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2006年6月 の投稿

旭山動物園・革命

カテゴリー:未分類

著者:小菅正夫、出版社:角川ワンテーマ新書
 5月の晴れた日曜日に、はるばる旭山動物園まで出かけて見物してきました。これだけ話題になると、やっぱり見たいものですよね。福岡から東京経由で旭川空港に降りる手もありますが、私は札幌からJRで行きました。朝8時の特急に乗って、バスをつかって午前10時前に着きました。入場料こみのJRセット券です。山の斜面にある広々とした動物園で、観光バスが続々やってきていました。
 予定時間が2時間ほどしかありませんでしたので、園内マップを片手に見落としのないよう、話題の動物たちを急いで見物しました。まあ、そんなに慌てることはありませんでしたけどね。
 残念なことに、ペンギンの散歩は見ることができませんでした。あれは冬だけのイベントなんですね。円柱トンネルを目の前で泳いで通り抜けていくアザラシは、幸い2回も見ることができました。行っても全然見れない人もいるそうです。気まぐれというか、彼らの気のむくままなので、これは仕方ありませんね。ホッキョクグマのダイビングは迫力がありました。先祖はヒグマだそうですね。ヒグマのなかから、海に住んでみようと思った連中が出てきて、ホッキョクグマになったのです。デッカイ身体ですが、水中での身のこなしがあまりに軽々としていたのに目を見開きました。
 オランウータンにも面会できました。オスの顔の大きさは迫力があります。顔の周囲がエラのように広がっていることを知りました。ここでは、残念ながら高いところの綱渡りは見れませんでした。
 子どもたちが小さいときには、私は何回も動物園に連れていってやりました。大人にとっても楽しいところなんですが、さすがに一人で行く気にはなりません。このところ、自然と動物園から足が遠のいていました。でも、旭山動物園ほど有名になると、おじさん、おばさんたちが観光バスで続々やって来るのですね。子どもがいなくても平気です。若いカップルも大勢きていました。
 虎のオリはタテが6ミリ感覚、横は15ミリ感覚。人間の目は、横にたくさん仕切があると、わずらわしく感じる。ところが、タテの間仕切りは少しくらい密であってもいいという。だから、こんな間仕切りになっているそうなんです。
 猛獣たちが人間の都合で狭いオリに閉じこめられているのは可哀想ですが、ゴメンネといいながら、いつも動物園を楽しんでいます。
 著者は私と同じ団塊世代です。動物園をよみがえらせようとがんばっている姿に同世代として励みになります。

鴉(からす)よ、闇へ翔べ

カテゴリー:未分類

著者:ケン・フォレット、出版社:小学館文庫
 第二次大戦中、秘密任務を帯びた50人のイギリス女性がイギリス軍(SOE)によってナチス・ドイツ占領下のフランスへ空路送りこまれました。そのうち36人は生き延びましたが、残る14人は命を落としました。この小説は、その実話にもとづいています。 ときはノルマンディー上陸作戦がはじまる寸前のことです。そうです。映画「史上最大の作戦」のことです。ナチス・ドイツの通信施設が有効に機能していると、ことは厄介です。上陸作戦を台無しにしてしまう危険すらあります。フランス現地にいるレジスタンス勢力と力をあわせて、この通信施設を叩きつぶしておきたい。イギリス軍は、そう考えました。この通信施設を外からレジスタンスの武装勢力に襲わせたところ、失敗してしまいました。あとは、清掃作業員に化けて内部に侵入して爆破するしかありません。そこで、女性ばかりの特攻隊が組織されます。そのメンバーの顔ぶれがすごいのです。殺人罪で服役中の女囚を刑務所から連れ出します。太った爆破専門家もいます。きわめつきは、女装したホモの男性です。
 ドイツ側も、ロンメル元帥の腕ききの部下を派遣して通信施設を守ろうとします。もちろん、ゲシュタポもいます。両者は反目しあいながらも共同作戦をすすめていきます。
 ドイツ側に捕まったレジスタンスは簡単に白状させられていきます。そうですよね。私なんか、いの一番にイチコロでしょうね。ちょっとした拷問でも、とても耐える自信なんて、ありません。あることないことペラペラしゃべってしまうでしょうね。でも、白状したところで、どうせ殺されてしまうのが捕虜の悲しい運命です。あー、戦争なんて、嫌いだ・・・。平和が、やっぱり一番です。私が小泉純一郎の、あのノッペラした顔が嫌いなのは、脳天気な顔で私たち日本人を戦争に引きずりこもうとしているからなんです。
 イギリスの女性が次々にフランスへ飛び立っていったのは、彼女らの愛する男性たちがどんどん死んでいっているのに、自分たちだけ安閑としているわけにはいかないということでした。戦争で身近な人が殺されると、きっとそういう気分になるのでしょうね。イラクで毎日のように自爆テロが起きているのを知るにつけ、そう思います。
 文庫本で800頁近い厚さですが、映画を見ているようで、スラスラと読めてしまいました。イギリス映画「シャーロット・グレイ」を思い出させる本でした。

