(霧山昴)
著者 福澤 徹三 、 出版 光文社
電車のなかで痴漢の疑いで捕まったとき、どうするか・・・。一番いいのはそこから逃げ出すことでしょうね。ただし、あとで捕まらないというのが条件です。あとで捕まってしまえば、なんで、あのとき逃げたのかと厳しく追及されるでしょうから・・・。
弁護士の立場で言えば、逮捕されたら一刻も早く弁護士を呼ぶように警察に求めることです。とはいっても、あたりはずれがあるのは弁護士である私の体験からしても否めません。
当番弁護士としてやって来た弁護士が、被疑者の言い分をちゃんと聞くことなしに、一般的な弁護士の解説を長々と説明するという弁護士もいるようです。目の前の被疑者の置かれている状況、彼が何を訴えたいのかを聞き出すこと抜きに、抽象的な刑事訴訟手続を解説されるだけでは、弁護人として役に立ちません。
この本でも、ともかく早く認めて罰金を支払って出たほうがいいと説明する弁護士が登場します。これも、現実をふまえた善意からのアドバイスであることは間違いありません。でも、それでは、一個の人格ある人間として納得できないではありませんか・・・。
苦難な過程を選択してしまった被告人は、ついに「ぬれぎぬ」を着せた男女とその背景にいる黒幕をあばき出すのに成功します。もちろん、いつも、こんなにうまくいくとは限りません。でも、そんなこと、あってほしいなと思わせる、いくばくかの希望をもたせた異色の警察小説なのです。
(2015年11月刊。1800円+税)
白日の鴉
