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2006年6月 の投稿

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沢木耕太郎、出版社:新潮社
 エヴェレストに挑んだ登山家の本は何冊も読みましたが、この本もまた、すさまじい山との格闘記録です。凍傷にかかって、両手の指を全部失い、さらに鼻の頭まで欠けてしまった女性がいるなんて、とても信じられません。なぜ、そうまでして自然の脅威とたたかいながら山の頂上をめざすのでしょうか・・・。
 ヒマラヤにあるギャチュンカンという山をのぼりつめる話です。ギャチュンカンとは、百の谷が集まるところにある雪山の意。8000メートルにわずか48メートル足りない7952メートルの高さ。
 極地法あるいは包囲法と呼ばれる登り方と、アルパイン・スタイルで登るやり方の2つがある。アルパイン・スタイルでは、ベースキャンプを出たら他の助けを借りないのが前提。シェルパや他の隊員による前進キャンプの設営やルート工作などの援助を一切受けない。固定されたロープに頼ることもしない。
 山野井泰史と妻妙子が登山する費用は総額150万円。スポンサーなしの自前。
 高度になれるため、山野井は鹿屋体育大学で低酸素室に入って訓練した。スポーツ選手の高地トレーニング用につくられた施設で、密閉された空間に4000メートル、5000メートル、6000メートルといった高さと同じ希薄な空気をつくり出している。そこで昼夜を過ごし、自転車をこぎ、ランニング・マシーンの上を走る。
 アルパイン・スタイルの登山は、できるかぎりの軽量化をはかる。たとえ100グラムでも削れるのなら削ってしまう。それでも、2人の荷物は合計で300キロになった。これは他に比べると極端に少ない。
 山で着る下着は化学繊維のものにする。綿だと汗を吸って水分を閉じこめてしまう。フリースなどの化学繊維のものはできるだけ新品がいい。そうでないときには洗っておく必要がある。清潔にするためというより、古くなったり汚れたりして繊維がつぶれたり目が詰まって保温力が格段に落ちてしまうから。そうなんですかー・・・。
 高地では、血液中の酸素が少なくなるため、赤血球が増える。赤血球の増加は、血液を濃くし、流れにくくする。それを防ぐには、水分を十分にとって新陳代謝をよくしておかなくてはいけない。登りはじめたら、どれだけ水分をとれるか分からないので、飲めるときに飲んでおかなければならない。やっぱり、生命の水なんですね。
 いよいよ登りはじめるときには、ひとり5キロ未満の荷物とする。食物の重量は850グラム。クライミング用のロープは50メートルのもの1本だけ。幅7ミリのものにするか、8ミリのものにするか迷う。少しでも軽い方がよい。しかし、丈夫なことも必要だ。ところが7ミリのロープにしたところ、岩の角で切れそうになってしまった・・・。このロープ1本にまさに命がかかっているのです。
 山の上では、なぜかコーヒーではなく、だれもが紅茶を飲みます。どうしてなのか、ぜひ教えてください。この本には、珍しく熱くて濃いココアを飲む場面が出てきます。紅茶もココアも、私の大好物です。
 寒さに弱い私には、まったく考えられもしない苦闘の連続です。たいしたものなんですが・・・。オオッ、ブルブル・・・。