脳のなかの倫理

カテゴリー:未分類

著者:マイケル・ガザニガ、出版社:紀伊国屋書店
 普通の性交による場合でも、精子と卵子が合体してできた胚の6割から8割くらいは自然に流産している。ひぇーっ、そうだったんですか・・・。
 加齢とともに脳は「やせる」。20歳から90歳までのあいだに脳の容積は5〜10%も少なくなる。なるほど、そうなんでしょうね・・・。
 脳の回転が鈍くなるのは、ミエリンが失われることによる。ミエリンに覆われたニューロンは、いわば高速イーサネットに接続したコンピューターで、ミエリンのないニューロンは普通の電話回線でインターネットにつないでいるようなもの。
 結婚して家族を持つことには人を社会生活に適合させるという効果がある。その輪からのけ者にされた男性は、欲求不満のはけ口を求めて暴力的な行動に向かう恐れがある。男女比がアンバランスになると、社会が攻撃的になってしまう。うんうん、なるほど。
 リタリンという薬を飲むと、SAT(大学進学適正試験)の点数が100点以上アップする。ふむふむ、そうなのか、知らなかったぞ、これは・・・。
 脳は、本人が気づく前に、いくつもの決断をしている。たしかに、そう思います・・・。
 ポリグラフをつかったウソ発見テストには科学的な妥当性がないに等しい。
 脳指紋というのがあるそうです。これは、人種も年齢も性別も、母国語が何かも関係なく、英語の知識も必要ない。ただ、画像に見覚えがあるかないかに応じて生じる脳の活動の記録のみ。この脳指紋法には、思想の自由の侵害にあたるという批判もあるそうです。
 人間の脳は、過去の記憶が間違うようにできている。私たちは、入ってくる情報をことごとく自分に都合よく解釈している。
 記憶が消えやすいおかげで、脳は些細な情報でパンクせずに、重要な情報だけを残しておける。そうですよね、なんでもかんでも覚えていたら、気が狂ってしまいますよね。
 記憶は私たちをだます。というのも本当は顔の一部しか見ていなくても、脳が残りの部分をひとりでに充填するか、想像力で補うかして、顔全体のイメージを完成してしまうから。そうですか・・・、つくりあげるのですね。
 信念を生み出すのは左脳。左脳は、世界から受けとった情報に何らかの物語を付与する仕事をしている。女性よりも男性の方が自説を頑なに手放さない傾向がある。
 人間の脳が、このように科学的に分析されていくと、なんだか心の奥底まで見透かされてしまうようで、怖い気もしますね。

サフィア

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著者:ヨハンナ・アワド・ガイスラー、出版社:清流出版
 2005年12月のイラク国民議会の選挙で初議席を占めたイラク女性議員の半生を描いた本です。オビにある文章を紹介します。
 イラクの若い女性政治家、サフィアは父がシーア派のベニ・タミム族を率いる有力な族長で、サダム・フセインの政敵だった。サダムの影響力が強くなり、サフィアが4歳のとき、レバノンに一家で亡命を余儀なくされた。その後も、ヨルダン、サウジアラビアを転々とし、ついに父はサダムの命令で暗殺されてしまった。父の遺志を継ぐべくサフィアは、混乱するバグダッドにいち早く帰還した。2004年9月、エジプト大使に指名され、エジプト2005年12月の選挙で念願の議席を得た。
 いま、サフィアは40歳。サフィアとは、アラビア語で、清純、を意味する。
 サダム・フセインは婚外子の烙印を押されていたが、出身地であるティクリート出身のスンニ派を軍隊と警察の主要なポストにつかせ、彼が目をかけた者も同じことをして、軍と治安機関の中枢に強大なティクリート一派が育った。ティクリート派はバース党の中核となった。そのおかげでサダム・フセインは彗星のように出世できた。
 サダム・フセインの策略は、いつも、ある部族の主要人物を重要な地位につかせたり、贈り物をしたりして喜ばせ、それと同時に脅迫して、その部族の支持をとりつける、飴と鞭のやり方だった。サダム・フセインは、部族の長の選挙に介入し、誰を最高位の族長にするか指図した。主に二番手か三番手にいる者を上に持ち上げた。逆らうのは自殺行為だった。この方法で介入された部族は、その忠誠関係も権力構造も崩壊した。競争が始まって、一族の団結が崩れたからだ。
 ソ連はサダム・フセインのために巨大な要塞を建てた。そこに、サダム・フセインは政敵を投獄し、拷問した。ドイツの企業は、サダム・フセインの兵器庫を建設した。ロシアとフランスは、イラク軍の軍備拡張をめぐって競争した。アメリカもイラクの高度武装化を強力に支援した。CIAは、イラン革命政府に対する戦争のための情報をサダム・フセインに流した。
 サフィアは女性なので族長にはなれない。しかし、もちろんベニ・タミム族からの支持は得ていた。
 イラク国民の60%が女性なのに、イラクの支配機構50のポストのうち、女性に与えられたのはわずか4席にすぎなかった。サフィアがポストを争ってなれなかった役職についた女性は数週間後に殺され、その後を引き継いだ女性も息子を爆殺されてしまった。
 サフィアはクルド人の男性と結婚した。そして、サダム・フセインがアメリカ軍の侵攻によって倒されたあと、アメリカ軍の輸送機に乗ってバグダッドに帰っていきました。
 イラクの族長クラスの女性の生きざまとパワフルな活動が伝わってくる本です。
 ただし、サフィアは宮殿育ちの女性ですから、主としてイラク上流社会の人々の生活が紹介されており、庶民のレベルの目線には乏しい気がします。

