(霧山昴)
著者 宗像 和重 、 出版 岩波文庫
明治の文豪・森鷗外が亡くなったあと、故人を偲んだ文章がまとまっている文庫本です。
鷗外という人の性格と生活の様子が分かります。
鷗外は、淡泊な野菜類、ナス、カボチャ、サツマイモを好んだ。
とりわけサツマイモが好物で、砂糖をつけて食べた。
晩年には、料理屋のものは一切食べなかった。
本をたくさん買ったが、値切ることはしなかった。著者の苦労を思えば、そんなことはできないと言った。
服装は1年中、軍服で通すことが多かった。
留学してからは風呂に入ることなく、朝夕2回、桶1杯の湯と水を入れたのと穴のあいたバケツを2個そろえて、頭の先から足の先まで拭い清めた。
タバコをすい、葉巻を愛用したが、晩年にじん肺になってからはやめた。
酒は飲まなかった。
日清戦争に従軍したあと、台湾へまわされ、そのあと東京ではなく、小倉師団に転任を命じられた。これは明らかに左遷であり、本人も「隠流」という雅号を名乗って、自分の心境を表明した。
鷗外は、相撲を好んだ。
鷗外も妻も、最初の結婚に失敗した同志だった。
医者でありながら、自らは医者にかかりたくなかったようです。60歳で亡くなったのも、そのせいではないでしょうか…。
(2022年5月刊。税込1100円)
鷗外追想
人間