刑事の墓場

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著者:首藤瓜於、出版社:講談社
 知人は警察官の妻です。団塊世代ですから、月給は50万円ほど。今度、夫が大都市周辺の署から田圃の真ん中にある田舎の署に移動したところ、なんと9万円も給料がダウンしたといって嘆くのです。ええーっ、そんなはずはあるまいに・・・。その理由(わけ)を訊くと、やはり例の報償費の分け前が大幅ダウンした影響なのでした。大きな署では人数が多いだけに報償費も巨費にのぼるのでしょう。そこは盆・暮れの雑踏警備で有名なところですから、ますます大きいようです。田舎の署には平和で事件も少ないだけに報償費を捻出する口実もないのです。まあ、それにしても、ちょっと署を異動しただけで月9万円も給料がダウンするなんて・・・、やっぱり異常な世界です。
 この小説は、挫折したエリート刑事が赴任した署は、刑事の墓場と呼ばれるところだったということから始まります。
 外勤の制服警官など皆同じようなものだ。上からあれこれ命令されることに慣れ切っていて、自分の頭で物事を判断することができない。
 知能犯係の刑事は、情報収集と称して新聞や週刊誌の記事を読んでいる時間が少なくないし、体調が優れずに外回りをしたくないときなど、一日中パソコンに向かっていても、捜査データを入力しているところだ、と言えば言い訳が立つ。
 所轄署勤務の警察官の人事権を握っているのは、その署の署長だ。毎年、定期異動の時期になると、県内の所轄署の署長が署内の対象者の異動方針を県警本部警務部に伝える。警務部の人事課は、各署長から提出された要望を勘案しながら、階級と部署に見合った役職にはめこんでいく。組織全体の整合性を保ちつつ、どこからも不平が出ないようにおさめるのは手間がかかるだけでなく、神経を消耗する作業だ。しかし、県警本部の人事課の仕事は、あくまで調整であり、それ以上ではない。
 こんな警察署が本当にあるのだろうか・・・。いまだかつて捜査本部が置かれたことのないような署。署員は、どこか別の署で問題を起こして流されてきた人間ばっかり・・・。でも、その連中の内部結束は固い。
 推理小説なので、最後の顛末は書けません。ええーっ、という感じだったとだけ書いておきます。そんな馬鹿な・・・。ちょっと変わった警察小説です。
 梅雨に入り、下の田圃に水が張られ田植えの準備がすすんでいます。去年はなぜか田植えされず寂しく思っていましたが、今年は大丈夫のようです。この田圃のおかげで、わが家は夏にもクーラーなしで過ごせます。水面を吹いてくる風が涼しいのです。夜になるとカエルの大合唱です。道路を大きな蛙がノッシノッシと歩いていて、車をあわてて停めました。自然との共存にも気をつかいます。

やむをえぬ事情により・・・

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著者:フレッド・フレンドリー、出版社:早川書房
 映画「グッドナイト&グッドラック」のもとになったエド・マローの相棒だったプロデューサーの回想録です。この本では、マッカーシー放送以外のCBSテレビの取り組みも紹介されています。
 マローは第二次大戦中から活躍していました。真珠湾が攻撃されたとき、ルーズヴェルト大統領と一緒にいた唯一の報道人だったし、チャーチルとはロンドンの地下深くの防空壕にある首相の戦闘司令所で同席していた。
 マッカーシー旋風が吹き荒れていた1954年の冬ころ、放送業界は恐れおののいており、マッカーシーの攻撃演説に呼応して国策がうち出されることがしばしばだった。
 マッカーシーによってディーン・アチソン(のちの国務長官)は「赤いディーン」というレッテルを貼られたし、マーシャル元帥も反逆者扱いを受けた。