脱税、許すまじ

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著者:渡辺房男、出版社:NHK出版
 タイトルだけみると、国税当局サイドの本かと思ってしまいますが、読んでみると必ずしもそういうものではないことが分かります。いったい税金は何に使われているのか、何のために増税がなされてきたのか、史実によって具体的に明らかにしているのです。
 それはともかく、この本には日本で税務署が誕生するまでの情景がよく描かれています。NHKディレクターをやっていたという著者の筆力には脱帽です。
 明治20年(1887年)3月19日。所得税法が交付され、7月1日から施行された。国民の反発を抑えるために、官の介入を可能な限り避けるべく、申告納税制度を採用した。必要経費を控除した所得金額が300円以上の富裕層に限定した。彼らなら所得をごまかさないだろうと予測した。所得税調査委員会がもうけられ、そこには質問、調査権が与えられた、しかし、一般の職員には認められなかった。そして、富裕層は正直ではなかった。
 明治25年(1892年)1月、2回目の衆議院選挙が実施された。当時は制限選挙であり、投票できるのは地租や所得税など直接国税15円以上の納税者のみ。つまり、年収1000円以上の人々ということ。投票は記名押印が義務となっていて、誰が誰に投票したか、すぐに分かる仕組みだ。
 明治29年(1896年)11月1日、全国各地に504の税務署が設置された。
 明治11年以来、地租の税率は地価の2.5%に固定されたままだった。明治政府はなんとかしてこれを引き上げたかった。日清戦争後しばらくは好況だったが、その後は景気も低迷していたため、租税の5割を占める地租に手をつけるしかない。ところが、有権者の大半が地主層なため、地租値上げ案は帝国議会で何度も否決された。それが原因で、松方正義、伊藤博文、大隈重信という三内閣が短期間のうちに倒れてしまった。
 明治32年、所得税法が改正され、税務署員に所得税の課税に関する調査権と質問権が与えられた。所得調査委員会は単なる諮問機関に格下げとなった。
 問題は税金のつかいみち。公平だろうが、不公平だろうが、税金は国家に吸い上げられるもの。増税はすべて軍艦や大砲のためのお金だった。これからも戦争のための増税が続くだろう。
 これは登場人物に語らせたセリフです。まさしく、そのとおりになりました。でも、今、小泉純一郎のもとで同じことがすすんでいますよね。歴史はくり返す、です。
 当時の選挙は普通選挙ではありません。有権者はわずか96万人。日本全国の成年男子の8%のみ。92%の貧乏人はカヤの外におかれていました。
 明治政府は朝鮮支配のために海軍の増強を図った。明治15年から、酒税とタバコ税を引き上げ、売約印紙税、証券印税、菓子税を創設し、しょうゆ税を復活させた。これらが、2664万円の海軍増強8ヶ年計画の財源となった。明治20年に新設された所得税も中国(清)との戦争にそなえた海軍拡張策のためのものだった。明治33年の中国での義和団事件の勃発で、酒税・砂糖消費税などの間接税を増やしていった。
 主人公は税務署の直税課長という職にあったエリートコースの道を歩んでいたところ、税制の矛盾に気づき、ついには一転して平民新聞の編集補助の仕事に就くようになるのです。
 小説としても大変面白く、税務署誕生秘話を手にとるように知ることができました。大牟田の永尾廣久弁護士の書いた「税務署なんか怖くない」(花伝社)も面白い本でしたよ。パート?、パート?あわせて1万2000部売れたそうです。まだ在庫がありますので、ぜひ注文してやってください。

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