(霧山昴)
著者 フウ 、 出版 産業編集センター
これは面白い本です。特急電車のなかで読みふけりました。途中の停車駅で電車が停まって出発するのも気がつかないほど集中したので、しまいには下車駅を乗り過ごさないよう自分に言い聞かせたほどです。
ヨルダンという国が中東のどこにあるのか今も知りませんが、治安はとてもいいようです。なにしろ若い女性2人がヒッチハイクで旅行できるというのですから(もちろん、彼女らなりに用心はしていますが…)。
主人公の日本人女性は22歳。絵が描けるという特技を身につけていて、本屋の看板づくりに活かして喜ばれます。22歳なのに、すでに10ヶ国も一人旅をしたことのある猛者(もさ)です。勇気があるんですね、とても私には真似できません。いえ、今の私はもちろんのこと、22歳の私にも、そんな勇気がなかったと断言できます。
ヨルダンの公用語はアラビア語。でも、英語は十分に通用する。著者も、アラビア語はダメで、英語で通した。
ネットでヨルダンにある本屋を見つけて、ネットで「働かせてください」と送ったところ、すぐに「OK」という返事が来た。でも、泊まる部屋がどんなところか何も書かれていない。ネットで本屋の様子は教えてくれたけれど、部屋の案内まではなし。
さて、そこでどうしたか。ただちに旅費をためて、突撃取材ならぬ、突撃訪問したのです。いやぁ、勇気ありますよね。怖いもの知らずとは、まさにこのことです。
アラビア語で「本屋」というのは、一般に文房具屋ということ。しかし、ここは本物の「本を売る本屋」なのだ。しかも、カフェつき。写真で見ると、いかにもおしゃれな店です。店の構えも、店内も。なので、本を買うより、店内の写真を撮りに来る「客」が多くて、「写真撮影禁止」という張り紙をしている。それでも、こっそり写真を撮る人たちがいる…。
ジャパニーズガールと同じように、同じ年齢のイタリア人女性が同じ本屋に飛び込んできて、二人は同じ部屋で生活することになったのでした。まさしく超ラッキーです。世の中、偶然とはいえ、こんなこともあるんですね…。
しかも、このイタリア人女性は英語もフランス語もペラペラの才女。そのうえ、最高なのは著者とまったく気が合ったのです。アラビア語も真面目に勉強しているというので、さすがの著者もたじたじとなりました。ただ、料理は不得意というので、まかない当番からははずれたそうです。
本屋とカフェの写真がたくさんあって、そりゃあ、こんなところでしばらく働くのもいいかも…と、つい思ってしまいました。
本屋で働くスタッフの人物紹介がまた何とも言えないほど素敵です。世間的には奇人・変人の集まりとしか思えませんが、女性で大工をしているアリスは愛にあふれていて、英国紳士そのもののデイビッド。
この本で、アラビア語の数字が日本人には間違いやすいことを初めて知りました。5は0(ゼロ)、6は7にしか見えませんし、7と8はVと逆Vなのです。そして0は、なんと小さな黒丸(・)。いやぁ、これは困りますよね…。
アラビア語のなかで著者が真っ先に覚えたのは「ハビービー」。その意味は、なんと「愛する人」。ところが、声を荒らげるケンカの真最中にまで、この「ハビービー」が使われるというのです。信じられません。
ヨルダンでも日本のマンガやアニメは大人気で、「チビ・マルコ」まで知っているというのです。
店内に入って、うっかり壺を大量に割ってしまった話が笑えますし、泣けます。いやぁ、こんなこともあるんですよね。旅行保険をもとに弁償しようとすると…。その顛末は、ぜひ、この本を読んで下さい。
日記にネットに載せていたのが本になりました。面白いです。日本の若い女性の勇気に驚嘆、敬服しました。
(2025年8月刊。1980円+税)


