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2005年5月 の投稿

旭山動物園物語

カテゴリー:未分類

著者:古舘謙二、出版社:樹立社
 子どもたちが小さいころには、私も動物園によく行きました。残念なことに、もう久しく動物園には行っていません。幼い子どもがいるというのは、手がかかって大変だと言えばそうなのですが、本当はとても幸せなことだと今しみじみ思います。いえ、全然そんなところに行かないというのではありません。少し前に鹿児島と沖縄の水族館に行って、海の神秘を改めて堪能してきました。
 北海道の旭川市には、私も一度だけ行ったことがあります。盆地ですから、夏は北海道とは思えないほどに暑くなり、冬はマイナス30度にまで冷えこむまちです。そんな旭川にある動物園が、今や東京の上野動物園を抜いて日本一の入場者数を誇っているというのです。なぜ、でしょうか・・・。
 この本には、ペンギンの行進の写真が紹介されています。両側に人間が列をつくって見物するなかを、ペンギンたちが往復500メートルを群れをなしてよちよち散歩していくのです。折り返し地点では、寝そべってすべったりして10分ほど遊び、それに飽きたらまた引き返すそうです。いえ、動物園がペンギンたちに散歩を強制しているのではありません。ただペンギンの本能を生かして、人間はただ見守っているだけなのです。なんだか見てるだけで楽しくワクワクしてくる写真ですよ・・・。
 オランウータンの空中運動場というのもあります。高さ17メートルの2本の柱に長さ13メートルの鉄骨を渡し、その下にロープを張っています。もちろん、オランウータンはその高くて長いロープを伝わって散歩するのです。安全ネットなんかありません。野生のオランウータンは高さ30メートルの木の上で生活していますし、握力は人間の10倍、400キロもあり、とても用心深い性格なので、落ちるわけがないのです。人間は、下から見上げて眺めるだけ。これを渡り切ってはじめてメスに一人前のオスと認めてもらって、ついに赤ちゃんが生まれたというエピソードが紹介されています。うーん、なるほど、ですね・・・。
 人間の赤ちゃんとシロクマがにらめっこした話には、つい笑ってしまいました。人間の赤ちゃんは目の前に来た白クマさんを興味津々で見ています。ところが、クマの方は目の前の赤ちゃんをエサのつもりで食べようと思って近づいているのです。なーるほど・・・。 ホッキョクギツネは寒さに強く、マイナス70度になってはじめて震えはじめるそうです。すごーい。動物たちが毎日のびのび生活している様子がよく分かる、そんな動物園です。私もぜひ行って見てみたいと思いました。また旭川に行って、動物園に行き、そして帰りに有名なラーメンを食べて心身ともに温まってこようっと・・・。

倒産の淵から蘇った会社達

カテゴリー:未分類

著者:村松謙一、出版社:新日本出版社
 倒産寸前の会社を再生させることに情熱を燃やして取り組んできた東京のベテラン弁護士の体験をまとめた本です。個人の破産・再生を専門としている私にも大変勉強になりました。
 人間にとって大切なことは、生命・自由・財産の順番であり、家・屋敷などの財産は三番目に大事なものにすぎない。そうなんです。ところが、一番目に大切な生命を投げ出して財産を守ろうとする人のなんと多いことでしょう。銀行が他の支払いは止めても生命保険の掛け金(月40万円)だけは社長に支払いを続けさせていたという話が紹介されています。とんでもないことです。この4月から、保険契約をして2年以上たたないと自殺のケースでは保険金がおりないことに変わったと聞きました。その前は1年でした。2年になったり、1年になったり、時々、生保会社の都合で変動しています。
 著者は連帯保証制度を見直すべきだと提案していますが、まったく同感です。つい先日も、日掛け金融が、借り手の主婦と相互に連帯保証させあって自己破産申立しにくくしているケースを扱いました。安易に連帯保証人になるのは考えものですが、法制度としても考え直すべきだと私も思います。
 また、返済期間をあまり考えすぎない方がよいという指摘には、なるほど、これは良い考えだと感心しました。まず返済期間ありきという概念を捨てたら、もっと世の中は楽しく活気が出てくるというのです。借入金が40億円。年に1000万円を返済している。返済に400年かかる。でも、利息の年9000万円はきちんと支払っている。社員に給料を支払い、給与も若干アップさせた。会社は幸せに経営していけるし、社員も生き生きと働いている。400年かかる約束でも、みんながそれでいいのなら、いいじゃないか。著者の指摘に、なるほど、そのとおりだと膝をうってしまいました。
 会社を再生するには、特定の取引先に大きく依存しすぎないこと。この指摘は弁護士の業務にも言えることです。会社再生とは、つきつめたら人間救済なのである。うーん、なるほど、そうだよなー・・・。ついつい、うなずきました。
 免除益など、企業の税金のことなどは理解できませんでしたが、会社経営に無理をしている人には手にとって読んでほしい本です。
 ところで、この本の題名って、漢字が難しすぎませんか。出版社のセンスを疑ってしまいました。もっと、分かりやすい題名にしてほしいものです。

