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はまゆう

 著者 小坪 哲成、 海鳥社 出版 
 
 タイトルも何のことやら見当がつかず、冴えないセピア色の昔の街頭風景写真をつかった表紙で、手にとって読みはじめたとき、正直言って期待していませんでした。ところが、案に相違して、この本はとても面白いのです。
 私より少し若い著者は、今年、60歳で警察を定年退職しました。福岡県警で40年あまりを勤めあげた、その経験がこの小説に見事に結実しています。
 暴走族特別捜査班長時代には、「鬼班長」として暴走族から恐れられていたといいますが、その文体はきめ細かく、読み者の心をつかむ秀逸な文章になっています。私も職業柄、警察小説を多読していますし、元警察官の書いた本もたくさん読んでいますが、この本は、ピカイチの部類に入ると私は思います。なんといっても、捜査の現場にいたことのある体験を生かした描写には圧倒的な迫真力があります。オビに、「実際の捜査現場を、リアルに再現した“本当の”警察小説。容疑者との根くらべ。ひたすら脚を使った地道な捜査。わずかな手がかりを頼りに、倦むことなく犯人を追う―」とあります。
 実際の捜査現場は、こんなものなんだろうな、大変だなと思いつつ読みすすめていきました。殺人事件が起きます。その犯人が迷宮入りするなかで警察官を志望する二人の青年。警察のなかで鍛えられ、やがてひょんなことから、犯人の目星がつきます。しかし、どうやって口を割らせるか・・・・。思案のしどころです。そこは足を使うしかない。聞き込みにまわります。
 捜査とは、そ・う・さ、である。「そ」とは犯罪現場では、掃除をするように、小さなごみ一つでも見逃さない。なぜ、それがそこにあるのか、自分で納得できるまで追及する。「う」とは、嘘をつかないこと。「さ」とは、最後まであきらめないこと。
 これって、弁護士の仕事にも通じる大切なことです。
(2010年8月刊。1300円+税)

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