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草すべり

著者:南木 佳士、 発行:文芸春秋
 この著者の文章は、ちょっと働きすぎて疲れちゃったな、そんな気分のときにすーっと胸にしみいる気がします。
 浅間山、千曲川、佐久平・・・。中年になると、山登りもきつくなります。それでも山に登りたくなるのです。そのときの心の微妙な揺れ動きが、哀愁の響きとともに語られます。
 著者とおぼしき医師が登場します。死にゆく患者を看取ると、医師のほうにも疲れが募り、医業のむなしさにぶつかってしまいます。
 山歩きは、どこかしら書く作業に似ており、書かれた言葉が次の言葉を呼んで、物語の世界が少しずつ様相を変えながら構築されていくのと同じで、汗にまみれて到達した頂からの眺望が次の目標を無意識の中に植え込み、新たな山域の清浄な大気は、さらに先へと向かう意気の燃料となる。
 芥川龍之介の『河童』が紹介されています。はてさて、高校生の頃読んだはずだが、いったいどんな内容だったのだろうか、と思いました。さっぱり思い出しません。『河童』は、芥川が36歳で自殺する5ヶ月前に発表された作品だそうです。今一度読んでみようかな、と思いました。
 著者の本をもとにした映画「阿弥陀堂だより」を思い出しました。素晴らしい四季折々の大自然とともに、しみじみと人生を考えさせてくれる傑作でした。
 パリやトールーズの街角のあちこちに自転車置き場を見かけました。いかにも貸し自転車という感じで、パーキングメーターにつながれています。若者が近寄って、ひょいと乗って立ち去る姿を何回も見ました。最近のNHKフランス語講座で、これはヴェリブというシステムだと教わりました。先日の新聞記事でも紹介されていました。市民が保証金を支払って登録すると、30分以内ならタダで自転車に乗れ、どこででも返すことができるというのです。しかも、協賛企業に費用を負担してもらっているので、市の負担はないとのことです。パリ市内だけで2万台の自転車が用意されているそうです。自動車を市街地から減らすためのいいアイディアだと思いました。
(2008年7月刊。1500円+税)

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