 マローはテレビで次のように述べました。
 ウィスコンシン州出身の新進上院議員は、調査と迫害との一線を何度も踏みこえた。彼が主として成しとげたことは、大衆の心に共産主義の内的脅威と、外的脅威についての混同を生じさせたことでした。我々は反対意見と虚実とを混同してはいけません。告発と証言とは違い、確信は証拠と正当な法の手続によって得られるということを常に忘れてはいけません。他人を恐れて歩くことはやめましょう。マッカーシー上院議員のやり方に反対の者も、それを認める者も、沈黙を守っているときではありません。彼がこの恐怖を生み出したのではありません。彼はただ、比較的上手に、それを利用しただけです。
 そうですよね。いま同じように、5年間も続いて日本をすっかりダメにしてしまった小泉純一郎の政治手法に反対する人も、それを認める人も、声をあげてその当否を議論すべきなのではないでしょうか。マスコミで真正面からの議論があまりにも少ないことに、私は残念でなりません。
 エド・マローのこの放送のあと、トルーマン元大統領夫人、グルーチョ・マルクス(コメディアン)、アインシュタインも賛成の意を表明しました。
 映画にも出ていましたが、この番組のスポンサーだったアルコアは、エド・マローを信頼し、スポンサーをおりることはありませんでした。アイゼンハワー大統領も記者会見のなかで、マローを私の友人だとわざわざ言って、讃辞を送ったのです。もちろん、このことは夕刊の見出しを飾りました。
 ニュース解説で重要なのは、優れた判断力と確かな抑制力をもっていると思われる真面目なジャーナリストを信頼することである。そのとおりだと私も思います。
 CBSはボストン警察が賭博場と密接な関係にあることを暴露するドキュメンタリー番組をつくって放映しました。この顛末も紹介されています。日本では、この種の報道がまったくないのではありませんか・・・。警察の捜査費ごまかしの追及もあまりに及び腰だったと思います。独走していた北海道新聞が警察に逆襲されたとき、他のマスコミは見捨ててしまった気がしてなりません(もし、違っていたら訂正します。ご一報下さい)。
 グレシャムの法則。悪貨は良貨を駆逐する。この法則はテレビ編成ばかりでなく、その視聴者にもあてはまる。今日の放送ジャーナリズムにおける編集者、プロジューサー、記者は興奮したり、とことんまでやりとげるということがほとんどなくなっている。
 短期的には経済的利益を生むつまらない番組が電波を満たしていくにつれて、嗜好がつくり出されるのである。ちょうどう広告が、食事や喫煙やドライブに影響を与えるように、これによって国民の嗜好がつくられる。今のテレビ編成についての作る側の弁明は、我々は人々が望んでいるものを与えているのだ、というもの。しかし、現実に起こっているのは、洗脳された視聴者たちが自分たちの好みのものを選び、その一方、もっと深遠なものを好む性向をもった人々は視聴者たることをやめてしまうといった事態である。
 そうなんです。私もテレビをほとんど見なくなってから30年ほどになりますが、ちっとも困っていません。困るのは、今どんな広告をやっているかを知らないことだけです。
 ある日、ウォルター・リップマンは、今日のテレビの窮状を次のように言い表しました。
 要するに、この国に三台の巨大な印刷機しかない、というのと同じこと。これにしても、たったの三台だ。われわれは、これをどうしようというのか、どう利用しようというのか、しかし、この三台の印刷機は、そのほとんどの時間を宣伝物の印刷についやしており、そのほか漫画本を印刷している。なるほど言い得て妙ですね。お互い、気をつけましょう。