心理テストはウソでした

カテゴリー:未分類

著者:村上宣寛、出版社:日経BP社
 ええーっ、ロールシャッハ・テストとかクレペリン検査って、何の科学的根拠もなかったのー・・・。あまりの驚きで、ついのけぞってしまいました。いったい、これはどういうことなんだ・・・。受けたみんなが馬鹿を見た。サブ・タイトルはそうなっています。マジ、ホントカヨー。いまどきの若者言葉でツッコミを入れたくなる本です。
 私はAB型ですが、だからどうだと言われても困ります。私は私なのですから。だから、この本で血液型で人間の正確が判定できるなんて何の根拠もないインチキな話だと改めて解明されても、私はちっとも驚きませんし、動揺もしませんでした。政治家もマラソン選手もタレントも、みんな血液型分布は日本人の平均的分布と変わらないことが立証されています。ところが、教育評論家・阿部進は血液型を保育に活用するよう九州地区の幼稚園教師研修会で講演した(2004年8月、沖縄)というのです。まったくバカげています。
 さて、ロールシャッハです。1884年、スイス生まれ。37歳の若さで亡くなっています。いまアメリカではロールシャッハ・テストはまったくあてにされないものになっています。ほかの検査なら10分ですむのに、これは平均4時間もかかり、そのうえ、ほとんど科学的根拠に乏しいというのですから、お粗末すぎます。同じようにクレペリン検査も信頼性に乏しいということです。
 この本は、最後に、速読法についてもコテンパンにやっつけています。あれは単なる金もうけの手段にすぎない。賢くなるためには分からない本を読まないといけない。分からない本はゆっくり読まないといけない。賢くなるには速読法は必要ない。
 そうなんです。本が早く読めることを自慢している私も、別に速読法をマスターしたわけではありません。私の興味と関心の度合いで、結果として本が速く読めるというだけなのです。いまも出番を待っている本が机のそばにうず高く積みあげられています。読みたい本がたくさんあるというのは、私にとって幸せなことなのです。だから、特別に意識することなく、自然に本は速く読めるのです。

