法律相談センター検索 弁護士検索

伊藤熊太郎、海を渡った天才博物画家

(霧山昴)

著者 福地 毅彦 、 出版 山と渓谷社

 これはすごい迫真の金魚たちのオンパレードです。

 魚を水から出すと、体色は短時間のうちに褪せていく。採集して水から出すと驚くほど色が変わってしまう。魚の骨格や筋肉まで把握して、立体感豊かに三次元的に描写している。雲母だけでなく金泥も使って、重量感も立体感も出している。

 「着色美麗、あたかも生けるが如き写生図」(明治36年)

 「画図は色形とともに、いずれも真に迫り、あたかも溌剌(はつらつ)として紙上に踊るがごとく感あり」(同年)

 「繊細なる筆致と絢爛(けんらん)なる色彩は真に迫り、写実の妙を極め」(昭和4年)

 まことにもって同感です。

 魚の生体がまだ本来の色や斑紋(はんもん)を残しているうちに、絵筆を用いて、すばやく、しかも正確精密に、その姿を写し取った。博物画は、ひたすら眼球に物を写しとるアート。

 絵には影が一切描かれていない。いっさいの陰影がないのに、立体的に見える。魚体の丸み、鰭(ひれ)の優美さ、鱗(うろこ)や肉瘤(こぶ)の立体的な表現など、種の特定という実学的な価値のみならず、感傷に値する博物画となっている。

 著者は神田神保町の古書店で1987(昭和62)年12月、素晴らしい金魚の絵31枚を大枚11万円はたいて購入したのでした。いやあ、これはすごいことです。でも、今「お宝鑑定団」にみてもらったら、なんと100万円近くするものなんだそうです。まさしく「お宝」です。

そして、この絵を描いたと思われる伊藤熊太郎なる画工の素性を追跡していくのです。その過程も、この本を読ませるものになっています。

 しかし、ともかく、カラー図判で紹介されている金魚の絵には思わず息を吞んでしまいます。日本は昔から金魚を愛好する人々の多い国です。江戸時代にも、中国からいろいろ輸入して楽しんでいたようです。

 金魚にもたくさんの種類があります。和錦(わきん)とか、らんちゅう、そしてデメキンというのは私も知っています。

 愛好家はいろいろ金魚をかけあわせ(交配させ)て新しい品種をつくり出しています。ワキンとランチュウの交配からキンランシ、ワキンとフナとデメキンの交配からシュブンキンというように…。

 いやあ、それにしてもたいした精密画です。天才博物画家というのに嘘はありません。

(2025年10月刊。2970円)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.

タイトルとURLをコピーしました