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天網恢々

著者  林 望    、 出版   光文社
 リンボー先生の小説を読むのは、『薩摩スチューデント、西へ』に次いで、これが2冊目です。もちろん、エッセイ集はいくつも読んでいます。私とほとんど同世代のわけですが、エッセイだけでなく、こうやって小説まで立派に書きあげるとは、まことにうらやましい限りです。
 ときは江戸。主人公は江戸町奉行という重職にある根岸肥前守鎮衛(やすもり)。江戸市中に起きる、さまざまな出来事、そして風説を書きつけていったことで史上有名な人物です。
 そして、この鎮衛、150俵扶持(ぶち)の三男から、とんとん拍子に出世していきます。佐渡奉行からついには江戸の南町奉行にまで昇進した。当代きっての出頭人(しゅっとうにん)である。諸国の珍説綺談を話す人々が寄り集まってきて、それを楽しく聞いて記録した。大耳の持ち主から、耳の九郎左衛門、つづめて耳九郎(みみくろう)の旦那と呼ばれて親しまれていた。
 不義密通から主人を毒殺しようとする番頭。中間奉公の身で100両を手にしたときふと魔がさして持ち逃げを考えたが思いとどまったところ、その100両がすりとられてしまった話・・・・。
 落語の世界、人情話を聞かされている気分になって、ついつい作中のワールドに引きずりこまれてしまいました。うん、うまい。リンボー先生に座布団5枚。
(2011年8月刊。1600円+税)

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