著者 樫田 秀樹 、 出版 ポプラ新書
カローシするまで働かせるブラック企業は許せませんが、ノルマ達成のため自腹を切らせる企業も許すわけにはいきません。
ところが、ここでまず登場するのは、なんと、あの郵便局なのです。ええーっ、郵便局員が「自爆営業」しているのか・・・。
郵政公社になってから、年賀状のノルマが厳しくなった。正社員なら1万枚、非正規社員でも1000~3000枚。売上げの少ない「恥ずかしい社員」は、数百人の社員のそろう朝礼のとき、「お立ち台」に立たされ、「申し訳ありません」と謝罪させられる。
ノルマを達成しない社員は昇進できない。そこで、金券ショップに駆け込んで買ってもらう。管理職だと自腹を切る金額は数十万円になる。
郵政公社がスタートした2003年に、精神疾患による休職者は400人だったのか、4年後の2007年度には800人近くへ倍増した。自殺者も、毎年30~50人出ている。
ひえーっ、これって怖い数字ですよね。小泉「郵政改革」の結末の一つがこれなんですね。ひどいものです。
日本郵便の社員は正社員が10万人で、非正規社員が15万人。非正規社員が6割を占めている。そして、非正規社員の6割以上が年収200万円以下。
日本郵便は、20011年、2012年と赤字を出していたが、2013年の決算では黒字となった。それは、非正規社員の大量解雇によって500億円もの人件費を削減したことによる。
現場には、正社員がほとんどいない。非正規社員の時給は720円で、手取りは付き11万円台。
日本郵便の社員の起こす交通事故の割合は、一般社会の4~5倍と高い。叱責と罵倒の毎日は、労働者を確実に委縮させ、気持ちを急がせ、作業から安全性と確実性を奪う。
定時の前に出勤し、昼休みに昼食を食べず、午後と夕方の休憩時も働く。
残念なことに、こんなひどい自爆営業は、ひとり「郵便局」だけではありません。他の業種にも、今では広く認められます。そこには、労働基準法も労働組合も存在しないかのようです。でも、権利はたたかわなければ、自分のものになりません。ぜひぜひ、みんなで、少しずつ声をあげていきたいものです。
ひどいことは許さないという声をあげるのは、自分のためであり、世の中のためなのですから・・・。
(2014年5月刊。780円+税)
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