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空飛ぶヘビとアメンボロボット

(霧山昴)
著者 デイヴィッド・フー 、 出版 化学同人
ノーベル賞ならぬ、イグノーベル賞を2回も受賞したという著者の話は、さすがに面白い。
ええっ、こんなことまで調べるのか…。たとえば、自分の子ども(赤ちゃん)のおしっこが何秒間つづくのか測ったら21秒だった。そんなの測りますかね…。
そして、では、ゾウの排尿はどれくらいか。まあ、図体がでかいから1時間くらいかな…。と思うと、あにはからんや、人間と同じで、21秒ほど。ほ乳類の動物が、ほとんどこの21秒ほどだというのです。
生理現象のときは無防備なので、敵に襲われると逃げきれない心配がある。そこで、21秒くらいが安全。そうすると、尿道は、それにあわせることになる。直径と長さの組み合わせなので…。イヌ、ヤギ、パンダ、サイ、ゾウの排尿時間は、いずれも10秒から30秒のあいだで、平均は21秒。動物たちの排尿時間は驚くほど近似している。
犬の膀胱は、計量カップほど。ゾウの膀胱は、その100倍以上で、20リットルのキッチン用ゴミ箱を一度のおしっこで満タンにする。尿道の長さと直径の比は、男性25:1、女性で17:1。この比は人間だけでなく、ネズミからゾウまで、あらゆる哺乳類に共通している。学者って、こんなことまで調べるのですね。その発想に圧倒されます。
蚊は、雨の中でも飛べる。なぜか…。空から降ってくる雨粒の重さは、蚊の約50倍。では、蚊はどうして雨粒にぶつかったり、土砂降りのなかでも飛んで(生きて)いられるのか…。
蚊の重さは、雨粒のわずか2%でしかない。あまりに軽いので、雨粒の動きに逆らわない。蚊は雨粒の落下を妨げることなく、ただ受け流す。蚊があまりにも軽いので、雨粒は衝突によって減速しないことから、蚊の体には大きな負荷がかからない。
トビヘビは、高さ50メートルの樹にのぼる。そこから滑空し、100メートル先の地面に、ほんの数秒で到達する。トビヘビの滑空率はムササビを10%も上回り、トビガエルの2倍近い。
トビヘビは空中を落下するとき、はじめは頭を下に傾けていたが、次には頭を上に、尾を下にして、体を水平に近づけた。そして自分の体をS字型に曲げ、空中を泳ぐように波打ちはじめた。地表に着地するときには、着地の衝撃を和らげるため、ヘビは再び体の向きを変え、尾を最初に、頭を最後に着地する。
ヘビの体が「ぬるぬるしている」という俗説は間違い。ヘビの体は濡れたように艶やかだが、触ってみると、さらりと乾燥している。
ヘビの椎骨は、数百個もあり、そのため、ヘビの体は長くしなやかなカーブを描き、体全体を地面につけて力を生み出せる。
アメンボはなぜ池の上をスイスイと動きまわれるのか・・・。アメンボが水の上に立てるのは、体のサイズが小さいおかげで、表面張力を利用できるから。アメンボは非常に小さく、そして軽いので、ふだんは無視できる力の影響を受ける。すなわち、表面張力。表面張力がアメンボの体重を支えるのは、トランポリンがヒトの体重を支えるのと同じ原理にもとづく。
アメンボが空気の層をとらえておけるのは、どんな動物よりも毛むくじゃらの脚をもっているから。つまりアメンボが濡れないには、脚の表面積が毛によって増大したおかげだ。毛と毛のあいだには水が入りこめない。アメンボは、水の上というよりも、空気の上に立っている。脚もとにある空気の層のおかげで、アメンボは、アイススケートをするように、水面をスイスイ滑って移動できる。
そして、著者は、このアメンボをつくってみたのです。それは、ステンレススチールの針金でできている。脚は、水をはじくようにコーティングされている。体長9センチで、重さは0.35グラム。いやあ、こんなことまでしてみるのですね、学者って…。
生物の世界は不思議にみちみちています。私が日曜日夜の『ダーウィンが来た』を毎回欠かさず(録画して)みているのは、その神秘の解明に少しでも近づきたいがためです。
(2020年21月刊。税込2640円)

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