(霧山昴)
著者 岡崎 ひでたか 、 出版 新日本出版社
戦争中、日本は中国で何をしたのか、そして日本人は国内でどんな生活をしていたのか、対比させながら話が進んでいきます。中学生や高校生、若い人にぜひ読んでほしいと思いました。340頁もありますが、なんとか挑戦してほしいものです。
中国は上海近くの農村地帯で生活している子どもの目から、抗日戦争の無惨な実際が語られます。悪虐非道な日本軍は、最新兵器を駆使するので、中国軍はとてもかないません。それでも、中国の人々は、ひそかに抗日の戦いをはじめ、子どもたちもそれに関わるのです。ここらあたりは、著者が現地で取材した実話にもとづいていますので、真に迫っています。
著者が取材に行ったとき、部屋の中は怒りの炎に包まれていた。恐ろしい燃えるような眼に囲まれた。中国の民衆にとって、まだ戦争は終わっていなかった。そうなんです。加害者は忘れても、被害者は、ずっと忘れることができないものなんですよね。
日本が戦争を反省して、憲法9条を定めたことをふくめて、お詫びの言葉を述べると、すっかり部屋は穏やかな平和の色に包まれた。
世の中は星(陸軍)と錨(いかり。海軍)に闇に顔、ばか者のみが行列に立つ(清沢冽)
中国は、鉄鉱石にしろ石炭にしろ、日本とはケタ違いの生産量でべらぼうに安い。タダ同然。労働者はいくらでもいて、賃金はうんと安くてすむ。だから、中国で工場をはじめたら、企業はもうけ過ぎてもうけ過ぎて・・・。それに、協力するのは、つわものぞろいの関東軍。
職業軍人は、戦争を起こしたくて、待っていた。出世できるチャンスだから・・・。 職業軍人は、戦争がないと手柄をたてられず、出世が難しい。
「軍事予算をどんどん増やす。そして、献金を集める。戦争は大儲けのチャンスよ」
中国の人々は日本軍を「トンヤンクイ」と呼んだ。東洋の魂だ。
日本軍が食料微発に来たときの対応4ヶ条。
① 逃げ隠れして、会うのを避ける。
② かくれることが出来なくなっても、粘り強く、一日でも先送りする。
③ コメを出すしかないときには、水にひたしてふかしておく
④ コメの袋のなかに、ニセ物を入れるなど、工夫する。
いやはや、戦争というのは、まさしく生活全般を根底からひっくり返すものだと痛感しました。親子読書の一冊にしてみたらいかがでしょうか・・・?
「自虐史観」だなんて、つべこべ言わず、この本を読んでほしいものです。いい本です。ご一読をおすすめします。
(2015年12月刊。1800円+税)
トンヤンクイがやってきた
