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義烈千秋、天狗党西へ

著者    伊東 潤 、 出版    新潮社 
 幕末の動乱の時代、水戸藩の内紛を母胎として天狗党が生まれ、ついに京都へ駆けのぼろうとします。しかし、ときの将軍・徳川慶喜の動揺によって、哀れ切り捨てられてしまうのでした。
 水戸藩の家中騒動から、天狗党の決起。そして京都を目ざして苦難のたたかいを続ける姿が生き生きと描かれています。著者の筆力には驚嘆するばかりです。
 堂々400頁をこえる本書には、天狗党の面々の息づかいがあふれ、まさに迫真の描写が続きます。まるで、実況中継しているようで、手に汗を握ってしまいました。
 幕末、真剣に考えて生きる人々の迷い、動揺、そして行動が、これでもか、これでもかと詳細に描写されていて、読むほうまで胸がふさがれるほど息苦しくなります。
天狗党は、最終的に350人以上も処刑(斬罪)され、ほぼ同数が追放などの処分を受けた。
 ところが、明治になって逆転し、反天狗党が敗退して、首謀者は処刑された。
同郷の人血で血を洗う殺しあいをしたようです。復讐と報復の連鎖があったのでした。
 攘夷といい、尊皇といい、幕末期の志士たちの選択はとても難しかったようです。そのなかでも選択はせざるをえないわけです。それを誤ったときには、自らの生命を捨てるしかありませんでした。
 プロの作家の描写力には、いつものことながら、かなわないなあと溜息が出るばかりです。
(2012年3月刊。2200円+税)

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