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沖縄戦

(霧山昴)

著者 斎藤達志 、 出版 中央公論新社

 いま、安保法制法と安保三文書の具体化として、沖縄本島と南西諸島の軍事基地化が急ピッチで進められています。

「台湾有事は日本有事」をいい、日本が存立危機自体になったとして集団的自衛権を行使する。つまり中国と戦争しようというのです。とんでもない高市首相の発言ですが、少なくない日本人が、マスコミの誘導(操作)によって、中国の「過剰反応」が問題だと思わされています。

「台湾有事」で南西諸島の島民と観光客の12万人は6日間で九州・山口に避難するという計画があります。とても出来るはずもない机上のプランです。ところが、沖縄本島に住む人々は避難計画はありません。自衛隊の司令部は地下シェルターに入って「戦う」というのですが、住民は「自己責任」として国からは放置されています。戦争中の沖縄が、まさにそうでした。島民の一部だけは九州に疎開しようとしますが、たくさんの学童をのせた対馬丸は米軍の潜水艦によって撃沈されて、大半が亡くなってしまいました。同じようなことが再び沖縄で起きようとしています。

いえ、沖縄だけの問題ではありません。本当に戦争になってしまえば、日本全国にある原発の一つでも攻撃されてしまえば、日本はもう終わりです。3.11の福島原発のような自然災害でも対処できないのです。ミサイルを撃ち込まれたら、対処できるはずがありません。どうして、みんな真剣に戦争が起きないよう努力しないのか、不思議です。軍事力に対して軍備増強をいくらしても平和と安全を守ることは出来ません。

 沖縄戦の経過をたどると、日本政府も軍も、そこに住んでいる県民の安全と生活をまったく考えていないことがあまりにも明らかです。そして、東京の安全な皇居にいた天皇は、アメリカ軍の攻勢・上陸してからの進撃の速さに驚き、沖縄現地の守備軍は、なぜ反撃攻勢に出ないのかと𠮟るばかりでした。日本軍が反撃する力をもっていなかったことが知らされていなかったようです。

昭和19年末の沖縄県の人口は59万人。うち49万人が沖縄本島に居住。そこに6万人の軍隊が駐留し、全島が戦場となった。

 沖縄戦においては、住民に対する配慮が欠ける点が、多々生じた。住民の戦死者のうち14歳未満が1万1千人をこえた。小児・幼児の被害が多かったのは国内戦の悲惨な実情を示している。昭和19年7月の段階では、沖縄県民10万人を本土(8万人)と台湾(2万人)へ疎開させる計画が立てられた。そして、昭和20年3月までに、本土へ6万人、台湾へ2万人が疎開した。沖縄に駐留した日本軍(第32軍)は、兵力増強のため、2万5千人を防衛召集した。召集された者は、軍人となる。そして、学徒動員を実施した。男子学徒隊は鉄血勤皇隊と命名された。女子学徒には防衛召集は適用されないので、国民徴用令と女子挺身勤労令によって動員された。

 男子学徒の死亡率は43.4、女子学徒の死亡率は45.9で男子よりも高い。それだけ過酷な環境で活動していた。第32軍の司令官が県民に対して、玉砕を示唆する悲壮な調子で話したことから、県民のあいだに必勝不敗の信念を動揺させるものとなった。

 また、軍当局は兵隊専用の慰安婦を設置するよう県に要求し、県知事は拒否した。しかし、軍は警察に圧力をかけて県内各地に慰安所を設置した。

兵隊の乱暴狼藉そして風紀紊乱は目に余るものがあり、県知事は「皇軍としての誇りはどこにあるのか」と日記に書いたほどだった。

昭和19年10月10日のアメリカ軍の「10・10空襲」によって、那覇市は一瞬にして焦土と化した。沖縄県民は友軍の無力さを見せつけられ、戦争の恐ろしさをまざまざと思い知らされた。戦いはこれから、というのに住民が受けた衝撃はあまりにも大きかった。

 日本軍の将兵たちが辻遊郭で日夜飲み騒ぐのを見せつけられた住民は、沖縄がまるで外地同様の植民地であり、外国軍隊が駐留しているのではないかとさえ思うようになった。

沖縄県民の住民感情を大きくマイナスにした三つの事例がある。学童疎開船「対馬丸」の遭難、10・10空襲、第9師団の台湾への転出。

 沖縄戦は、戦争が始まる前に、すでに住民の現地日本軍に対する不満が充満していて軍隊の軍紀・風紀は乱れに乱れていた。昭和20年2月、沖縄にある食料は3ケ月を支えるのが精一杯だった。昭和20年4月1日、アメリカ軍第10軍が沖縄本島に上陸した。

 沖縄戦が本土決戦をひきのばすための捨て石として戦われたことは明らかです。その状況が再び繰り返されるかもしれないなんで、本当にひどい話です。政治家の役目は戦争にならないようにすることであって、戦争にそなえることではありません。勘違いしないでほしいです。

(2025年5月刊。3960円)

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