脳は眠らない

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著者:アンドレア・ロック、出版社:ランダムハウス講談社
 幸いなことに私はすぐに眠れます。いつもは夜12時に寝て、朝7時に起きます。目覚ましはシャンソンです。しばらくフランス語をじっと聞きとるのです。といっても、朝4時半とか5時ころに、トイレに行くことが多くなりました。これも加齢現象なのでしょう。それでも、そのあと布団に入ると、しばらく眠ることができます。出張してホテルに泊まるときには、夜11時に寝て、朝6時に起きるようにしています。その方が体調に良いからです。
 ところが、よる眠れないことがたまにあるのです。なぜだろう、と考えると、あっ、分かった・・・。そうなんです。夜7時すぎにコーヒー、紅茶そして日本茶を飲んだら、目が冴えてしまって眠れないのです。夜にコーヒーをガブガブ飲んでも平気な家人にいつも気のせいだと笑われていますが、こればかりはどうしようもない事実なのです。ですから、私は、夜7時すぎにはカフェインのはいったものは飲みません。椎茸酒その他のリキュールと水を飲んでいます。数年前から、夜にビールを飲むことはなくなりました。身体が欲しがりません。外でのビールも、今ではコップ1杯も飲めば十分です。もっとも、これは肥満を気にしているせいもあるのですが・・・。
 夢の定義は難しい。目がさめてから語ることのできる睡眠中の精神的な体験を夢と呼ぶ。
 人が眠っているあいだも、脳は驚くほど活発に働いている。眼球が激しく動いているときに、被験者を起こすと、ほぼ例外なくはっきりと夢を覚えている。
 健康な大人の睡眠は5つの段階がある。入眠前のリラックスした状態で、脳は騒音など周囲の影響をしだいに締め出していき、やがて規則正しいリズムの脳波、アルファ波が見られるようになる。アルファ波は、無心で穏やかな気持ちになったときにあらわれるパターンだ。アルファ波が出ると、続いて睡眠の第一段階に入る。いわゆる寝入りばなで、この段階では入眠時幻覚と呼ばれる、短い夢のような視覚的イメージが浮かぶ。たいがいは、その日の体験に関連したもの。続いて、睡眠の第二段階、10〜30分ほど続く浅い眠りの段階に入る。そこから脳波は、波長の長いゆっくりとしたデルタ波になっていく。除波睡眠と呼ばれる。第三、第四段階の深い眠りに入った。寝言は、睡眠中どの段階でも言うことがあるが、夢遊病の人が歩いたりするのは、第三、第四の深い眠りの段階だけだ。深い眠りが15〜30分続くと、再び第三、第二と段階を上がり、最初のレム睡眠に戻る。筋肉は完全に弛緩(しかん)しているが、眼球は動き、手足もぴくぴくと動くことがある。ところが、生理的には非常に興奮した状態にあり、呼吸は乱れ、心拍数は増え、男女とも性器が膨張する。就寝から最初のレム睡眠に入るまで、50〜70分ほどかかり、その後はおよそ90分ごとにレム睡眠がくり返される。合計すると、大人では一晩の睡眠の四分の1がレム睡眠で、さらに4分の1が深い眠り、残りが第二段階の浅い眠りである。
 ほぼすべての夢が視覚的なイメージをともない、聴覚的な要素の入る夢は50%、手触りや気配といった要素をふくむ夢は15%足らずで、味や臭いつきの夢はめったにない。そう言われたら、そうですね・・・。
 レム睡眠は、生存のために必要な行動のイメージ練習に役立っている。
 夢と空想は違う。子どもたちの空想では、いつでも自分が主人公だ。ところが、夢の中では、しばしば攻撃を受ける犠牲者となり、友好関係であっても受け身の参加者になる。子どもたちは、夢のなかではふだんの自分を思い浮かべる。しかし、空想のなかでは、なりたい自分を想像する。なるほど、そうなんですか・・・。
 睡眠の役割の一つは省エネ。眠らなければ、体温調節機能を維持できない。だが、夢を見ているときは、脳は覚醒時以上にエネルギーをつかい、体は麻痺している。そのため、レム睡眠中の哺乳類は天敵に対して、まったく無防備だ。
 人間の胎児の脳は、ほとんど一日中、レム睡眠の状態にある。新生児は1日16時間以上眠るが、その半分がレム睡眠。レム睡眠は、神経システムの発達を促す。
 新生児が眠りながらにっこり微笑むとき、神経回路を接続する作業が行われている。新生児は、成長してから役立つ対人関係のスキルをレム睡眠中に練習している。人間でも他の動物でも、レム睡眠中に、脳の配線工事が行われている。
 私たちの見る夢は、より下等な動物から受け継がれたメカニズムであり、遺伝子に書きこまれた生存のためのプログラムと、日々の体験から得た重要な情報が、レム睡眠中に脳のなかで処理され、統合される。夢では、言葉よりも感覚、とくに視覚的なイメージが大きな比重を占める。だから、人間の夢のルーツは、初期の哺乳類にあると考えられる。
 レム睡眠のたびにペニスは自動的に勃起する。その感覚情報が脳に伝わり、脳はそれを説明するためにエロティックな筋書きをつくる。生理的な反応のほうが先で、脳はそれにあわせた夢を紡ぎだしている。そうだったんですか・・・。
 大人の夢には、歩く、友人と会話する、セックスするといった行動が現実の生活と同じで、頻繁に出てくる。ところが、読む、書く、計算するという行為は、夢に現れない。こうした活動は人類の歴史において比較的に新しいからだ。夢のシナリオの多くは有史以前の時代によくあった脅威を再現したものと考えられる。
 夢のなかで抱く感情の3分の1はネガティブなもの。夢ではポジティブな感情はあまり抱かず、恐怖を感じることが覚醒時より際だって多い。
 睡眠中に脳が果たす重要な役割には、昼間抱いた感情、とりわけストレスとなる感情や自信喪失につながる感情を処理することがある。朝、気持ちよくめざめて、新しい一日を始めるには、ネガティブな感情を夜のうちに処理しておく必要がある。
 こうなると、夢は私たちが生きていくうえで、本当に大切な役割を担っているということになります。
 睡眠中は、新しい記憶を取りこむには最適の時間帯だ。脳は日中の雑多な仕事、たとえば自動車にひかれないように注意といったことから解放されている。加えて、化学物質のバランスなど、睡眠中の脳の生理的な状態が記憶の整理と強化にもってこい。
 むずかしい楽曲をマスターするには眠るのが一番。まず一度練習する。2日ほどたってもう一度やってみると、そのあいだに練習をまったくしていなくても、突然、弾けるようになる。新しいスポーツなり楽曲なりを習得するとき、練習効果を最大にするには、少なくとも初日の晩は起きる前の第二段階の睡眠をとりそこねないよう、たっぷり睡眠をとることだ。
 人は意識があるから、夢を見る。夢の大切さがよく分かる本です。

