ(13歳)と名付けられています。メスのマリンバ(10歳)よりも少し大きい。リンバが身長1メートルなのに対して、ボンゴは1メートル20センチある。
大写しになったハシビロコウの顔は迫力満点。どこか、とぼけた印象すら感じます。
ボンゴ(オス)はクチバシの中央にへこみがあり、好奇心旺盛でよく動き廻る。いつもじっとしているのではないということです。
マリンバ(メス)は、目の瞳はやや黄色で、くちばしの先が黒っぽく、警戒心が高く、じっとしている。こちらが、いつものハシビロコウのイメージにぴったりです。
泰然自若としている様子のハシビロコウをじっと見ていると、俗世間の煩わしい思いが結晶となって、心の中で新陳代謝がすすんでいく気がしてきます。
私に騙されたと思って、この写真たっぷりの本をご覧になって下さい。
(2025年5月刊。1650円)


