著者 楡 周平、 出版 文芸春秋
東北の山奥から貧農の少年が上京してきます。就職した先でひどくこき使われます。何度もやめて田舎へ帰ろうと思うのですが、田舎には仕事がありません。また、帰りたくない暗い過去もあるのでした。やがて、ひょんなことから別人になりすましてしまうのです。
それが幸運の始まりでした。思わぬ土地代金が入り、勤めていた運送会社を独立して始めた運送業も大当たりです。お金が面白いように入ってきます。政治家から土地ころがしの口がかかって、大儲けもします。そして、金持ちの令嬢と結婚し、豪邸を手に入れます。
ところが、令嬢は成り上がり者とバカにして見向きもしません。そこから復讐が始まるのです。
いったい、少年のころの暗い過去とは何だったのか、復讐はどのようになされていくのか。いやはや、すごい作家の発想力です。それも情景描写がきちんと出来ているからこそ読ませます。
人生には常に光と影があることを考えさせてくれる本です。500ページもある力作長編でしたが、ぐいぐい本の世界、暗い、どうしようもないやるせなさのつきまとう世界ですが、そこへ引きずり込まれてしまうのでした。
(2009年2月刊。1714円+税)
骨の記憶
社会

