著者 メヒティルト・ボルマン 、 出版 河出書房新社
ドイツ・ミステリー大賞、第一位という小説です。
ドイツでは、ヒトラーのナチス・ドイツ時代の幹部連中が今なお名前も変えて生き、栄えている現実があるようです。この小説もそれを背景としています。
オビの文章を紹介します。
「不可解な殺人事件を追う一人の巡査。50年の時をこえてよみがえる戦時下の出来事。気鋭の女性作家による静かな傑作」
話は現代のドイツと戦中のドイツとが交錯して展開していきます。
仲良し6人組の男女が戦争に突入するなかで、バラバラになっていきます。
そして、戦後、死んだ父親の遺品の写真や証明書を手がかりに、聞かされていない過去を調べはじめると、協力者の女性ジャーナリストが惨殺されてしまうのです。
戦前、一組の夫婦が行方不明となりました。それを担当していた刑事は、わずかな捜査で早々に打ち切ってしまいます。なぜか・・・。
1960年生まれの著者が、知るはずもない戦前のドイツの状況をことこまかに描いています。
戦時中の話を幼いころに母親から聞かされた経験が生かされているとのことです。
著者の関心事は、ナチが政権を握っていた第三帝国時代に、ごくふつうの人間が、どのように暮らしていたのかを描き出し、その運命を読者にありありと感じとってもらうことにあった。その目標は達成していると思います。推理小説だと思いますので、ネタバラシはやめておきます。
良質のミステリー小説です。
(2014年5月刊。2200円+税)
沈黙を破る者
ヨーロッパ

