著者 三木 成夫、 出版 中公新書
1983年に初版が出ている古典的な名著だというので読んでみました。
人間が生まれる前、母体でどんな生活をしているのか、その形や顔、そして機能はどうなっているのかを教えてくれる本です。
胎児は3ヶ月になると、一人前に舌なめずりをし、舌つづみを打ちはじめる。
胎児は羊水に漬かっているが、この羊水を思いきり飲み込む。来る日も来る日も、これを飲み続ける。こうして羊水は、胎児の食道から胃袋までくまなくひたし、腸の全長に及ぶ。さらに、肺の袋にまで液体は流れ込む。羊水呼吸は、半年にわたって、出産の日まで続く。出産のとき、この羊水は最初に勢いよく吸い込まれた空気に押されて、たちまち両肺の周辺部に散らばり、一種の無菌性肺真の状態となる。これは一ヶ月で血中に吸収される。
ニワトリの卵は21日で孵化する。ところが、温めはじめた4日目、正確には4日から5日にかけて、それは一つの危機を迎える。同じように、胎児の発生は決して一様ではない。途中、山あり、谷あり、ときには危険な時期もある。
40日を迎えた胎児の顔はもはやヒトと呼んでも差し支えない顔をしている。真正面を向いた二つの目玉と、大きな鼻づらがある。
60日目の胎児になると、巨大な大脳半球が目立つ。
人間が人間となっていく過程を明らかにしていく、この本を読むと、その神々しいまでの神秘さに沈黙せざるをえません。こうやって、この世に生まれてきたんだね、生きてて、良かったね、っていう感じです。
(2007年10月刊。700円+税)
胎児の世界
