著者 川人 明・川人 博 、 出版 連合出版
川人(かわひと)兄弟は、東大駒場の自治会で活躍していました。どちらも団塊世代となりますが、私は弟の明弁護士とだけ面識があります。
川人弁護士は東大駒場で長く「川人ゼミ」を主宰していることで有名ですが、労災裁判とりわけ過労死裁判の第一人者です。
川人医師のほうは、東大医学部を卒業してからは、地域医療に長く従事してきたとのこと。
その臨床経験から、近藤誠医師の「がんもどき」説を批判しています。
兄弟とも、それぞれに著書がありますが、本書は川人兄弟の初めての共著です。
医師についてのQ&A、そして法律問答があり、さらには川人兄弟の生い立ちの語りをふくめた対談があって、実務的であると同時に、なかなか興味深く考えさせられる内容になっています。
いずれにしても、私をふくめて、いつのまにか、みんな還暦を過ぎてしまっています。ですから、どうしても体力とか健康・介護の話題に集中してしまうのです。
がん検診のうち、費用対効果の優れているのは、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がん検診の五つである。
近藤誠医師の「がんもどき」は、「本物のがん」と何でもって診断できるのかという肝心のところが、どの本を読んでもさっぱり理解できない。ただし、根治不可能ながん患者を痛めつける化学療法(抗がん剤治療)への非難については共感できる。
脳梗塞の前ぶれは、つまずきやすくなり、転倒する。ものが二重に見える。急に言葉が不自由になって、ろれつがまわらない、言葉がでなくなり。ところが、やがて何事もなかったように回復してしまう。しかし、2%の人は48時間内に脳梗塞を起こし、1年以内だと10倍以上にもなる。
認知症の中核症状を改善させる治療法はない。長期的にみて、進行速度を抑える効果があるだけ。
認知症は、頭の働きが悪くなるだけではなく、全身の動き、手足の動きも悪くなる。末期になると、飲み込めない、食べられない。食べることすら忘れる。生命としての機能、動物として生きるいろいろな能力が全部衰えて悪くなっていく。
末期のがん。再発・転移のある場合は、積極的な治療はやめておいたほうがいい。副作用のつらさがあり、下手すると化学療法をやったほうが命を縮めてしまうことがある。
原因になっているがんを叩く治療をすると、その副作用のためにかえって本人の調子が悪くなりかねない。生活がものすごく制約されてしまう。完治は難しいと思ったら、緩和療法をして、残りの人生をよくするように自宅へ帰ったがまし・・・。
東大では、世帯収入が400万円以下の新入生は授業料が100%免除される。そして、東大・三鷹にある学生寮に安く住むことができる。どれだけ利用する学生がいるのでしょうか。東大生の家庭は裕福なところが多いのは周知の事実です。
川人弁護士から贈呈を受けて読んだ本です。ありがとうございました。
(2015年3月刊。1600円+税)
還暦からの医療と法律
司法

