(霧山昴)
著者 山口 由美 、 出版 幻冬舎新書
パプアニューギニアの素顔を紹介した面白い本です。
パプアニューギニアは、世界で2番目に大きな島である、ニューギニア島の東半分などからなる国。日本からは6時間半かかるが、これはハワイと同じ飛行時間で行けるということ。
パプアニューギニアという国の面白さは、ついにこの前まで石器時代だったことにある。
内陸部のジャングル地帯には、マラリアなどの病気のため、ヨーロッパ人は入り込むことができず、昔のままの姿が残っていた。
パプアニューギニアには鉄道がない、道路がない。だから自動車を目にすることもない。だけど、奥地には滑走路があり、飛行機の離発着はできる。宣教師たるもの、飛行機の操縦は不可欠なのだ。そして。飛行機の整備も、燃料の補給も、セルフサービスである。
パプアニューギニアでは、親しくなった人から騙されるということはない。
パプアニューギニアでは、800以上の言語が話されている。世界に6000ある言語のうち、なんと1000もの言語がニューギニアに集中している。もっとも小さいものは数十人、多いものでも30万人ほどの言語だ。だから、公用語は英語であり、ピジン語が共通語として広く話されている。
パプアニューギニアでは戸籍や住民票が存在しない。だから、自分の誕生日や年齢を知らないという人は多い。
パプアニューギニアの人々は、ブアイを好む。ビートルナッツ、檳榔子(びんろうじ)、少量の石灰とマスタードと一緒に、口の中でくちゃくちゃと嚙む。このとき吐くつばは真っ赤になる。決しておいしいものではない。じわじわと口の中でしびれてくる。軽い酩酊感のような、ふわふわするような感覚。慣れてくると、これが癖になる。
5年に一度、国民全員が熱狂し、大騒ぎになるイベント。それが選挙だ。投票率は100%をこえる。一人で何度も投票する人が後を絶たないことによる。
パプアニューギニアでは贈収賄が犯罪にならない。そして候補者の公約違反は、裁判で訴えられることがある。
『ゲゲゲの鬼太郎』で知られるマンガ家の水木しげるは、ニューギニアのラバウルに行き、そこで、現地のトーライ族と親しくなった。
日常の買い物で「貝」を使うことはないが、公立学校の授業料や魚市場での支払はシェルマネーでもOK。冠婚葬祭では、むしろ現金は失礼で、シェルマネーを用意するのが礼儀である。
パプアニューギニアの食生活の基本は味がないこと。主食は、イモかサゴヤシ。味はなく、スープに灰で味をつけて食べる。
パプアニューギニアは、結婚の結納金として豚が重要なものとされているが、豚と並んでトヨタのランドクルーザーが交渉事の金額の基準にされている。未舗装の道を走るのは、トヨタのランクルだけ、ということ。パプアニューギニアでは、日本製品に対す信頼がいまだに絶大なのである。
こんな不思議な国が世の中には存在するのですね・・・。
(2014年11月刊。780円+税)
世界でいちばん石器時代に近い国
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