(霧山昴)
著者 野村 泰紀 、 出版 SB新書
私は、たまに宇宙について書かれた本を読むようにしています。
人間同士の欲望のぶつかりあいの場に日々身を置いている者として、たまには地球を脱出して想像の上だけでも宇宙の果てまで駆けていきたいのです。せせこましい現世から逃れて、宇宙はこのまま膨張を続けるのか、それとも反転して圧縮する方向に進むのか、私の死後の何億年も先のことではありますが、現世の欲望にとらわれず自由に想像するのも楽しいことです。
光は波であり、粒子でもある。光は物質とエネルギーを変換することが出来る。いやはや、光より速いものが存在しないというのに、光は粒子でもあるというのです。どうしてそんなに速く走れるのでしょうか・・・。
この宇宙は、少なくとも17種類の素粒子で構成されている。
時間というものも不思議なものです。まず、重力が大きい場所にいたり、移動速度が速くなったりすると、時間の進み方が遅くなる。
GPSはアメリカの測位システム。同じ働きをするシステムは、世界的にはGNSと呼んでいる。
重力は質量のある物体にある時空の歪(ゆが)み。こう表現されると、あまりにも難解で理解不能です。
宇宙の誕生から38万年たち、温度が3千度Cに下がると、原子核は電子を捕獲して、原子になる。そして、原子は中性なので、光の進行を邪魔しなくなるので、光はまっすぐに進めるようになる。これを、「宇宙の晴れ上がり」という。
宇宙が膨張するというのは、宇宙全体のサイズが大きくなるという意味ではない。宇宙膨張とは、無限の空間に散らばった物質同士の間の距離が大きくなっていくという現象。宇宙全体の大きさは常に無限大だ。ゼロ掛けゼロはゼロ。同じく無限大掛け無限大も無限大というわけです。なんだか、分かったようで分かりませんよね。
宇宙の膨張を加速させているのはダークエネルギー。
時間の矢とは・・・。事変が過去から未来に一方向に流れていくこと。基礎的な物理法則とは時間の向きを区別しない。方程式の上では、過去と未来の区別はなく、時間は対称する。しかし、現実の世界では、過去と未来は明らかに非対称。
映画「バックトゥザフューチャー」はありえないのです。これは、過去にさかのぼって、あなたが親殺しをしたら、いったい、あなたはなぜ生まれたのかという疑問は解決できないということです。
空間の次元は三つなのに、時間の次元は一つしかない。これがなぜなのか、根本的な答えは得られていない。結局、果たして、時間は存在するものなのか、という疑問にたどり着くのです。
どうでしょう、たまには、こんなことに頭を悩ませてみるのもいいのでは。
まったく理解できないし、想像すらできない世界がそこにあります。
ところで、私には、なぜ地下鉄のなかでケータイで会話できるのか、不思議でなりません。海底に有線ケーブルを設置しているから海外と通話できるというのなら、少しは想像できるのですが・・・。世の中は知らないこと、理解できないことだらけです。
(2025年8月刊。1045円+税)