著者:アナ・ハイルマン、出版社:東洋書林
アウシュビッツに強制収容されながら生き抜いた、当時14歳のユダヤ少女アナの物語です。アウシュビッツが工場群を併設した施設であったことがよく分かります。
アナ・ハイルマンは、弾薬工場で働いていたため、死を免れたのです。でも、姉は、弾薬工場で扱っていたその火薬をひそかに外へ持ち出し、アウシュビッツ収容所内の抵抗組織に渡し、そのことが発覚し、他の3人の若い女性とともに1945年1月5日、全収容者の前で絞首刑に処せられました。持ち出された火薬は、1944年10月のアウシュビッツ内の暴動(蜂起)につかわれ、死体焼却場のひとつが爆破されました。いずれ自分たちは死ぬと分かっていたので、どうせ死ぬのなら、何らかの意味ある死を選びたいという意思にもとづく行動でした。
著者はポーランドのワルシャワに生まれ育ちました。ユダヤ人といっても正統派というより同化ユダヤ人として生きていた家庭です。平穏な中流階級の生活を過ごしていました。
三人姉妹の末っ子として、いくらかの波風がたちながらも平和な毎日の生活でした。その淡々とした生活描写が心をうちます。それが、ナチスドイツにポーランドが占領されて、一変するのです。ワルシャワにユダヤ人のゲットーがつくられます。両親はマイダネク強制収容所に送られ、直後に殺害されました。
1943年9月から1945年5月まで、アナは強制収容所の辛い、非人間的な生活を生きのびます。その不屈の意志には、ただただ頭が下がります。
幼いころの三人姉妹の、いかにも賢そうな写真が心をうちます。
アウシュビッツを越えて
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