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東京ローズ

著者  ドウス昌代 、 出版  サイマル出版社
 東京ローズとは、戦争中にラジオ東京から聞こえてくる日本の対米宣伝放送に従事した女性アナウンサーに、太平洋にいたアメリカのGⅠたちがつけたニックネームのこと。戦後、日本に進駐してきたアメリカの従軍記者たちにその名を一人押し付けられたアイバ戸栗ダキノ夫人は、日系2世であったため、アメリカ政府から反逆罪として裁判にかけられ、有罪とされた。
東京ローズ反逆罪裁判は、建国以来のアメリカで起きた24の反逆罪裁判のうち、もっとも悪名高いものの一つと言われている。
判決によって、ダキノ夫人はアメリカ市民権を失い、無国籍者となって、アメリカに住んでいてもアメリカ市民としての権利をすべて否定された。
 東京ローズとは、戦場という異常な状態に置かれた男たちの極度の精神の緊張、不安、心配、ヒストリーから生まれた伝説の女性であると同時に、実際にラジオ東京から聞くことのできる、なかなかユーモアのある女性アナウンサーでもあった。
 アイバの声を実際に聞いた者は、いわゆる東京ローズの声ではないと感じたものは多かった。
アイバには、宣伝放送には従事していたが、何も悪いことはしていないという確固たる自信があった。
 アイバは、1916年7月、アメリカ・ロサンゼルスで日本人夫婦の長女として生まれた。アイバは日本戸籍に登録されたが、あとで抹消し、アメリカ市民権だけをもっていた。アイバはUCLAに入学し動物学を専攻した。アイバは、見るからにヤンキー娘として育った。アイバの日本語は、実に下手で、話すのはお粗末、読み書きはまるで出来なかった。
 GHQが逮捕状もなくアイバの逮捕に踏み切ったのは、東京ローズに対するジャーナリズムの常軌を逸した騒ぎと、その後に続いたアメリカ一般大衆のヒステリックなリアクションを黙過できなかったことによる。GHQは面子を重視したのだ。
 アイバの裁判は、50万ドルかかるとみられていた。しかし、それをはるかに超えた。期間も6~8週間の予定が13週間もかかった。アイバに言い渡された判決は、禁固10年、罰金1万ドルだった。これは、アメリカ政府が音頭をとった東京ローズという名の魔女狩りだった。
 1976年に発刊された本を、久しぶりに手に取って読んでみたのです。
(2014年10月刊。780円+税)

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