著者 池田 譲 、 出版 NHKブックス
なんという奇妙なタイトルでしょう。イルカじゃあるまいし、イカに心なんてあるはずないじゃないのさ。そう思ってしまいました。ところが、どっこい、なのです。なんと、イカは意外なことに巨大な脳をもち、ちゃんと学習効果をあげるのです。
しかも、ほとんど養殖できない。イケスに入れると、たちまち死んでしまうというのです。ウッソー、マサカでしょ・・・。そんな叫び声が聞こえてきそうです。食べて美味しいイカに、なんとなんと心があったなんて・・・。これから気安くイカが食べられなくなりそうです。
イカは情報を伝達する細胞である神経が発達し、それを統合したところの脳が大きい。イカは海の賢者とも言える存在なのだ。
南氷洋だけで、イカは年間3400万トンも捕食者に食べられている。これは人間が食べている量より、はるかに多い。世界の海洋には、総量でで2億トンのイカがいると推定されている。
淡水に生息するイカ、そしてタコなんていない。海にだけいる生き物だ。イカは変態しない。卵から孵化した時点から親と同じイカの形をしている。
イカの寿命は1年ほど。それなのに、日本列島を南北に往復する大回遊をしている。
イカの親であるオスもメスも我が子を見ることなく死んでいく。
イカの養殖はできていない。水族館で生きたイカを常時展示しているところは少ない。イカを水槽に入れると、半日もしないうちにポロリと死んでしまう。
ヤリイカ飼育成功の秘訣は水質にあった。ヤリイカは清水を好む。
イカ、とくにスルメイカは神経質というか慎重であり、人が与えるものを簡単には受けとってくれない。しかも、エサが生きた状態でないと受けとってくれない。
イカは仲間のお互いの行動を実によく見ている。
スルメイカは、今もって全生涯を水槽内で飼育することができない。
イカの眼はヒトと構造がよく似たレンズ眼だ。コウイカの視力は0.6ほど。
イカは、体の色もパターンも瞬間的に変えることができる。
群れをつくるアオリイカには順位制が認められる。繁殖相手のメスをめぐり、また、エサをとるときにも順位が形成される。
イカは奥行きがあることが分かり、記憶力を持つ。
アオリイカを鐘の前に置くと、強い関心を示す。鐘に映っているアオリイカは自分だと認識している可能性がある。
イカは体色を変えてカモフラージュするが、それは貝殻という楯を捨てた代替戦略として、神経系を発達させ、高精度のレンズ眼をもち、高度な情報処理が可能な巨大脳を手に入れた。
うむむ、こうなると、イカの活きづくりも、ただ単に美味しいというだけでは食べられなくなりますよね。学者って、すごいです。
(2011年9月刊。1300円+税)
イカの心を探る
