著者 櫻井 慶一 、 出版 北大路書房
夜間保育と聞くと、なんとなくマイナス・イメージがありますよね。でも、この本を読むと、これがすっかりプラスイメージに変わってしまいます。やっぱり、体験者の話には耳を傾けるだけの価値があります。
「夜間保育は、子どもの成長・発達に悪影響を及ぼすだろう」
この予言が、実はあたっていないことが、長年にわたる調査・研究によって明らかにされた。夜間保育は、現実には、決して子どもの成長・発達に悪影響を及ぼすものではない。むしろ、こどもの成長・発達に悪影響を及ぼす環境を改善し、子どもの健全育成に資するものである。
夜間保育が望ましくないのではなく、夜間保育を必要とする子どもの置かれた環境が望ましくないのであり、その厳しい環境に置かれた子どもを夜間保育によって、少しでも望ましい状態に替えることが児童福祉の精神なのである。まことにそのとおりだと思いました。
全国にある認可保育園は2万3700カ所。そのなかで認可された夜間保育園は、なんとわずか80カ所。全国のベビーホテルは1830カ所、3万3000人ほど。
夜間保育園は、夜間のみではなく、夜間まで開いている保育園。24時間いつでも預かれる保育態勢にあるということ。
夜間保育で育った子どもたちは社会のために役立ちたい、人とのつながりを大切にしたい、前向きに一生けん命努力したい、誠実で人から信頼される人になりたいと思う子が全国平均よりも高くなっている。
これには理由がある。子どもたちは、乳幼児期に保護者のがんばっている姿を見て育ち、夜中まで保育士が自分を支えてくれたという体験をしていることが大きい。
夜間保育園で、子どもが昼夜二食、安全でバランスがとれ、おいしい食事をとっていること、園によっては、入浴・寝かしつけも担っていることが、親の安心とストレス解消につながり、逆に短くても子どもとの時間を満喫し、楽しめるようになっている。
入眠時に、深い安心のなかで眠りにつける、そのためのゆとりある体制が必要。
眠りの途中で目覚めた子どもが、そのときいつでも大人がいることを感じて安心し、再び眠りにつくことのできる体制を確保する。
あわせて、仕事が終わってホッとしている、お迎えの保護者から雑談的に子育てや生活の悩みが聞ける体制が必要。
そうなんですよね。そこまでゆとりある夜間保育園なら、かえって安心ですよね。イライラするばかりの親と一緒よりも・・・。
福岡の宇都宮英人弁護士からすすめられて読みました。生活が困難ななかで、子どもと一緒にがんばっている親をしっかり支えている夜間保育所について、認識を改めることができました。全国夜間保育園連盟の創立30周年記念の本です。
子どもの福祉行政の貧困さを告発する本でもあります。読んでいて、なんだかうれしくなる、心が温まる体験記がたくさんある、いい本です。ぜひ、ご一読ください。
(2014年3月刊。2000円+税)
夜間保育と子どもたち
社会