市長、お覚悟召されい

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著者:ポンポン山ゴルフ場買収疑惑追及市民の会、出版社:かもがわ出版
 住民訴訟で元市長に47億円を支払えという判決を最高裁で確定させた京都市民の素晴らしいたたかいを紹介しています。市長個人に47億円の賠償を命じても、とても現実的ではないでしょう。しかし、一罰百戒の大きな効果はあります。そして、市長の無法を許した京都市議会の多数派の議員についても厳しい審判が下ったと思われます。
 ところが、この本を読むと、実は、さらにまだまだ奥深い謎があって、それは未解明のままだというのです。何のことか・・・。なんと京都市が支払った47億円がどこに消えたのかが分からないというのです。ええーっ・・・と、のけぞってしまいました。
 どうやら金丸信に30億円、そして小泉純一郎の政争で負けてしまった野中広務に、それぞれ消えてしまったようなのです。うむむ、日本の闇は底深いものがある。改めて、そのことを痛感させられました。
 京都と大阪の境に位置する里山にゴルフ場建設計画がもちあがったのは1990年1月のこと。それに反対する市民運動が起き、ポンポン山ゴルフ場をつくることに反対する市民は駅頭でビラまきをした。一人一人に声をかけて配ります。
 「読んでくれはりますか。このビラ一枚5円かかっているんです」
 アキ瓶1本を酒屋に運んでもらえるのが5円。苦労してつくったビラを駅のゴミ箱に捨てられてはイヤなのです。その思いはしっかり京都市民に伝わっていきました。そして、その甲斐あって、ゴルフ場建設計画はつぶれてしまったのです。京都市は建設不許可決定を出しました。ところが、京都市当局は、「企業の存続を危うくすることにもつながりかねない」として、47億円もの高値で買収することにしたのです。当初は反対していた京都市議会もある日、一転して共産党を除いて同意してしまいました。なぜか・・・。
 共産党の市会議員が市議会で市長を追及したときのセリフが、この本のタイトルになっています。
 市長、あなたの答弁を聞いておりますと、蟻地獄の蟻がもがけばもがくほど深みにはまっていく、そういう姿を連想します。・・・市長、お覚悟召されい。
 京都市は、その企業が20億円で買ったのに、それより27億円も高い、47億円の補助金を支払ったというわけです。信じられないデタラメさです。それを自民党も民主党も共産党を除くオール与党が承認したというのですから、開いた口がふさがりません。なんのための議会なのでしょうか・・・。
 澤野順産・不動産鑑定士(横浜)の評価によると、14億円にもならないというのです。この件で、京都選出の代議士に5000万円、市議に300万円のお金が流れたというタレコミもあったそうです。さもありなんと思います。
 京都市と企業側で調停がありました。この企業側の代理人となった弁護士は金丸信の選挙区である山梨県の弁護士でした。うむむ、なんだか臭ってくるぞ・・・。そして、京都市が47億円を振りこんで支払った先の企業は、1回も法人所得税の申告をしないまま解散してしまいました。
 京都市が47億円を振り込んだ日は、1992年7月8日。これは参院選の公示日。受けとった企業が解散したのは、1993年2月のこと。いったい、47億円もの税金はどこに消えたのか。
 1993年3月6日、金丸信の自宅などが東京地検特捜部によって捜索された。このとき、債券50億円をはじめ、現金をふくめて60億円が押収されている。では、このなかに入ってしまったのでしょうか・・・。
 京都市長だった田辺氏は2002年に死亡。ところが、その助役だった佐藤達三氏は、その後、福岡県の部長に転職しているというのです。許せませんよね。
 私も、ずっと住民訴訟にかかわっていますが、裁判所の冷たい壁を乗りこえることができないで、本当に残念です。行政の過ちを正す使命を忘れた裁判官があまりに多いという気がしてなりません。生活保護の不正受給で何万円かをごまかしたりすると、すぐに逮捕されたりするのに、何十億円という巨額のお金が消えてしまっても、誰も、何の責任を問われないというのです。ほんとに、おかしな話です。

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