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世界をやりなおしても生命は生まれるか?

長沼 毅 朝日出版社
 10人の高校生との対話をベースにした本です。分かりやすい反面、とても難しいところがありました。
 10人の高校生の知的レベルの高さには驚かされます。モノを食べない動物がいる。ええっ、ウ、ウソでしょ・・・。ところが本当なんです。暗黒の海底に棲息するチューブワームです。
 チューブワームには消化器官、つまり口・胃腸・肛門がない。栄養は内部から摂る。目には見えない特殊な微生物が体内に棲んでいて、チューブワームに栄養をつくってくれている。体内微生物の名前は、イオウ酸化細菌、イオウ酸化バクテリアともいう。これは植物の光合成と同じことをしている。ただし、暗黒の海底なので、光の代わりに海底火山のエネルギーを利用する。そして、でんぷんを作っている。
 この共生微生物とチューブワームはバラバラに切り離すことができない。単独での培養に成功していない。ええーっ、世の中には、こんな生き物がいるのですね。
 地下生物圏に棲息する微生物は3兆トンから5兆トンいると推測される。これは、陸上・海洋生物圏の2倍以上にもなる。すなわち、地球の内部こそが巨大な生物圏なのである。そのポイントは海底火山、地球の内部がアクティブであること。
リンキアというヒトデがいる。カリフォルニアや沖縄の海にいるヒトデである。このリンキアというヒトデは、腕を切り離すと、その腕の断片からも全体が復活する。
 同じようにプラナリアも、切っても切っても再生する。ある研究者がプラナリアを100個以上の断片に切り刻んだところ、その全部が全体を再生した。
 もし太陽がなくなったら、海底火山から出てくる、あるいは地下世界に秘められた化学エネルギーだけしか使えなくなる。太陽からは1367ワット/㎡のエネルギーが来るのに対して、地球内部からは69ミリワットしかない。太陽からの方が2万倍も大きい。もし太陽がなくなったら、地表はもう荒れ果てた平らな世界になるかもしれない。
 生命とは、問題を解くことである。そして、この宇宙で唯一、問題を解くことのできるものが生物である。
 生物の極限の状態を考えることが出来る本でした。
(2011年7月刊。1600円+税)

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