著者 吉橋 通夫 、 出版 講談社
秀吉の朝鮮出兵は、朝鮮の人々に多大の苦難をもたらしました。
その一つが、人さらいです。日本軍は朝鮮の子どもたちを奴隷のようにして日本へ連れ帰り、日本国内だけでなく、遠く海外へ売り飛ばしたのです。
子どもたちは首を縄で巻かれ、全員がひとくくりになっている。一人ずつ逃げられないようにしているのだ。
人取りだ!
戦国乱世の日本では、捕らえた敵方の男は軍夫にし、女は妾にし、子どもは召し使いにした。文禄の戦のときは、太閣から人取り禁止の触れが出ていたが、今回は出ていない。
太閣自身も、「裁縫や細工物などに堪能な手利きの女たちを連れ帰って差し出せ」と諸将に命じた。
日本に連れていって、長崎で売り飛ばす。ポルトガル人と、鉄砲や絹、白糸など南蛮の品々と交換する。ポルトガル人は、世界中の奴隷市場へ商品として連れていって、競りにかける。若い娘や子どもは、いい値で売れる。
京都には、いまでも耳塚があるそうです。日本兵たちは、朝鮮人を皆殺しにして、その鼻を切り取って塩漬けにして、日本へ送っていました。耳は二つあるけれど鼻は一つしかないからです。
秀吉が死んで、徳川幕府の時代になって、朝鮮王朝は捕虜を連れ戻すための「回答兼刷還使」(かいとうけんさつかんし)を送り、7500人を朝鮮に連れ戻った。その後、通信使として朝鮮使節団が日本にやって来るようになった。
子どもの目から見た、無謀なかつ悲惨な朝鮮出兵のありさまをよく描いた小説です。
(2011年9月刊。1300円+税)
風の海峡(下)
