(霧山昴)
著者 松原 始 、 出版 新潮文庫
この問いかけに対する答えは、基本的に「ノン」です。
カラスを捕獲して飼育することは、できなくはない。そして、実際に、野生だったカラスを飼っている人がときにいる。
しかし、カラスを飼ったら、とんでもないことになる。サイズというと、小型犬か猫くらい。体重800グラムになる鳥なので、羽ばたきは強烈。好き勝手なところに飛び乗ってくるし、目の前をバタバタ飛んだかと思うと、突然バサバサと飛び降りてくる。
そしてカラスは、いたずら好き、気になるものはつついて、つついてぶっ壊す。もって行って隠す。カラスは絶望的なまでにしつこい。
カラスは死ぬほどヘタレで、知らない人間には、ひどく人見知りする。
うっかりカラスを飼ってはいけない。カラスを追い払うのに、CDやらカラスの模型やらをぶら下げても、あまり役に立たない。一番効果的なのは、その場に人間がいて、カラスに目を向けていること。カラスは自分を見ているもの、自分の動きに反応するものに敏感だ。
世界中にカラスがいると思っていましたら、南アメリカにはカラスもニワトリもいないとのこと。ええっ、「トリの唐揚げ」は南米では食べられないのでしょうか…。
カラスの肉は高タンパク質で低カロリー、そしてタウリンや鉄分を大量に含む。でも、決して美味しくはない。ただし、食べられないというわけではもない。
カラスは子どもを守るためのときだけ、人間に立ち向かう。でも真正面から攻撃する度胸はない。必ずうしろから飛来するし、せいぜいうしろから人間の頭をけ飛ばすくらいのこと…。
カラスは鏡を見たら、怒ってくちばしで鏡を叩いて、ケンカを売って攻撃する。カラスは、羽毛にたっぷりメラニンを持っているので、真っ黒(ないし褐色)に見える。
実践的にカラスを知る面白い文庫本です。
(2023年4月刊。590円+税)
カラスは飼えるか
