著者 国立極地研究所南極観察センター 、 出版 成山堂書店
日本の南極観察も50年の歴史を刻んできた。
タロ・ジロの冬の南極基地置き去り事件も、久しい昔の話となりました。今も一年中、日本人が南極にいて観測を続けているのです。たとえば、その一つが南極で隕石を発見し、回収する仕事です。これまで、4万個が見つかっていますが、うち日本は1万7000個の隕石を保有しています。しかも、隕石は月からだけでなく、火星からのものもあるのです。これには驚きました。よく、その違いが分かるものですよね。
南極や北極は、地球規模の大気循環を駆動させるエンジンとして作用している。氷におおわれている南極大陸では、大気が冷やされて大陸斜面を加工するカタバ風が、1年を通じて吹き続ける。このカタバ風を補うように、大気が南極大陸の中央上空に収れんする。
南極周辺部の海水は冷やされ、表層から深層へと沈みこみ、南極底層水を形成し、地球規模の海洋大循環駆動エンジンの役割を果たしている。
観測隊は、観測系と設営系で形成される。また、夏隊と越冬隊に分かれる。
1987年の第29次隊から、女性隊員が参加している。39次隊では、女性越冬隊員が2名参加した。2006年の48次隊には、7名もの女性隊員が加わった。
隊員は、感情の起状をうまく収めて仲間と協調できることが必要だ。高度の専門的能力だけではなく、想定外の問題が発生したときにも、迅速かつ柔軟に対応できる資質が求められる。型にとらわれない、自由な発想で対処すべし、ということ。
基地での最大の楽しみは「食」。公募に応じた人のなかから、2人がコックとして選ばれている。基地では、モヤシ30キロ、カイワレダイコン20キロを生産している。レタス20キロの水耕栽培にも成功した。
南極でのフリーズドライ食料が成功したので、宇宙食にも採用された。
これまでの事故で亡くなった隊員は一人のみ。猛烈なブリザードのなか、自分のいる場所が分からなくなる「ロストポジション」と呼ばれる状況に陥った。その隊員の遺体は7年後、行方不明の地点から4キロ離れた場所で発見された。
コウテイペンギンの雄たちが集団でブリザードに耐えて、必死に子どもを守っている状況を連想してしまいました。
行ってみたいけれど、とてもいけそうもない南極の基地の様子を知ることが出来ました。
(2014年3月刊。2400円+税)
南極観測隊のしごと
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