葬祭の日本史

カテゴリー:未分類

著者:高橋繁行、出版社:講談社現代新書
 いやあー、驚きました。葬式って、昔はこんなに盛大に、にぎにぎしくやられていたんですね。昔と言っても、わずか90年前の日本のことです。信じられません。ひっそり、しめやかに、音も立てずに、しのび泣き。そんなお葬式のイメージが、それこそガラガラと音をたてて崩れおちていきました。
 えっ、誰のお葬式のことを言っているのか、ですか・・・。ほら、あのオッぺケペー節で有名な明治の川上音二郎ですよ。川上音二郎は明治44年(1911年)11月に48歳の若さで亡くなりました。死ぬ間際に、病院から大阪市北浜にあった帝国座に移され、そこで息を引きとったんです。川上音二郎って、新派劇の創始者でもあったんですね。ただちに帝国座の舞台に祭壇が組まれました。
 通夜は、なんと1週間。ええっ・・・。そんなの、聞いたこともありません。今じゃ、お坊さんを招いて1時間ほどで終わりますよね。1週間後のお葬式が、また実にすさまじいものです。当日の会葬者は3700人。帝国座から葬儀所のお寺までの6キロを、盛大な行列をつくってすすみます。午前9時に帝国座を出発して、午後1時にお寺に到着しました。これは江戸時代の大名行列をとりいれた葬列だったのです。
 この本がすごいのは、その葬列を再現する図をのせているところです。先頭を歩く2人の遠見。次に葬儀屋のトップがつとめる先払い。そのあとに、先箱、大鳥毛、毛槍、台笠、立笠、曲長柄と続きます。奴は、手にもった道具を宙に放り投げ、別の奴がそれを受けとります。このとき、かけ声をかけるやり方と、黙ってするやり方があったようです。
 さらに、大勢の徒士、打物、花車と続き、人力車に乗った先進僧が登場します。この先進僧は葬儀ディレクターとして、式進行の一切を取りしきります。まだまだ、行列は延々と続きます。両側には見物人がぎっしり。日本人って、昔から物見高いのです。
 喪主と遺族は白衣です。白い衣裳なのに「色着」(いぎ)と呼びます。一般会葬者は黒服です。これも、なんだか今と違いますよね。
 そして、現代の火葬場の様子も紹介され、参考になります。日本のお葬式にも、こんなに変遷があるんですね。ちっとも知りませんでした。

日本型成果主義の可能性

カテゴリー:未分類

著者:城 繁幸、出版社:東洋経済新報社
 同じ著者の「内側から見た富士通」(光文社)はベストセラーにもなりましたが、この本で成果主義の問題点が具体的によく分かり、なるほどなるほどと納得させられました。
 この本は、さらに議論を前にすすめています。これまた、企業社会に身を置いたことのない私にも実感としてよく分かりました。年功序列の最大の特徴は差をつけないことにある。年功序列制度が日本の発展を支えてきた。それは差をつけないから、落伍者を生み出さない。そこで必然的にいかにポストを増やすか、いかに仕事を増やすかというのが経営方針となってきた。そこには評価制度は必要なかった。
 日本企業の成果主義は、たいてい目標管理制度をともなっているが、それには上から下への目標のブレイクダウンという特徴がある。しかし、目標管理制度が理論どおりに機能するためには、1.目標が数値化できる、2.目標のハードルが同じ高さ、3.常に目標が現状にマッチしている、4.評価のとき、達成度だけで絶対評価が可能、この4点が必要である。
 しかし、現実に起きることは、目標が低いレベル化することと、評価の大量インフレだ。目標達成者が急増しても、実は、肝心の企業業績は一向に上がらないということが起こりうる。目標管理という壮大な手間をかけつつ、実は、年功序列制度と変わらないことをしていた、ということになるだけ。
 社員の給与をいくら削れるか、これしか関心のない経営者は成果主義を考えてはいけない。なぜなら、高い評価を受けた社員が1割いたとして、残る社員のうち、少なくとも2倍(2割)は士気(モチベーション)を下げてしまう。社員総体のやる気まで必ず下がるだろう。成果主義によって人材の「不良債権化」がはじまる。
 要するに、ごく一部の従業員だけがやる気を出しても、残りの社員がやる気を喪失するような制度では、組織全体のパフォーマンスは決して上がらないということです。
 そう言われたらそのとおりですよね。韓国は日本の先を行ってアメリカ並みになろうとしているそうです。でも、著者もアメリカ社会は決して真似してよい社会とは思えないと言っています。国民の2割が貧困層、3000万人が日々の食事にも窮しているのです。2極分化がすすめば、社会不安も増大していきます。犯罪も多発します。みなさん、よくよく考え直しましょうね・・・。

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