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著者  香納 諒一 、 出版  角川春樹事務所
現在(いま)を生きる意味を問う警察小説の誕生。これは本のオビにあるコピーです。
 著者の警察小説を初めて読みました。警察内部の人事の葛藤が描かれているのはほかの警察小説と同じです。やはり、どろどろした人間模様がないと単なる犯人探しの推理小説になってしまいます。この本を読みながら高村薫の『マークスの山』そして佐々木譲の『警官の血』を思い出しました。
 私と同世代の学生運動はなやかりしころの男女が登場してくるのです。私とは違って過激派のセクト活動家です。そこに、警察官が潜入捜査する話が登場します。要するにスパイです。これは本当にたくさんいたようです。それを体験した人の告白本もあります。ただ、所在をくらますため、地下に潜ったときハウスキーパーの女性の話まで出てきました。戦前の共産党員の地下活動にはあったようですが、戦後1960年代に本当にあったのでしょうか。私には信じられない話です。そんなことしなくても同棲自体は珍しくなかったわけですので・・・。
 警察署長はキャリア組。キャリアが「責任を持ちます」という類の言葉を口にしても、それを決して信じられない。このことはノンキャリアの警察官ならばだれでも知っている。
 キャリア組は自分の成績を上げるためなら何でもするし、責任回避もすごくうまいということですね。
 警察内部で非行を見たとき、バカ正直にそれを問題とすると、必ず報復があり左遷される。カラ領収書づくりが問題になったとき、そのことは明らかとなりましたね。
 政治家が登場し、地元の土建業者が利権をあさっているなかで、古い白骨死体が工事現場で発見されます。そこに居合わせたのが認知症の老婆。はたして両者に関連性があるのか・・・。
 筋書きはあちらこちらに飛んでいき、やがて一つに収束していきます。
(2013年1月刊。1800円+税)

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