法律相談センター検索 弁護士検索
2006年6月 の投稿

「無言館」ものがたり

カテゴリー:未分類

著者:窪島誠一郎、出版社:講談社
 五月の連休に熊本城内にある美術館に出かけ、「無言館」の絵画を鑑賞してきました。
 残念ながら、「無言館」そのものには、まだ行ったことがありません。「ちひろ美術館」など、信州方面にはたくさんの素晴らしい美術館があるようなので、ぜひ訪れてみたいと考えています。
 本のはじめにカラーグラビアで絵が紹介されています。伊沢洋の「家族」という絵があります。裕福な家族が一家団欒している情景が描かれています。描いた本人も登場しています。いかにも幸福そうな、落ち着いた雰囲気の絵です。ところが、絵にも登場している弟さんの解説によると、当時はこんな裕福な家庭ではなく、これはまったく兄の想像の産物だというのです。そうなんです。絵は期待をもって夢幻の境地が描かれることもあるわけです。それはともかく、たしかな技量です。これだけの画才をもつ人が、あたら戦病死してしまったというのは、本当にもったいないことです。
 自分の愛する妻や恋人の裸婦像もあります。いずれも、愛情たっぷりの表現です。筆のタッチにそれを感じることができます。「温室の前」というタイトルの絵はいかにも戦前らしい装いの若い女性が3人坐って話をしている情景が描かれています。麦わら帽をかぶり、白いワンピース姿の女性がいます。今もいそうではありますが、戦前のハイカラ女性という方がピンときます。
 「無言館」美術館は、1997年(平成9年)5月、長野県上田市郊外にオープンしました。第二次大戦で戦病死した画学生の作品と遺品が展示されています。美術学校に学ぶ画学生ですから、その腕前は確かなものです。戦没画学生は、たいてい20代です。画をみればみるほど、あたら才能を喪ってしまったことが、国家的な損失だと惜しまれてなりません。こんな話が紹介されています。
 画学生は戦場に行っても、とてもマジメだった。絵の勉強に一生懸命な画学生であればあるほど、戦場でもいちばん前線に立って戦った。絵筆をにぎって一心に絵を勉強していた情熱と同じように、だれよりも前に出て敵と戦った画学生が多かった。
 なんということでしょうか・・・。言葉に詰まります。
 絵を描きたい。絵を描きたいと叫びながら、ついに生きて帰って二度と絵筆をにぎることのできなかった画学生たち。父や母を愛し、兄弟姉妹を愛し、妻や恋人を愛し、そして祖国を愛しながら、聖戦という美名のものに戦場にかり出され、飢餓と流血の中で死んでいかねばならなかった・・・。みんな、20歳台、30歳台の若さだった。
 「無言館」をつくるとき、戦没画学生の作品を見世物にして金もうけをたくらんでいるのではないのか。それではあまりにも画学生たちが可哀想だ。そんなものは、国につくらせたらいいのだ。
 こんな非難の手紙も舞いこんできたそうです。私も、その気持ちも、まったく分からないじゃありません。しかし、待てよ、という気もします。国によって殺されたのは事実だとしても、国がそのことを自覚し、反省していないときに、国につくらせるのを待っていたら、いつまでたってもできっこない。そのうちに画学生の遺族の方まで死に絶えてしまう。そんなことでいいのか・・・。
 反対に、国のつくった美術館ができたとしても、画学生の遺族が国に作品を預ける気になるだろうか、だから、ぜひつくってほしいという手紙も来たそうです。私は、やはり、こちらにひかれます。
 著者は、戦没画学生の遺族をたずねて全国をまわりました。その反応はいろいろありました。でもでも、善意の資金も得て、美術館を開館することができました。
 やはり、平和っていいな、戦争って理不尽なものだな、つくづくそう思います。
 ゴールデンウィークに、いい絵画を見て、心が洗われました。ぜひ、長野に出かけよう。そう思ったものです。

