(霧山昴)
著者 毎日新聞取材班 、 出版 藤原書店
実に腹立たしい本です。いえ、著者に対して怒っているのではありません。書かれている内容、アメリカ軍の横暴と日本政府の屈辱的な追従に対して、です。
東京の六本木は、日本有数の高級歓楽街だし、高層マンションの集中立地しているところですが、そこにもアメリカ軍の基地があります。そこに横田基地などからアメリカの軍用ヘリコプターが飛んできて、低空そして周回(遊覧)飛行しているのです。日本の航空法の高度制限などはまったく無視してのものです。
アメリカの政府関係者は横田基地に着陸したら、パスポート不用です。そして、そのまま六本木に飛んで、東京見物を楽しむことが出来ます。まさに、日本はアメリカの植民地扱いされているのです。
まずは、陸軍のブラックホークです。高層ビルの林立するなかを高度200メートルで周回飛行するのです。危険きわまりありません。高層ビルが林立しているということは、「ビル風」という乱気流が発生するということです。
ブラックホークというのは攻撃型ヘリコプターですが、アフリカでは墜落して脱出するとき包囲されて地元住民と銃撃戦を展開しました。この状況が映画になっています。また、オサマ・ビンラディンを殺害したときにも使われましたが、このときもヘリコプターの1機は不具合を起こしてしまいました。
ブラックホークの巡航速度は時速200キロ以上。ドコモタワーと東京都庁の間は550メートルしかない。そのなかを低空で通過している。いやあ、本当に危ないです。
アメリカ海軍のヘリコプターは「シーホーク」といい、「ブラックホーク」によく似た大型ヘリコプター。スカイツリーの周囲を低空で2機が周回したのを目撃。要するに観光しているのでしょう。そして、隅田川の上空は、なんと高度100メートルほどで飛行。これまた観光です。ひどいものです。
なんでアメリカ軍のヘリコプターがこんな危険な低空飛行を繰り返しているのか…。
考えられるのは、要人輸送のための完熟訓練、市街戦を想定した訓練…。つまり、日本人を守るためではないということです。
障害物の多い市街地での低空飛行をするには高い操縦技術が必要で、事故につながりやすい。市街地の上空をこんなに低空で飛行するのを、アメリカではやっていない。これだけ好き勝手にアメリカ軍が出来るのは、日本と韓国くらいのもの。ヨーロッパではありえない。
いやはや、本当に情けない。涙が出てきます。参政党を支持した皆さん、これで「日本人ファースト」と言えますか…。
マスコミが、これを問題にし、国会で共産党の議員が追及しても、アメリカ軍が「問題ない」としているからといって、日本政府は何もしないで放置しているのです。
アメリカ軍のヘリコプターは、昼間だけでなく、夜も都心を低空で飛んでいる。これにも驚きました。
アメリカ軍の横田基地は、事実上、治外法権になっています。日本政府は監視しようともしていません。PFASなどの違法物質のたれ流しも野放しのままです。ひどすぎます。
横田基地で働く1000人の日本人従業員の給料の大半は、私たち日本人の納めている税金によってまかなわれます。アメリカ軍が負担しているのではありません。
アメリカ軍が日本を守ってくれているのだから、日本が費用負担するのは当然だと考える人がいます。でも、トランプ大統領は、それこそ「アメリカ・ファースト」です。日本を守るつもりなんか、カケラもありません。それでも、日本はアメリカの言いなりって、おかしくありませんか…。
読みたくない、知りたくない、内容のオンパレードです。それでも、目を閉じておくわけにはいきません。一読をおすすめします。
(2025年9月刊。2750円)


