著者 速水 融、 出版 麗澤大学出版会
岐阜県の一農村の97年間にわたる宗門改帳(しゅうもんあらためちょう)を分析した本です。農村の一断面、とりわけ江戸時代の農村が閉ざされていなかったことが良く分かります。この村から関西方面へ、男も女も出稼ぎ・奉公に行っていたのです。
日本の江戸時代には豊富な史料・文献が残されている。公私にわたる膨大な文書、記録の山がある。これは識字率の高さにもよる。幕末期の日本において、成人男性の45%、女性の15%が読み書き能力を持っていた。これって、実は、すごいことですよね。昔から日本人の好奇心、知的欲求度の高さを反映している数字だと思います。
初めの49年間では、夫婦5組に1組は離婚している。残り50年間には離婚数は減った。100年間を通してみると、離婚数は結婚数の11%、9組に1組の割合となっている。しかも、離婚件数26のうち14組には子どもがいた。日本では、離婚は昔から少なくなかったのです。
女子の結婚年齢は、上層ほど低く、下層では高い。これは、小作層から多数の奉公人が出稼ぎに出ていたからである。
そして、結婚の継続期間は比較的短かかった。5年以内では離縁が最も多く、妻の死亡によることも少なくなかった。わずか1年内で終了するときには、その8割が離縁だった。
夫婦が若いうちに離死別したときには、残された夫または妻が再婚する事例は多い。男は、40歳前だと、そのほとんどが再婚し、女も、35歳以下なら半数は再婚している、
長男が家督を承継する制度ないし慣習が確立していたとは決して言えない。
ここでは、女性が戸主である率は全体の7.1%であった。
そして、長男以外の男子による家督の継承は、戸主の死亡の時にかなりの頻度で見られる。戸主が死亡したとき、その半分で女性が継承者となっている。前戸主の妻が継承者となることが多い。これは、夫より妻の方が年齢が低かったことによる。
江戸時代の農村の実情を知ることができる本として、おすすめします。
(2009年9月刊。2400円+税)
江戸農民の暮らしと人生
日本史(江戸)