米軍再編

カテゴリー:未分類

著者:江畑謙介、出版社:ビジネス社
 テレビでおなじみの軍事評論家による米軍再編の解説書です。なにしろアメリカの基地再編のために日本政府が3兆円も負担しようというのです。小泉純一郎の個人資産で3兆円を負担するというのなら、私も何も文句は言いません。でも、私たち国民の税金を3兆円もアメリカ軍にささげるというのですから、私は絶対に許せません。この4月からリハビリ期間は6ヶ月までと制限されてしまいました。ほとんど寝たきりの私の老母も、そのおかげで病院を追い出されてしまったのです。国民の医療・福祉予算の方はバッサリ削るのに、アメリカ軍のためには必要性に疑問があっても惜しげもなく巨額の税金をそそぎこむというのです。あきれるというより、怒りに全身が震えます。本当に身体がわなないてしまいます。政治って弱いものを救うためにあるっていうのは絵に描いたモチ、なんですか。とても黙ってはいられません。
 アメリカの国防予算は2004年度に4013億ドル。世界の軍事予算の総額8000億ドルの半分を占めることになる。アメリカは、2002年1月から、アメリカ本土の基地を整理統合する計画をすすめている。本土の基地には25%の余剰があるので、それを閉鎖・縮小して予算を削減しようというもの。
 日本は、イギリスと並んで、アメリカ軍の全世界展開を支えるもっとも重要な戦略展開拠点と位置づけられている。他には、グアム(太平洋)とデイエゴ・ガルシア(インド洋)のみ。
 日本は、戦略的に重要な位置にある。価値観が近く、政治的に安定し、高度の技術と経済力をもち、既に相当の規模でアメリカ軍基地のインフラが存在しているという条件をもっている。つまり、アメリカは日本を、アメリカ軍の全世界展開における、太平洋をこえた最重要前進拠点の一つと位置づけている。ですから、アメリカが日本の基地を手放すなんて、考えられもしないことなんです。
 基本的にはアメリカ軍のミサイル防衛システムは在日アメリカ軍基地と司令部を守るためのもの。日本にアメリカ軍部隊を置いていても、施設の維持経費はもとより、運用経費の多くまで日本が負担してくれるので、アメリカ軍の経費は他の国に置くよりずっと少なくてすんでいる。だから、無理してまで在日アメリカ軍部隊を削減する必要はない。
 横須賀港を出たすぐ前の海面につくられた艦船消磁施設は、海上自衛隊と共用ではあるが、西太平洋における唯一の施設だ。消磁施設は鋼鉄の艦船にたまる磁気を除去するためのもので、磁気感応機雷や魚雷に対する防護には書かせない施設である。これがないと、一定期間ごとに消磁施設のあるハワイやアメリカ本土に戻らなくてはならない。
 原子力空母を日本に配備するときの問題点は、横須賀に原子炉関係の修理・整備機能がないこと。
 アメリカ軍が硫黄島をつかいたがらないのは、厚木から1250キロも離れた洋上にあること。2時間もかかるし、途中で天候状態が悪化したときに引き返すかどうか難しい判断を迫られるから。三沢基地は冬の天候が悪くてダメ。年間で通算2週間も訓練できない。
 ラムズフェルド国防長官は、イラクのフセイン政権を倒せば、イラク国民は歓呼の声でアメリカ軍を迎え、イラク国家の再建において、アメリカ軍に積極的に協力してくれるはずだと、勝手に思いこんでいた。しかし、もちろん、現実はまったく違っています。
 アメリカ軍のシー・ベース構想は、海岸から46キロ(25海里)以上はなれた洋上より高速輸送手段で重装備を陸揚げし、兵員はヘリコプターやチルトローター型輸送機で内陸にある目標に対して攻撃をかけるというもの。1日1000トンの補給を要する。
 2005年4月時点で、ヨーロッパにいるアメリカ軍は6万2000人(うち3000人は予備兵力)。ヨーロッパにあるアメリカ軍施設は5ヶ国に236ヶ所。冷戦期のピークからいうと3分の1に減った。
 韓国にいるアメリカ軍は3万7500人。2008年までに、その3分の1。1万2500人が削減される計画だ。在韓アメリカ軍は、公式には一兵、一機も湾岸地域には派遣されていない。この10年間に、アメリカ軍も韓国軍も大きく近代化して能力が高まった。しかし、北朝鮮の軍隊は10年前と変わらない。こと通常戦力に関する限り、相対的に近代化されていない北朝鮮による軍事力による脅威は大きく減少した。
 キューバにあるアメリカ軍のグアンタナモ海軍基地については、1903年以来、アメリカが借用しているものなので、今も年間4000ドルの借地料を支払っている。
 世界中に我が物顔でのさばっているアメリカ軍のおかれている状況が概観できる本です。
 肥後菖蒲が咲きました。色は濃い赤紫で、なにやら高貴な気品を漂わせ、ふかふかのビロードの膚ざわりなので、つい触ってみたくなります。黄色のワンポイントカラーが混じっているので、人目を魅きつけ鮮やかさもあります。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.