(霧山昴)
著者 フィオナ・ヒル・クリフォード・G・ガディ 、 出版 新潮社
ロシアのプーチンとは何者なのか・・・。それが知りたくて読んでみました。この本は決してプーチン賛美のキワモノではありません。手ごたえ十分の本です。
現代の著名人のなかで、プーチンはもっとも謎多き人物だ。プーチンの妻や子どもがメディアで紹介されることもないし、プーチンの個人資産も明らかにされていない。
プーチンという人間を単純な言葉で説明したり、たった一つのレッテルを貼りつけたりできると考える人は間違っている。プーチンは非常に複雑な人間である。
プーチンが世界のほかの指導者ともっとも異なる点は、その個人的な経歴として諜報機関で訓練を受けたプロの工作員であるということにある。
プーチンは、ソ連崩壊後に形成された現在の世界政治と安全保障秩序は、ロシアの「特別な役割」を否定するだけでなく、主権国家としての存続を脅かすほどロシアを不利な立場に置くものと考えている。そのため、プーチンは、現在の秩序を変えることを自らの責務としている。
西側諸国の多くの人々はプーチンを見くびりすぎている。プーチンは目標実現のためなら、どれだけの時間や労力、汚い手段をも惜しまない人間だ。使える手段は何でも利用し、残酷になることもできる。
プーチンは戦士であり、サバイバリストである。決してあきらめないし、勝つためには汚い手も使う。だからプーチンの言葉は常に真剣に受けとめなければならない。
プーチンは嘘の約束や脅しはしない。プーチンが何かをすると言えば、いったん準備がととのったら、あらゆる手を尽くして、その実行方法を見つける。
国内・国外対策の両方において、相手よりも優位に立つことがプーチンの主たる戦術である。
プーチンがもっとも重視するのは経済だ。プーチンが大統領になってからの10年間に、ロシアは世界でもっとも急成長を遂げた国の一つになった。それは、石油と天然ガスの価格高騰によってもたらされた。この10年間にせっせと外資準備を築きあげたおかげで、ロシア国家とプーチンは、2008~2010年の世界金融危機を乗り切ることができた。
プーチンは、側近たちを資産とみている。だから、プーチンのチームは常に少人数だ。人材を見つけ、側近グループへ勧誘し、その動きを管理する人物は自分だけ。それがプーチンの考えだ。プーチンの企業モデルは、少人数のグループの上に成り立つもの。
「株式会社ロシア」の上層部の人間関係は、すべてプーチンとの関係によって成り立っている。
プーチンの源泉を知った気にさせる本格的なプーチン解説書です。
(2017年3月刊。3200円+税)
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