著者 星乃 治彦 、 出版 かもがわ出版
日本の左翼は、少なくとも国会の議席数をみる限り、元気がありません。それでも、国会外の動きでは、それなりに復調傾向にあると思われます。国会の外の世論の動向が国会の議席数に反映するためには、今の小選挙区制を撤廃するしかありません。完全比例代表制にしたらいいと私は思います…。
ドイツでは左翼が、このところ健闘しているようです。この本はその実情と克服すべき問題点を分かりやすく伝えています。2009年の選挙で、ドイツの左翼は515万票、76議席を獲得した。2013年の連邦議会では、若干の後退をしたが、連邦議会内の第三党になった。いくつかの州では、連立政権の一翼を担っている。ドイツ左翼党は、旧東ドイツ地域で25%の得票率を占め、全体としても12%の票を集めた。
ドイツ左翼党は、ドイツにおける五党体制を定着化させている。
ひところは消滅するとまで思われていた東ドイツの政権党が、なぜ生き残ったのか、そして今、躍進しているのか・・・?
1990年~1991年の湾岸戦争のとき、ドイツ左翼党の前身であるPDS(民主的社会主義党)は、緑の党さえ戦争支持に転じるなかで、平和主義の立場から発言する唯一の野党としての顔をもった。
PDSは、1994年の選挙で、政策的に一致できる人を選挙リストに組み入れていくという、オープン・リストで対応し、「左翼ブロック」を模索した。
ドイツ左翼党の党員は7万人前後で推移してきた。東西の比率は、かつて7対3だったが、今では2対1にまで是正された。左翼党は、今や、ドイツ全体における社会的弱者の党へ変貌している。
ドイツ左翼党では、中央集権的構造力がなく、下部組織の自律性が非常に強い。「上」からの指導がないだけに市民の意見をとり入れやすい。
そして、左翼党の指導部は確固として統一性をもっていない。左翼党内には、さまざまな左翼的潮流をかかえこんでいる。現在の左翼党は、自分たちの活動の源泉をレーニンに求めていない。レーニン的前衛党論はとっていないのだ。
近くて遠い、ドイツの政治をのぞいてみた気がしました。
(2014年1月刊。2600円+税)
台頭するドイツ左翼
ヨーロッパ

