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光陰の刃

(霧山昴)
著者 西村 健 、 出版 講談社 
 九州新幹線の新大牟田駅は田圃のなかにポツンとたっていて、周囲には店らしい店は何ひとつありません。在来線の駅から車で20分以上も離れていますので、乗り継ぎは考えられません。しかも、1時間に1本くらいしか停車しませんので、とても不便です。
その新大牟田駅前に巨大な銅像が佇立しています。そう、大牟田の三池炭鉱を三井の「ドル箱」にした団琢磨です。
団は75歳のとき、日本の経済界のまさに総帥だった絶頂の時点で、右翼(血盟国)の「一人一殺」によって暗殺されてしまいました。
この本は、団琢磨と井上日召(にっしょう)の生きざまを詳しく描きながら、交差させてたどっていきます。
なにしろ557頁もある大作です。しかも、活字が細かくて、読み通すのに骨が折れます。
でも、明治、大正そして昭和のはじめころの時代情景が詳細に書き込まれていますので、
団琢磨の苦労ぶりが手にとるように読めます。
 井上日召は、苦労したあげく予言者として名高い存在になったのですね。
 団琢磨は暗殺されたときに75歳。井上日召は、死刑にならず無期懲役となっていたが、早くも昭和15年10月には仮釈放となって刑務所を出た。死刑どころか、昭和42年3月まで生きていた。
 団琢磨と井上日召には、それぞれ詳しい研究書がありますが、この二人を組み合わせた読み物として完成度は高いと思いました。
(2016年2月刊。1900円+税)

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