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財界論

(霧山昴)

著者 古賀 純一郎 、 出版 旬報社

 財界の総本山、日本経団連の会長に日本生命の前会長(筒井義信)が就任したのは、私にとっても意外でした。製造業ではなく、金融界からの初めての会長なのです。

 日本生命は、「ザ・セイホ」といって、100兆円規模という巨額のお金を動かしています。世界的にも上位の機関投資家なんだそうです。それにしても1社で100兆円というのは驚きです。

 ヨーロッパにも大企業経営者の団体はあるけれど、日本の経団連に匹敵するほどの影響力はもっていないとのこと。日本の経団連の力は突出しているようです。

 サントリーの会長だった新浪剛史が代表幹事をしていた経済同友会は、新浪剛史が代表幹事になってから、それまでの「政府とは一線を画す」という姿勢が一変し、何事につけて政府寄りになってしまっている。原発政策も容認一辺倒になりましたしね…。

 トヨタは、2009年から少なくとも5年間は法人税を、1円も払っていなかった。さまざまな税制上の優遇措置を駆使してのことです。消費税では輸出企業として戻し税を、もらっていました(います)。

法人税の減額で、43%が23%に20%も下がったことから、トヨタは2兆1263億円の税金を支払うべきところ、1兆1373億円と1兆円近くも支払わずにすんでいる。これでは、自民党に政治献金するわけです。仮に1億円を献金したとしても、1兆円も減税してもらえたら、安いものですからね。その減税分は、実は、消費税の増税によってまかなわれています。つまり、私たちの懐(フトコロ)から巻き上げた税金でトヨタを助けているのです。こんな不平等なことって、ありません。許せません。消費税の支払いに日頃、いつだって窮々している身からの恨みごとです。

 財界人が政治家に献金したり、財団連の役職に就きたがるのは、勲章ほしさだということも紹介されています。でも、財界人でも叙勲を拒否した人がいるのですね。中山素平(日本興業銀行頭取)、桜田武(ミスター日経連)、木川田一隆(東電)です。意外ですよね。

 アメリカもフランスもそして韓国も、企業献金を原則として禁止している。日本では自民党は企業献金を禁止しようとしませんし、与党となった日本維新の会も野党時代の公約だった企業献金禁止を放り投げてしまいました。その変節は、あまりにみっともないとしか言いようがありません。身を切る改革として、国会議員の定数の削減を勝手に求めていますが、公費で飲み食いし、法人の取締役になって社会保険料を「節約」したり、自らの身はまったく切っていません。ひどすぎます。

 日本の超大企業は繫栄するばかりです。今や高市政権下で軍需産業がウハウハの状況にあります。

企業の内部留保会は、2001年度に167兆円だったのが、今では3倍強の600兆円を突破している。それに対して、労働者の賃金は、この20年間、ほとんど上がっていない。今では、OECD加盟38ヶ国のうち、日本は22位にまで転落してしまった。

 経営トップの報酬は、ソニーが12億円、トヨタは7億円と、20年前には珍しかった億万長者が急増している。1億円以上の報酬をもらっている取締役が日本に100人以上いると聞いています。信じられません。それでもアメリカ企業のトップよりはるかに低額だと、うそぶいているのです。いやはや、とんだ連中が日本を動かしています。

 日本社会の現実を知るためには、財界のことも知らなければいけないと思って読みました。

 もっと、現場で働く労働者、そして市民のことを財界人にも考えてほしいと改めて思いました。自分だけ、今だけ、お金だけという発想はぜひやめてほしいです。

(2025年10月刊。2200円+税)

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