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人体、失敗の進化史

著者:遠藤秀紀、出版社:光文社新書
 人間の身体は失敗の連続だ、なんて言われると、かなりの違和感があります。むしろ、ありあわせの材料で、よくもこれだけ進化したものだと私なんぞは感心してしまいます。
 耳の歴史というと、設計変更の最たるもの、勘違いの中の勘違い、まったくその場しのぎで進化しているとさえいえる。耳小骨は爬虫類の頭のパーツ、それも顎の一部なのだ。
 初期の哺乳類は、上顎側にあった方形骨からキヌタ骨を、下顎の後端についていた関節骨からツチ骨をつくり上げてしまった。進化とは、かくも予測外のことを平気でやってのける。しかも、その結果は大成功で、できあがった耳は聴覚装置として2億年以上も支えている。
 オーストラリアにすむハリモグラは哺乳類にもかかわらず、卵をうむ。そして孵化した赤ん坊は、原始的な乳腺にかぶりついて育つ。この乳腺は、汗を分泌していた汗腺を改造したもの。
 ヒトの背骨は、まっすぐにはほど遠い。横から見ると、大きくS字を描くのが特徴である。このS字は、ヒトの重心の位置を決めるうえで、大切な役割を果たしている。
 ヒトは、まっすぐ立ったので、咽頭が重力の方向へ落ちこみ、咽頭の周辺領域に空洞がつくられた。この空洞をつかうと、筋肉の微妙な動きをもとに空気を震わせ、微細な声をつくりあげることができる。つまり、重力が90度傾いてくれたおかげで、言語を操るときに必須のヒト特有の発声装置をつくり出すことができた。声を出すために必要な音響機器が、直立二足歩行の副産物として生み出された。
 言語の中枢は左の脳に局在する。ヒトの脳は左側の方が右より大きい。右手をコントロールする左側の大脳の方が早く発達し、結果的に左が大きくなった。
 ヒトの身体がいかに精巧にできているか、その部品のつくりかたがよく分かる面白い本です。

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